2014年2月28日金曜日

235:『アンネの日記』破損事件は記憶と知性へのテロ行為である(その1):NHK問題と底通

Berlin 10.Mai 2013。 この写真が何であるかはこの連載で説明します。写真;T.Kajimura
このところ日本からは『アンネの日記』とホロコースト関連書籍が東京の図書館で大量に破損されたとの報道が連日あります。もちろんこの異常な事件は世界中に報道されており、ドイツ語圏でも事実関係は伝えられています。
Der Spiegel :AFP

  電子版での主なものだけでも、このような写真とともに、シュピーゲル誌→ディ・ツァイト紙、→オーストリア公共放送(同放送の→動画はこちら)などに見られます。
幸いなことに、官義偉房長官もこの事件に関して先週2月21日の記者会見で、「わが国としては受けいられるべきものではなく、極めて遺憾であり恥ずべきことだ」と明快な見解を述べており、警視庁も捜査を始めたようです。

 誰が、そして何故このような行為に及んだかは、現時点では不明です。推定もすることもできません。だが、背景がどのようなものであるにしろ、公共図書館でのこのような陰湿な犯罪は、わたしにとっては現在の日本社会の恐ろしい病の反映であるとしか思えません。
 この事件と平行して、先日も→ドイツでの例をお伝えしたように、NHKの会長と経営委員の発言問題が、世界中で深刻な危機感を持って伝えられています。
おそらく日本を良く知る人々には、この無惨に破られた図書館の書籍の姿が、同様な公共財メディアとしてのNHKが直面している危機と二重写しとなって受け止められていることでしょう。NHKから籾井会長らが排除されない限り、公共財として無惨な損害を受けることになるからです。
どちらの問題も民主主義社会のの礎である言論の自由を貶めようとする挑戦です。この意味でこのふたつの問題は底通しています。このことに菅官房長官が気づいておれば、彼は記者会見で明快な意見を表明できなかったでしょう。

 ところで、この犯罪は刑法では単なる器物破損でしかありませんが、本質は人間の「記憶に対する暴力」であり、また「知性へのテロ行為」なのです。
そこで、この事件で標的になったのがアンネ・フランクとホロコーストであることから、 以下、どのような記憶に対する暴力であるのか、そしてそれがなぜ知性へのテロであるのかについて、数回に分けてできるだけ詳しく述べましょう。
 
 上記のドイツでの報道でも、アンネ・フランクは日本では特別な敬意をもたれているとされていますが、彼女の日記の記述を越えて、彼女らの運命がどれほど過酷であったかは日本では、あまり知られていないので、次回はそれについて史実を述べることにします。




2014年2月27日木曜日

234;ドイツZDFが安倍首相の「フクシマの嘘;欺き、ごまかし、脅かし」を実証するドキュメントを放映/日本語字幕つきが出ましたので拡散してください。

3月20日追加:この番組の拡大決定編の日本語字幕について妨害がありましたので、それについては→こちらをご覧ください。 

 昨晩、ドイツ公共第2テレビ放送ZDFが、フクシマの現状を29分のドキュメントで伝えました。
現在の双葉町
 現場で当事者たちとのインタヴューで、安倍首相の「フクシマはアンダーコントロール」であるというオリンピック招致の際の発言が、大嘘であることを実証した力作のレポートです。

 登場人物は、双葉町で墓参りをする井戸川元町長からはじまり、小出裕章京大助教授の「フクシマはこれまででもチェルノブイリ事故での同量の核物質が放出されており、現在も放出され続けており『out of control』である」との見解、また事故直後の地下水遮断計画が、どのように阻止されたかも菅直人元首相と馬淵氏の証言でレポート。さらに阿武隈川が流域の山系のセシウムなどを集めて、河口沖では、驚くべき海洋汚染が続いているが全く無視されていることを京都大学の研究者の現場でのモニタリングで伝えています。
阿武隈川河口沖で取材するヨハネス・ハーノ記者
また除染作業がホームレスの人たちを使うヤクザの食い物になっていることを、仙台の今井牧師と被害者の匿名証言で報道。
泉田裕彦新潟県知事の「今、新しい『原発安全神話』を作ろうとしている」との見方も伝えられています。

井戸川元町長の「日本政府の非人間性への激しい怒り」を共有するジャーナリストチームの優れた仕事です。



日本でもオリジナルは→「欺き、ごまかし、脅かし・フクシマの嘘」で見ることができます。わたしは技術的に弱くて日本語訳を付けることができませんので、どなたかがおやりになることを期待します。ビデオの下のUT-Untertitelをクリックすればドイツ語原文が表示されますので、正確な翻訳が可能です。

(3月2日追加です:早速日本語訳字幕つきビデオが出ました。タイトルがわたしの翻訳とは少し異なっていますが、これは形容動詞の翻訳の仕方の差です。しかし全体に正確な翻訳ですので是非ご覧ください。
→こちらです。
(3月10日に翻訳の一部訂正のうえ再アップされています)
また、一部著作権の問題で安倍首相の演説がぼかしてありますが、オリジナルではそうではありませんので、両方をご覧くだされば迫力がよくわかります。日本の大手メディアはこの取材チームの爪の垢でも煎じて薬にすべし!)
 
