本日11月23日、フランスのラアーグの核燃料再処理施設からドイツの高レベル核廃棄物の容器が、ドイツのゴアレーベンにある廃棄物中間貯蔵施設へ輸送が始まります。今回輸送されるキャスク(容器)は11基です。なお、ラアーグからの輸送はこれが第13回目ですが、これで終了します。ドイツは2002年の脱原発法で使用済核燃料の再処理は禁止され、直接処分されることになっているため、同法によりフランスとの契約が切れた2005年以降は再処理されていないからです。ただ、イギリスのシェラフィールドへ送ったものが2014年から帰って来ることになっています。したがってゴアレーベンの闘いは最終処理施設ができるまで、あと1世代は続くことになるでしょう。
この輸送は反原発運動の大規模な阻止行動でおそらく週末まで数日間かかりますので、簡単な経過をここで毎日追加しながらできるだけ現場の雰囲気が理解できるように報告しましょう。これから日本でも本格的に起こる/起こらなければならない命を守る市民運動に参考になる情報も多々得られると思います。
興味ある方は引き続きこの54項をご覧ください。
具体的な質問がれば、コメントに書き込んで下されば、できるだけ回答する努力をいたします。
ゴアレーベンの貯蔵施設と昨年11月の阻止闘争についてはこのブログでも以下に簡単に触れていますので参考にして下さい:
40:東京世田谷区のホットスポットの線量はドイツ高レベル核廃棄物施設周辺許容値の47倍
http://tkajimura.blogspot.com/2011/10/blog-post_13.html
この中間貯蔵施設にはこれまで102基のキャスクが搬入されており、上記の将来イギリスから搬入予定の数はニーダーザクセン州環境省によれば21基であるとのことです。
施設のキャパシティーは420基、3800トンの使用済、再処理済の燃料を保管できるとのことですが、その三分の一が貯蔵されている現在でも第40回で紹介しましたように、すでに放射線許容値を越えていますので、これが今回からの大きな争点となっています。
詳しくは『世界』2011年1月号、梶村「政権を揺さぶるドイツ反原発運動」を参照して下さい。なをこの号でフクシマ事故前に「原子力復興という危険な夢」を特集した『世界』誌は本年6月に日本ジャーナリスト会議賞を受賞しています。
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グリンピースなどによる予想ルート |
上は予想されるラアーグからゴアレーベンへの予想できる鉄道路線図です。このように可能性のあるルートがドイツ国内では複雑で、ルートは公表されないため、独仏国境の3地点ではすでにそれぞれで市民が集まり始めています。
昨年は、ドイツ政府の原発稼働延長が議会で決定された直後であったこともあり、5万人が集まったゴアレーベンと鉄道路線で文字どおり警備の警察と文字どおりの遊撃戦を展開しましたが、今年はドイツ政府が脱原発に踏切ったこともあり、ゴアレーベン現地のスポークスマンのヴォルフガング・エムケ氏は「今年は2万人ほどではないか」と予想しています。警備側は昨年同様、連邦警察官5000人を始め、全国各州の警察官を動員して、こちらも合計で19000人と報道されています。
補足ですが、先日報告しました、ゴアレーベンの最終処理施設の岩塩層で石油がしみ出している写真を掲載しましたところ、現地から写真の提供の申し出がありました:
52:ドイツ核廃棄物最終処理施設の選定、振り出しに戻す合意
http://tkajimura.blogspot.com/2011/11/blog-post_12.html
さっそく、環境保護団体が「こんなところに核のゴミを貯蔵できるのか」とのプレスリリースで広げましたので 地方紙などに掲載されたようです:
Ölspuren im Salzstock Gorleben
http://www.bi-luechow-dannenberg.de/chronologisch/pressemitteilungen/olspuren-im-salzstock-gorleben
なを、現地の市民の阻止行動は主に以下で情報が得られます。
https://www.gorleben-castor.de/index.php
http://www.ausgestrahlt.de/startseite.html
また輸送情報は特別のゴアレーベンの市民運動
がもっている「自由共和国ヴェントラント」のラジオ放送局のキャスクチッカーで分刻みで得られます:
http://www.castorticker.de/
なにしろ、ここの市民運動の組織力は、長年の蓄積もあり大きなものがあり、昨年の阻止行動では連邦警察が力の限界に達したほどです。この市民運動の放送局のチッカーの情報力は通信社/プレスも警察も頼りにするほど、正確で早い質があります。驚くべきことです。以下の情報もここから得られるものを基準とします。
ドイツではなにしろメディアの多くが、公共テレビも含めて事実上の反原発なので、日本やフランスの原発御用メディアからは想像のできない報道が見られます。
