昨日1月8日発売の『世界』2月号にドイツと欧州における難民問題の背景と現状を報告しました。危機の深刻さを日本の読者に判りやすく伝えるのはなかなか困難ですが、今世紀の欧州同盟あり方に根本的な影響をもたらさざるを得ない問題の解説の第一報としてご一読下されば幸いです。
かつてのドイツの脱原発実現に至る経過については、同誌で長年にわたって報告をしましたが、この問題の報告もどうやら同様に長期に渡りそうです。ドイツ社会は1世代に渡って脱原発の闘いを続けてついに実現しましたが、またここで難民問題という世界的な重い課題を背負うことになりました。
同号の表紙とホームページでの紹介は以下のとおりです。
メルケル首相の決断と難民問題で「明と暗」に引き裂かれるドイツ
梶村太一郎
ドイツのメルケル大連立政権は、ウクライナ危機とギリシアの金融危機の解決 に主導的な役割を果たし、周辺諸国が暴風雨に見舞われるなかで、例外的に台風の眼の中のように、かつてない経済的繁栄と政治的安定の晴天下にあるかのごとくであった。ところがこのドイツも、2015年夏頃から津波のように押し寄せる 難民と11月にパリで起こった同時テロのため、ついに統一以来最大の試練に見舞われることになった。 極右勢力が急速に台頭し、中間層が動揺し始めている。難民とテロの問題はドイツだけでなく欧州同盟の枠組みを土台から脅かしており、いわば冷戦後最大の 欧州政治危機となっている。はたしてドイツと欧州はこの試練に耐えられるだろうか。ベルリン在住の筆者が報告する。
かじむら・たいちろう ジャーナリスト。1946年生まれ。
在ベルリン。ドイツ 外国人記者協会会員。
この寄稿に掲載されている写真3枚のオリジナルとキャプションを以下にあげておきます。いずれも梶村の撮影によるものですから無断転載はしないで下さい。
難民申請を行い認定を待つ難民収容施設の保育所で遊ぶ子供たち(ベルリン、2015年9月11日) |
ベルリンに着き、役所で最初の難民登録を終日待つ難民(2015年9月18日) |
「亡命を制限せよ。メルケルは退陣せよ」とのスローガンでデモする新極右政党の党首たち(ベルリンのウンターデンリンデン、2015年11月7日) |