 またハーノ記者による詳しい番組解説もあり、そこは→「嘘:今もフクシマがどれだけ危険か」とのタイトルです。これも参考にしてください。写真はここから拝借しました。

 日本市民と住民の大半の懸念と心配を代表するこのようなレポートは、本来は日本の公共放送であるNHKが行うべき仕事ですが、→「国営放送」の籾井勝人会長があわてて放映を禁止することは間違いありません。何しろオトモダチの安倍晋三が、世界を公然と欺いたことを実証的に暴露しているドキュメントですから。
 
 安倍政権は、単に歴史認識で世界中から孤立するだけでなく、それに加えて大嘘つきとして信用はゼロになることはもはや不可避です。

Ps. どなたか翻訳されたら、コメント欄でお知らせ下さい。紹介できますので。
よろしく。

3月6日追加です:
日本語字幕付きはすでに30000近いアクセスがあり、よく見られていますので、ハーノ記者の→ツイッターから取材時の写真を拝借しておきます。
予告されている3月8日の→拡大決定版の放送が楽しみです。これはさらに充実しているとのことです。

墓参りする井戸川元双葉町長

カメラチームと真ん中がハーノ記者




2014年2月23日日曜日

233:ウクライナの市民革命復活:ユーリア・ティモシェンコ元首相釈放

昨日報告したキエフでの→与野党の協定が実現して24時間を経ないうちに、ウクライナのヤヌコヴィッチ政権は崩壊し、キエフの主権は市民と議会の手に戻りました。

 逃亡した大統領も職務不履行を理由に議会決議で罷免され、同じく議会での刑法改正ユーリア・ティモシェンコ元首相釈放決議もなされました。その様子はシュピーゲル電子版の→こちらで

議会での釈放決議で喜びの涙を拭く元首相の娘さん
これにより、彼女は先ほど釈放され、現在キエフへ向かっているところです。


釈放された最初の写真ツイッターより

 彼女の→釈放時と最初のインタヴューはこちらです。腰を痛めているため車椅子にですが、元気そうです。間もなく、キエフの独立広場で市民へ演説すると伝えられています。
5月25日と議会で決定された大統領選挙にも「当然立候補する」と述べました。

 昨年11月から始まったウクライナの現政権批判の市民は、ついに流血の犠牲を払って政権を転覆する市民革命として復活したようです。
事態が安定するまでにはまだまだ時間がかかるでしょうが、ウクライナは分断の危機をはらみながらも、民主化へ大きな山を越えたことだけは間違いないでしょう。当面の心配はテロですが。



キエフの空港で再会した母子 Reuters
いずれにせよソチのオリンピックを終えた来週から、この国を巡ってのロシア、アメリカとEUの三すくみの長い力相撲が始まるでしょう。

二年半の牢獄生活のあとで

市民にさらなる参加を呼びかける dpa
この革命的な情勢の中で、ユダヤ系の市民への暴力も出てきているとのことです。危機の際には、良きにつけ悪きにつけ歴史の記憶が再び甦ります。

2014年2月22日土曜日

232:速報:ウクライナ危機解決へ向けた協定書原文/キエフ2014年2月21日/さらなる流血を防ぐ最後の機会か

 先ほどウクライナのキエフでヤヌコヴィッチ大統領と野党党首ら3名が、EUを代表する独仏ポーランド外相ならびに、プーチン大統領より派遣されたロシア外務省代表の仲介により署名した協定の英語の原文は以下のとおりです。

→ドイツ外務省が先ほど公表しました。原文PDFは→こちらです

両者により、この合意がどれだけ実行されるかどうかは、現時点では全く判りませんが、いずれにせよ、文末の写真に見られるように銃弾が飛び交い、少なくとも77名の死者を出している情勢の中で、20日から21日までの徹夜交渉で成立した歴史的な文書であることは間違いありませんので速報します。
(この報告は日本時間21日夜中から22日未明のウクライナ情勢を速報したものです)
署名を終えて。クリチコ野党党首、シュタインマイヤー独外相、ヤヌコヴィッチ大統領 photothek
シュタインマイヤー独外相は、締結後に「これが、さらなる流血を防ぐおそらく最後の機会だろう」と述べています。

これを書き終えたとたんに、ウクライナ国会で、2004年の憲法を復活させ大統領の権限を制限する決議が圧倒的多数で決議されたとの報道がありました。この合意書の第2項を実現する意義があります。
続いて議会は2011年8月から服役しているユリア・ティモシェンコ氏を釈放できる法改正を310対54の圧倒的多数で決議し、あとは大統領の署名があれば施行できると報道されています。