以上が前置きで以下本題に入ります。(前置きの長いのも困ったものです)
(1)11月23日水曜日午前/フランスで最初の衝突、逮捕者も
実は今回の輸送はフランスを出発するのが24日であるとされていたのですが、一昨日になり1日前倒しになるとの情報があり、阻止運動の方でも大慌てで動員予定を組み変えています。
今回の特徴は、フクシマ事故とドイツの脱原発決定の大きな影響で、原発大国フランスでも次第に反原発の声が大きくなっていることです。すでに来年の総選挙を前にフランス社会党も初めて「2025年までに稼働中の58の原発の内24を順次廃炉にする」との方針を打ち出しフランス緑の党との連立を探り始めていると報道されています。
それを背景に今回はフランス国内での輸送阻止行動も活発になっているようです。これを書いている数時間後現地時間の14時半ごろにラアーグを輸送列車が出発する予定ですが、ラアーグに近いヴァロニエで最初の衝突があったと報道されています。早朝から線路を占拠しようとするデモ隊数百人を警察官が催涙弾などで排除し、運動側によると7名が逮捕されたとのことです。
この写真は、フランスの現地の市民のキャンプからのドイツの通信社による写真です。
フクシマ4号機とチェルノブイリの石棺の絵が描かれています。
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写真:dadp |
(23日午前)
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ヴェロニエでの衝突のビデオはここで:
http://de.euronews.net/2011/11/23/proteste-gegen-castor-transport-in-nordfrankreich/
先ほどの報道によりますと、この近くのレールが破壊されており、出発は遅れそうだと現地のグリーンピースの情報があります。なにしろ1200キロメートルの距離ですので、ヘリコプターを使っての警備も昼夜を通しては無理ですので、かなり遅れるでしょう。
(23日15時)
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2)輸送列車ラアーグのアレバ社の貨物駅を遅れて出発
キャスク輸送列車は90分の遅れで日本でも名を知られることになったアレバ社の貨物駅を16時に出発しました。
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ラアーグを出発する列車 写真AFP |
予定では24日朝にドイツ国境を通過しますが、これから長い夜となります。
一方ゴアレーベンの近くで「爆弾」通報があり、警官が警察犬を使って調べたところ段ボール箱であったとのことです。
(23日17時)
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写真AFP |
シピーゲル誌が電子版で今日のフランスの小都市ヴェロニア近郊の線路付近での衝突の写真を伝え始めました。
この近くに数日前からキャンプを張った反原発市民運動の連合体は約1000人が、線路付近でのデモ禁止をかいくぐって早朝から警察官とネコとネズミの追っかけ合いを展開。警備側は催涙ガスなどでデモ隊を排除しましたが、デモ隊はガスマスクも用意し、約300人が警備を突破し、この写真のようにゲリラ戦で線路の敷石を取り除く戦術に出ました。このため出発が遅れましたが、出発してわずか10分で線路上のデモ隊のためまた一時停止しています。
シュピーゲル誌写真:
http://www.spiegel.de/fotostrecke/fotostrecke-75457.html
ここの始め数枚は今日のベルリンでのデモ、そして6〜17番の写真がフランスの現場写真です。
これはおそらくフランスではこれまでで最も激しい反原発抵抗運動ではないかと思われます。
さきほどから警察が市民キャンプの手入れを始めたようです。
フランス警察は、市民運動がまだ少数なので強硬ですが、今日は催涙弾や催涙スプレー、またゴム弾でデモ隊に負傷者も出ているとの報道もあり、返って社会の反発を得る結果になるのではないでしょうか。ドイツでも30年前の昔は同じ光景でした。
ついに核大国フランスでも本格的な抵抗運動が始まりました。フクシマ事故のインパクトの大きさと言えましょう。
(23日19時)
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ドイツのZDF放送によれば、今日のフランスでの阻止行動での逮捕者は16名、負傷者はデモ隊2名、警察官1名。キャンプを引き揚げようとするデモ参加者たちは警察に人定質問されたとのことです。原子力警察国家の有り様が、ここに現れています。キャンプは合法でした。
輸送列車はその後、ルアン(Rouen冒頭地図参照)の手前で妨害のため何度も停止しているとのことです。ドイツ国境には24日の午後に到達する見込み。ただし通過点が国境3点の内どこになるかはまだ不明です。
(23日23時30分)