 多くの立場の違う市民側の大半では、まだまだ不信は大きいようで独立広場のバリケードを撤去する様子は現時点ではないと現場から伝えられています。特に極右勢力はこの合意に反発して、大統領が即辞任しない限り明日にでも武力で大統領府をを占領すると主張していると報道されています。これなどはまるでかつてのコザックの末裔のような印象があります。危機の時には歴史の土台が露呈するものです。しかし実際に同夜の追悼集会でも、この合意は延命を図る現大統領との妥協であるとの批判の声が強いようです。
また、西部の主要都市でもこの合意は不十分であるとの声が強いとのことですので、まだまだ緊張と混乱は続くでしょう。だだひとつ確かなことは、ウクライナは現時点で、平和的解決か破局かの暴れ馬の背にあるということです。理性が勝つことを祈ります。

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Agreement on the Settlement of Crisis in Ukraine

 Concerned with the tragic loss of life in Ukraine, seeking and immediate end of bloodshed and determined to pave the way for a political resolution of the crisis, 

 We, the signing parties, have agreed upon the following: 

1. Within 48 hours of the signing of this agreement, a special law will be adopted, signed and promulgated, which will restore the Constitution of 2004 including amendments passed until now. Signatories declare their intention to create a coalition and form a national unity government within 10 days thereafter.

2. Constitutional reform, balancing the powers of the President, the government and parliament, will start immediately and be completed in September 2014.

3. Presidential elections will be held as soon as the new Constitution is adopted but no later than December 2014. New electoral laws will be passed and a new Central Election Commission will be formed on the basis of proportionality and in accordance with the OSCE & Venice commission rules.

4. Investigation into recent acts of violence will be conducted under joint monitoring from the authorities, the opposition and the Council of Europe.
Final 6:45
                1/3 

5. The authorities will not impose a state of emergency. The authorities and the opposition will refrain from the use of violence. The Parliament will adopt the 3rd amnesty, covering the same range of illegal actions as the 17th February 2014 law.

Both parties will undertake serious efforts for the normalisation of life in the cities and villages by withdrawing from administrative and public buildings and unblocking streets, city parks and squares.

Illegal weapons should be handed over to the Ministry of Interior bodies within 24 hours of the special law, referred to in point 1 hereof, coming into force. After the aforementioned period, all cases of illegal carrying and storage of weapons will fall under the law of Ukraine. The forces of authorities and of the opposition will step back from confrontational posture. The Government will use law enforcement forces exclusively for the physical protection of public buildings.

6. The Foreign Ministers of France, Germany, Poland and the Special Representative of the President of the Russian Federation call for an immediate end to all violence and confrontation.

Kyiv, 21 February 2014
                    2/3

Signatories:
President of Ukraine:
Viktor Yanukovych

For the Opposition:
Vitaliy Klichko, UDAR
Oleh Tyahnibok, Svoboda
Arsenij Yatseniuk, Batkivshchyna

Witnessed by:
For the EU:
Poland         Germany
Radoslaw Sikorski    Frank-Walter Steinmeier

Foreign Minister Foreign Minister
France
Laurent Fabius

Foreign Minister
For the Russian Federation
Vladimir Lukin
Special Envoy
                    3/3 
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21日午後野党側に協定案を示す独シュタインマイヤー外相ら。成功しました。ツイッターより
2月20日銃殺された市民。キエフ独立広場で dpa 日本のメディアではまずは採り上げられない写真です。手前からふたり目の男性は防弾ベストを特殊狙撃部隊のマシンガンで撃ち抜かれて死亡しています。

協定にの署名する関係者。キエフ不大統領府。21日午後 dpa

協定書オリジナルのサイン。ツイッターより
今日のキエフは快晴で非常に温かいようです。21日午後、協定成立時の独立広場。Reuter Livestreamより

独立広場で追悼集会、携帯の灯りで犠牲者を悼む市民。21日夕刻、Reuter Livestreamより以下同じ
次々と運び込まれる棺










2014年2月13日木曜日

231:「こちらは政府放送局です」ドイツ紙が伝えるNHKの政府宣伝機関化記事の翻訳/解説追加あり

 ドイツの保守リベラルの高級紙ファランクフルター・アルゲマイネが、2月11日付けで、文芸欄で伝えた→NHKの政府宣伝機関化の報道の翻訳を電子版のものからお伝えします。
ちなみに、「日本の国営メディア・こちらは政府放送局です」との見出しを読んだだけで、ドイツ人は、たちまちナチ時代のゲッベルスの宣伝国営放送を想起します。あらかじめそれを訳注としておきます。
わたしの解説としては、ここではただひとつだけ。何度も述べてきましたが、この記事でもはっきりしているように、欧米のメディアから一致して、→歴史修正主義の烙印を押された人物と政府は、国際社会では、それで信用は丸つぶれで、まともな相手とは見なされなくなるという現実があるということです。この厳しさを日本の大半の政治家はもちろん、メディアもまだまだ認識できていないということです。いずれは思い知らされることは間違いありません。

(追加、うっかりして記事の最後の部分の一節の翻訳を落としていましたので、追加します。また11日付プリント本体[終わりに写真で追加]の見出しは、電子版と異なるためそれを青字で追加します。さらに14日に新たな情報と記事への解説を追加しました。)

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F.A.Z.
 Japans Staatsmedien 

   Hier spricht die Regierung 

Es gab keine Sexsklavinnen,und am Zweiten Weltkrig waren alle anderen schuld

 ·  In Japans Staatsrundfunk herrschen chinesische Verhältnisse: Regierungschef Abe trimmt den Sender gnadenlos auf seinen nationalistischen Kurs, Propaganda inklusive.





彼は放送の中立戒律に別れを告げた。日本放送協会会長籾井勝人。一月日本の国会で:AFP
Der Versuch des japanischen Regierungschefs Shinzo Abe, den staatlichen japanischen Rundfunk- und Fernsehsender NHK zum Sprachrohr seiner nationalistischen Agenda zu machen, nimmt zunehmend skurille Züge an. Sogar die amerikanische Botschaft in Tokio hat sich dieser Tage schon gezwungen gesehen, gegen den wachsenden Einfluss von Nationalisten und Revisionisten in den Aufsichtsgremien des Senders zu protestieren.

本の政府の長である安倍晋三による、日本の国営ラジオとテレビ放送・NHKを、彼の国家主義的アジェンダのメガホンにしようする試みが、次第におかしな様相となっている。この数日間、放送局の監督機関における国家主義者と修正主義者たちの増大する影響に対して、東京のアメリカ大使館までが抗議することを強いられている。

Zuvor hatte einer der von Abe protegierten neuen Rundfunkaufseher abermals mit obskuren Thesen versucht, die Geschichte des Zweiten Weltkriegs umzuschreiben. Die Kriegsverbrecherprozesse in Tokio 1945 kritisierte er als „absurd“ und warf den Amerikanern vor, mit den damaligen Gerichtsverfahren nur von eigenen Kriegsverbrechen wie den Flächenbombardements auf Tokio und den Atombombenabwürfen auf Hiroshima und Nagasaki abgelenkt zu haben. „Wir hoffen, dass Personen mit Verantwortung in Japan und anderswo Kommentare vermeiden, welche die Spannungen in der Region anheizen“, sagte ein Sprecher der amerikanischen Botschaft.

その前に、安倍により取り立てられた新しい放送監督者のひとりが、またしてもうさん臭いテーゼで第二次世界大戦の歴史を書き換えようとした。彼は1945年の東京裁判を「馬鹿げていると」批判し、かつての裁判はアメリカ人が、東京大空襲や広島と長崎への原爆投下などの戦争犯罪をごまかそうとしたと非難した。アメリカ大使館の報道官は「日本とその他の責任ある人々が、地域の緊張を煽るようなコメントを避けることを願っている」と述べている。

Der NHK als Propagandamaschine

Dass Ministerpräsident Abe den Sender nicht nur auf Regierungslinie bringen, sondern ihn auch als Instrument zu einer nationalistischen Umdeutung der japanischen Geschichte des Zweiten Weltkriegs nutzen will, ist offensichtlich. Schon in seiner ersten Woche als neuer NHK-Chef hat der von Abe eingesetzte Katsuto Momii das deutlich gezeigt.

宣伝機関としてのNHK

安倍首相が放送をして、単に政府路線に持ち込もうとするだけではなく、第二次世界大戦時の日本の歴史の国家主義的な解釈転換の道具にしようとしていることは明らかである。安倍により任命された新任のNHKの会長である籾井勝人がそれを着任した最初の週に示した。

Momii versteht nicht viel von Journalismus. Aber der frühere Vizepräsident des Handelshauses Mitsui ist ein Vertrauter des Regierungschefs, und vor allem teilt er dessen nationalistische Ideologie. Deswegen, so heißt es in Tokio, hat Abe ihn auch zum Chef des japanischen Staatsfernsehens NHK gemacht. Der Start ins neue Amt geriet für Momii jedoch unfreiwillig zum Desaster. Er zeigte schon auf seiner ersten Pressekonferenz als NHK-Chef deutlich, dass er von einem unabhängigen Staatsfernsehen in Japan nichts hält. „Wenn die Regierung sagt ,rechts‘, dann können wir nicht sagen ,links‘“, sagte er. Der Sender solle deutlich die „japanische Position“ zeigen, forderte Momii. Im Klartext: NHK - bislang noch mit hohem Ansehen - soll in den drei Jahren seiner Amtszeit zum Propagandainstrument werden, oppositionelle Stimmen sind nicht erwünscht. Das Programm von NHK solle in Zukunft nicht allzu weit entfernt von den Positionen der Regierung sein, erklärte Momii.