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ゴアレーベンのスポークスマンのエムケ氏はフランスでの闘いの情勢について以下のように述べました。今日の言葉として挙げておきます:
「フランスの輸送反対派に対する暴力行使と(催涙)ガス使用の情景は、私達を震撼させる。私達は被害者たちに敬意を表明する。なぜなら彼らはドイツの問題のために殴られているからだ」
Wolfgang Ehmke (BI Lüchow-Dannenberg):
»Die Prügelszenen und der Gaseinsatz gegen die Castor-Gegner in Frankreich erschüttern uns, den Betroffenen zollen wir unseren Respekt, denn sie lassen sich für ein deutsches Problem verprügeln・・・”
わたしが彼、エムケ氏と知り合ったのは、25年ほど前のヴァッカースドルフでの再処理施設阻止行動で国家暴力に直面していた最中でした。
その時このゴアレーベンの詩人はいまでも大切にしている彼の一冊の小さな詩集を贈呈してくれました。
(24日0時)
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(3)11月24日正午頃独仏国境到着か
輸送列車は夜の間にフランス側ではアメアン(Amien)を経由し南のルート(冒頭の地図参照)でドイツ国境に近づいています。
今朝の予想ではメス(Metz)経由で正午頃地図の(1)の国境からドイツ側ザールブリュッケンへ入るのではないかとの予想もあります。しかし昨年はドイツ側での阻止行動でルートを変更し、大幅に遅れた苦い経験をしていますので、実際には判りません。今回は出発を1日早めているので、国境手前で一晩待機するかもしれないとの「うわさ」も出ているようです。
朝7時半の情報によれば輸送中のキャスクから2メートルの距離の線量測定値は1.65マイクロシーベルト/時でそこからはなれた(通常)値は 0.13マイクロシーベルト/時です。
In 2 Metern Abstand strahlt der Castor mit 1,65 µSv/h bei einer Hintergrundstrahlung von 0,13µSv/h
さて、本陣のゴアレーベンでは夜中に最初のランタンデモが行われ道路を数時間封鎖し、今朝は先ほど9時半からリュチョウの町(ゴアレーベンで一番大きな町)では 生徒たちの抗議デモが始まっています。この地方では昨晩からローカル線の列車運行も停止されており、キャスク搬入時には、学校の授業などなく、そのかわりにデモをやります。
とりあえずはランタンデモに集まった150人ほどの人々の表情をご覧ください。
ランタンのX印はゴアレーベンの抵抗運動の伝統的ロゴです。
クリスマスを前に、ドイツではどこにでもあるスコップをもった「庭の小人人形」の仮装をしているのが愉快ですね。(24日10時15分)
リュチョウの生徒たちのデモには1400人とトラクター10台が参加し、その様子をキャスクテレビが中継車から実況生放送しています。ここで見れます:
http://www.castortv.de/
また輸送列車はメスを出発し次の駅で長く停車中との情報。
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リュチョウの町の中心街をデモする生徒たち 写真DPAD |
24日午前の生徒たち2000人のデモの写真です。この生徒たちの反対デモは伝統的なものです。この地方の子どもたちは赤ん坊のときからでもに参加している反原発運動の3世代目がほとんどです。手製の横断幕もプロ並ですね。 この子供たちが大人になる時には原発は姿を消していてほしいものです。
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同上 写真:DPAD |
(10時45分)
輸送列車は午前九時にメス(Metz)から少し離れたローレンヌ地方のルミリーという小さな町の駅で、異常に多くの警察官に警備されてもう5時間も停止したままです。ドイツ国境まで30キロほどです。
フランスの鉄道当局がドイツの通信社に対し「輸送列車は『予定通り金曜日朝』にドイツに入る」と述べたとの報道もあるところから、列車は明日朝まで同駅に停車するのではないかとの推測が固まりつつあります。であれば、出発が1日前倒しになったのは、フランス当局が自国の阻止行動の盛り上がりを恐れて
そうしたのであって、ドイツ側は予定通りということになります。つまりフランスは自国の反原発世論を非常に警戒しているということです。これまでにないことです。
これにより、予想される3つの国境通過地点でのドイツ側のデモ隊も、予定を変更して待機体制を整えつつあると報道されています。
生徒たちのデモは最終的には2000人にまでなり、非常に盛り上がり良い雰囲気でした。
(24日14時)
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