籾井はジャーナリズムにそんなに理解がありはしない。しかしながら三井物産の元副社長であった彼は、政府の長と親密であり、なによりも両者は国家主義的イデオロギーで一致している、そうであるからこそ安倍は彼を日本の国営テレビ放送NHKの会長に据えたと、東京では伝えられている。ところが、新任のスタートから籾井は、意に反して破綻することになった。彼はNHKの会長としての最初の記者会見で、日本での独立した国営放送を維持するつもりがまったくないことをはっきりさせた。「政府が『右』と言えば、われわれは『左』と言うことはできない」と述べたのだ。放送ははっきりと「日本の立場」を示さねばならないと籾井は要求した。はっきりしていることは---これまでは高い評価を得ている---NHKは、彼の3年の任期中に宣伝道具にならねばならぬということであり、対立意見は歓迎されないということである。NHKの番組は将来、政府の立場からそれほど離れたものであってはならないと籾井は声明した。

Sie leugnen und verdrängen

Diese Bemerkungen des neuen NHK-Chefs wären in der japanischen Presse wahrscheinlich nicht weiter beachtet worden, hätte Momii sich nicht auch zu den sogenannten „Trostfrauen“ geäußert. Diese Frauen, zum größten Teil junge Koreanerinnen, sind während des Krieges mit Gewalt zu Zehntausenden in Frontbordelle der japanischen Armee verschleppt und zur Prostitution gezwungen worden. Abe leugnet dieses Kriegsverbrechen bis heute; es passt nicht in sein Weltbild eines gerechten Krieges, den Japan nach Ansicht der Hardliner in der Regierung damals führte. Momii erklärte mit Blick auf die Sexsklavinnen, das habe im Krieg doch „jedes Land“ gemacht. Was damals passierte, werde nur vor dem Hintergrund der „heutigen Moral“ kritisiert. Und überhaupt: „Die Dinge sind kompliziert, weil Südkorea behauptet, Japan sei das einzige Land, das mit Gewalt“ Frauen rekrutiert habe.

彼らは否定し隠蔽する

新しいNHK会長のこれらの見解は、もし籾井がここで、いわゆる「慰安婦」に言及しなければ、日本の報道でおそらくこれほど注目されなかったであろう。これらの女性たち、彼女らの多くが若い朝鮮人女性で、戦争中に暴力的に日本軍の前線の売春宿へ連行されて売春を強制された。安倍は今日に至るまでこの犯罪を否定している:当時の政府の強硬派が意図して遂行した正義の戦争の世界観に整合しないからだ。籾井は性奴隷の女性たちに関して、それは戦時には「どこの国も」行ったと述べた。かつて起こったことを「今日のモラル」を背景にして批判されている。そしてとにかく:「韓国が、日本だけが暴力で女性たちを集めたと主張するからややこしくなる」と言った。

Dass Japans Armee damals Zehntausende Mädchen generalstabsmäßig zu Sexsklavinnen machte - was in dieser Form nach allen Erkenntnissen internationaler, unabhängiger Historiker einmalig war -, wird von den neuen Mächtigen an den Schalthebeln der Macht in Tokio bis heute bestritten - genauso wie die Tatsache, dass Japan China und Korea in einem Angriffskrieg unterworfen hat. Auch Abes Kabinettsstaatsminister Yoshihide Suga weigerte sich in einer Stellungnahme, zur Frage der Verantwortung Japans im Falle der euphemistisch als „comfort women“ bezeichneten Sexsklavinnen klar Stellung zu beziehen. Er sagte nur, Momii habe deutlich gemacht, dass er seine umstrittenen Äußerungen als Privatperson gemacht habe. Damit ist der Fall für die Regierung in Tokio erledigt. Konsequenzen gab es keine, weil Suga und Abe diese Position in inoffiziellen Zirkeln ohne jede Einschränkung teilen.

かつての日本軍が何万人もの少女たちを、参謀本部方式で性奴隷にした---この方式は国際的にも、独立した歴史研究者たちの見解においても独自のものであったとされている---ことは、東京の新しい政権の権力者の変速レバーによって今にいたっても否認されており、また日本が中国と朝鮮を侵略戦争で征服した事実も同様に否認されている。菅義偉官房長官も、婉曲的に「慰安婦」と呼ばれている性奴隷女性たちの問題への質問で、明確な見解を示すことを拒否した。菅は、籾井は彼の問題発言を個人的な見解としてしただけであるとはっきり述べたと答えた。これで東京政府にとっては一件落着となった。責任は問われない、なぜなら菅と安倍は非公式な内輪では、このような立場と何の制約もなく同意見であるからだ。

Ein Revisionist als Rundfunkaufseher

Das Echo in China und Südkorea auf die Äußerungen des neuen NHK-Chefs war verheerend. Sowohl in Peking wie in Seoul wird der Auftritt Momiis als weiterer Beleg für den unter Abe in die japanische Politik einziehenden Nationalismus und Revanchismus gedeutet. Da Momii sich - auf gut japanische Art - unverbindlich für seine Äußerungen entschuldigte, aber im Amt bleibt, dürfte er seine dreijährige Amtszeit nutzen, NHK auf Linie zu bringen. „Wenn es in Japan noch eine Gruppe mit Gewissen gibt, wie kann ein Mann wie Momii mit einer so unethischen Einstellung, der solche absurden Äußerungen macht, an der Spitze des öffentlichen Rundfunks stehen?“, fragten Stimmen aus Seoul nach Tokio. Antworten gab es nicht.

放送監督者としての修正主義者

 新しいNHKの長の発言に対する中国と韓国からの反応は壊滅的なものとなった。北京と同様にソウルにおいても、籾井の登場は安倍のもとで日本の政治に浸透する国家主義と報復主義のさらなる証拠であると受け止められている。実に日本的なやり方であるが、籾井は責任をとることなく、発言を謝罪しながらも地位を保っているので、彼は3年の任期をNHKを路線に乗せようと利用するであろう。「もし日本に良心のあるグループがあるならば、これほど馬鹿げた発言をする籾井のような反倫理的な意見を持つ人物が、公共放送の長に就くであろうか?」と問う声がソウルから東京に届いた。返答は全くなかった。

Der Auftritt Momiis ist kein Einzelfall. Einer der neuen von Abe eingesetzten Rundfunkaufseher leugnete auf einer Wahlkampfveranstaltung in Tokio das Massaker der japanischen Armee in Nanking - auch er ist damit auf einer Linie mit dem Geschichtsrevisionismus Abes. Jetzt veröffentlichte Protokolle der letzten Sitzung der NHK-Aufsichtsgremien belegen, dass die von Abe berufenen Rundfunkräte den Sender dazu bringen wollen, das Geschichtsbild der japanischen Nationalisten zu verbreiten und andere Meinungen nicht zuzulassen. „Es sollte Raum für Programme sein, die solche Grundkenntnisse der Geschichte vermitteln“, forderte der von Abe ins Amt gehievte Naoki Hyakuta, der das Nanking-Massaker leugnet und als Autor eines Romans über einen heldenhaften Kamikaze-Piloten bekannt geworden ist.
籾井の登場は例外ではない。安倍により新たに任命された放送監督者の一人は、東京の選挙戦で、南京での日本軍の虐殺を否定した---これによって彼も安倍の歴史修正主義と同じ路線である。公開された最新のNHKの経営委員会の議事録は、安倍により招集された放送の助言者たちが、放送をして日本の国家主義者の歴史観をを広めて、他の意見を容認しないようにさせようと望んでいることを証明している。「このような歴史の基本認識を伝える番組への余地があるべきである」と安倍によりこの地位に持ち上げられた百田尚樹は要求している。彼は南京虐殺を否定し、また神風飛行士に関する英雄的な小説の著者として有名になった人物である。 

In einer Stellungnahme des Staatssenders, der um sein Ansehen besorgt ist, heißt es, es handele sich um private Ansichten der Rundfunkräte. Die Benennung dieser Abe-Vertrauten passt aber zu einer Reihe von Entscheidungen der Regierung, die Pressefreiheit in Japan systematisch auszuhöhlen. So peitschte der Regierungschef Ende vergangenen Jahres ein Gesetz zum Schutz von Staatsgeheimnissen durch das Parlament, das von der liberalen Presse als Beginn einer Zensur kritisiert worden ist.
Der neue NHK-Chef sagte dazu: „Jetzt, da das Gesetz beschlossen ist, gibt es keinen Grund, es in Frage zu stellen.“ Das Ergebnis dieser Politik zeigt sich schon: Wenn NHK-Redakteure im Gespräch mit ausländischen Kollegen auf die Risiken und Gefahren der Politik Abes hinweisen und man sie fragt, warum sich davon nichts im Programm wiederfindet, zucken sie nur resigniert mit den Schultern.

 評判を懸念した国営放送の表明によれば、これは経営委員たちのプライベートな意見であるとのことだ。とはいえ、このような安倍が信頼する人たちの任命は、日本における報道の自由をシステマチックに空洞化させる、政府による一連の決定に合致している。
政府の長は昨年末に、リベラルな報道機関から検閲の始まりであると批判されていた国家機密の保護法を議会で強行に成立させた。
 新しいNHKの会長はこれについて「法律が決定された今では、それに疑問を呈する理由はない」と述べた。このような政治の結果はすでに現れている:NHKの編集者たちが外国人の同業者たちととの話しの中で、安倍の政治の危うさと危険性が話題になり、彼らが何故この問題が番組に全く採り上げられないかと問われると、彼らはあきらめて肩をすくめるだけである。(訳責:梶村太一郎)
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Frankfurter Allgemeine Zeitung 11.Feb.2014 Feuilleton
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この項はかなり読まれているようですので、14日の追加情報を少し。

*筆者のゲアミス特派員が16日付の「赤旗日曜版」に写真入りで紹介されています。
 この記者は、経歴からして政治経済が専門です。そしてはじめに書きましたように、同紙は赤旗とは、ちょうど立場が反対にある、強いて日本で言えば読売新聞と日経を併せたような立ち位置にあるクオリティーペーパーです。
そのような特派員の率直な言葉を、読売や日経が伝えるのではなく、赤旗がちゃんと伝えているところに、日本の大メディアの劣化が見事に現れています。
このNHK問題が、他の大手メディアの批判をかわして、会長以下経営委員会の問題委員の辞職なしに終われば、次には大手メディアが同じような問題に直面することになるという自覚が必要でしょう。
ゲアミス氏の意見は、決して偏ったものではなく、世界世論では中道のものです。そのことが理解できていない、日本のメディアの特に、政治部編集局は自らの頭の中が、永田町の井の中でガラパゴス化しているかを自覚すべきであるとおもいます。

*この記事で、もうひとつ訳注が必要です。それはこの記事でリードからして使われている、Staatsrundfunk/国営放送という言葉です、法的にはNHKは公共放送で、国営放送ではありません。ドイツの放送には、ちゃんとder öffentlich-rechtliche Rundfunk/公共放送という言葉があります(英語ではpublic broadcasting)。この記事でも韓国からの批判にはその言葉がちゃんと使われています。
ドイツの公共放送であるARDやZDF/ドイツ第一、第二テレビを、もし日本のメディアが国営放送と書いたら、たちまち「Staatsrundfunkではない」と正式に抗議されるでしょう。
この記事は、そのことを意図して書かれた記事なのです。すなわち「中国的状況」という言葉がそれです。抗議が来れば、「籾井会長の人事と意見は、中国の国家放送とどう違うのか」と反論されれば、言い逃れはできません。すなわちこの「国営放送」という言葉を、強烈な批判を込めて使っていることも読み取る必要があります。

これに関して付け加えれば、NHKは自ら→「公共放送とは何か」との質問に答えて:
  ●電波は国民共有財産であるといことからすると広い意味では民放も公共性があるといことになりますが一般的には営利を目的として行放送を商業放送民間放送)、国家強い管理下で行放送を国営放送といことができます 
 これらに対して公共放送とは営利を目的とせず国家統制からも自立して公共福祉ために行放送といえるでしょ 

 ●NHKは政府から独立して 受信料によって運営され公共福祉と文化向上に寄与することを目的に設立された公共放送事業体であり今後とも公共放送として責任と自覚を持って役割を果たしていきます

、としています。
全く優等生の回答であり、そのとおりです。したがって籾井会長問題で「国営放送」であると断定されても、まさに記事にあるように「肩をすくめるだけで」反論は一切できないことになるのです。

*ネットでは、「ドイツも強制売春があったではないか。同罪だ」という宣伝が起きつつあります。これについては、昨年の橋下市長の「慰安婦必要論」批判した際の、→ナチスの強制売春施設の研究の紹介を参考にしてください。
確かに、ドイツにも強制収容所内で特殊な強制売春施設がありましたが、これは日本軍が行った、ゲアミス記者が書いているような参謀本部方式で行った制度とは、目的もも規模も全く異なったもので、同等のものではありません。歴史修正主義に共通な手段は、字面が同じだけで「お前もやった」と決めつけるやり方です。デマ宣伝に乗らないようにしてください。

*ゲアミス記者の記事にあるドイツ語の「参謀本部方式」という言葉は、今の日本では理解が難しいでしょう。参謀本部を生んだドイツでは日常的に使われます。
歴史については→プロイセン参謀本部 を参考にしてください。
またわたしも、→ある寄稿でこの言葉を使ったことがあります。現在どのように使われているかの参考にしてください。

おまけ:我が家のネコのアズキも女の子なので、舛添氏が都知事になったことに大いに怒っているようです。



2014年2月12日水曜日

230:日本は報道の自由ランキングで59位に転落:秘密保護法でついに「顕著な問題国」に。始まった記者の国内亡命

 2002年度からNGO「国境なき記者団」(本部パリ)が公表している報道の自由に関する世界ランキングの→2014年度報告が2月12日に公表されました。
 
 日本の報道の自由は、最初の2002年度では第26位で、以来上下を繰り返してきましたが、2010年度には民主党政権下で第11位にまで上昇し、ドイツの第17位を抜いていたのですが、2013年度はフクシマ事故の報道規制で、一挙に第53位に急下降し、本年度は特定秘密保護法の成立で第59位となりました。そしてついに、この図にあるように、5段階のなかの黄色の「満足できる情況」からオレンジ色の「顕著な問題」のある国へと転落しました。ちなみにドイツは本年度は第14位で白色の「良い情況」の国に入っています。
アメリカ合衆国は、昨年度の第32位から、スノーデン氏などの内部告発者の追訴などのため、今年は第42位まで下がっています。

この図の詳しいPDFはドイツ支部公表による→こちらからご覧ください。

これで、日本は→共同通信が伝えるようにいわゆる「先進国」の中では、唯一の「顕著な問題国」となりました。リストと地図のように、アジアではパプア・ニューギニアや台湾、韓国よりも下位となり、とても先進国とはいえなくなりました。

 今のところ→NHKも客観的に報道していますので、保存しておきましょう:
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 報道自由度 日本は順位下げる
 

ジャーナリストの国際団体、「国境なき記者団」は、国や地域ごとに、どの程度、自由な報道が認められているかを示す「報道の自由度」ランキングを発表し、日本は特定秘密保護法の成立で取材活動がさらに難しくなるだろうとして、前の年の53位から59位と順位を下げました。

「報道の自由度」ランキングは、フランスのパリに本部を置く、ジャーナリストの国際団体「国境なき記者団」が毎年、発表しているもので、今回は世界180の国と地域について12日、発表しました。
このうち日本については、東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、フリーランスや外国人の記者が政府や電力会社の記者会見に参加できないことがしばしばあると指摘しています。
 

 そのうえで、去年12月に成立した特定秘密保護法の影響で、フリーランスや外国人の記者が原発の問題を取材するのは今後、さらに難しくなるだろうとして、順位を前の年の53位から59位に下げています。
また、国の情報機関による情報収集活動の実態が明らかになったアメリカも、前の年の32位から46位と大幅にランクを下げています。
このほか、1位のフィンランドを筆頭に上位8位までをヨーロッパが占める一方で、東アジアでは台湾が50位、韓国が57位、中国は175位、北朝鮮は179位と、いずれも順位を下げています。


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というのも、今年は特定秘密保護法の施行と、さらに安倍首相「オトモダチ経営委員会」の問題(これについてはドイツでの報道がありますので項を変えて報告の予定です)で、来年度はさらにランクが下がり、NHKは全く報道できなくなる虞れがあるからです。

日本語では→ハフィントンポストが、最も詳しく報告の日本に関する指摘の一部の翻訳も付けて報告していますので参考にしてください。

 さて、今回の報告でも問題点として再三指摘されている「日本特有の記者クラブ制度」と、フクシマ事故の報道制限ついては、2年前の⒋月にフリージャーナリストの上杉隆さんがベルリンで講演された報告(→その1→その2)で詳しく伝えたとおりです。
いずれも、よく読まれた報告ですので未読の方は参考にしてください。

 その時は、公表しませんでしたが、一枚の写真をお見せしましょう。これは上杉氏の講演のあとで、同じフリーランサーとして、日独の報道の自由の落差を現す物証を示したものです。左の上杉氏が示しているのが、ドイツ記者同盟発行の2012年度の記者証で、右の筆者が示しているのが、これを基にドイツ政府直属の連邦新聞庁が発行する同年度の連邦政府のアクレジ証です。これにより、わたしのような外国人のフリーランサーでも一定の実績があれば、ドイツでは大新聞の記者はもちろん、公共テレビの報道局長と全く平等に記者会見で並んで首相にも質問できるのが日常で、少なくとも法的な差別は全くないのです。

 
2012年4月13日ベルリン。写真:矢嶋宰

これらの他に、わたしはドイツ外国人記者協会の記者証も持っていますが、時にはこのおかげでドイツ人記者よりも優遇されることさえあります。例えば来週の2月19日には外国人記者協会会員だけに限定したガウク大統領との記者会見が大統領府であります。
 上杉氏ら日本人フリーランサーや外国人記者に対する差別は、とても先進国とはいえません。

 そして、日本の情況はまさに、今回のランキングが示すように、2年前より極度に悪化しています。
 それを示す一例です。先日から、東京都知事選挙でも現場から最も優れた報告をしてくれ、わたしもとても感謝している田中龍作氏が、→2月9日のツイッターで以下のように伝えています:


読者皆様 田中龍作は日本外国特派員協会FCCJ)」メンバーシップを取得し晴れて会員となりました 秘密保護法下ではフリーランスは報道機関と見なされないからです 簡単に逮捕されないため身分保証が必要でした

 これを目にしたわたしは、「ジャーナリストの国内亡命の始まりだ」と直感しました。ついにここまで来たかと思わざるを得ません。明らかに日本の民主主義が窒息を始めている兆候のひとつです。
 今年は、ジャーナリストのこのような国内亡命が増えるのではないかと危惧します。
その次は、牢獄か国外亡命となります。

2014年2月10日月曜日

229:都知事選挙結果:残念でしたが脱原発の意志を大きく示した都民に敬意を!これからの重い課題とは

 昨日の都知事選挙の結果の→暫定得票集計がようやく終わった段階でこれを書いています。
おそらく、東京では45年ぶりの大雪のためもあるでしょうが、投票率が46%と非常に低く、脱原発票は残念ながらわたしが期待したほどではありませんでした。とはいえ、脱原発運動にとっては大きな成果を挙げたといえ、嬉しく思います。

 まずは、宇都宮氏の陣営が、これほどの低い投票率にもかかわらず、前回の得票数を上回る98万票以上を確保したのは大変な成果です。手堅い成果であることは間違いありません。敬意を表します。
 
 また細川・小泉両氏の陣営が全くの組織もなく、いきなり集まった文字どおり手弁当の市民の数週間の力で、宇都宮氏に次ぐ96万票近くを得たのは、これも大きな成果です。
準備の時間さえもっとあれば、さらなる上積みは間違いなかったでしょうが後の祭りです。しかし、フクシマ事故後、脱原発の戦旗を保守の陣営の真ん中で高く掲げたことは、画期的なことでした。これからの長く厳しい脱原発の闘争の中での大きな成果です。敬意を表します。
最終日の演説の光景です。ツイッターから借用します。脱原発史のひとこまですね

 今回の選挙で最大の成果は、両陣営併せて39・8%を得て、当選した舛添氏の43・4%にわずか3・6%の差まで迫ったことでしょう。突然行われた今回の首都の選挙でこれほどの得票率を得たことは、ひと月前には考えられもしなかったことです。
舛添陣営には及ばなかったとはいえ、この結果が原発ロビーに深刻な打撃と脅威を与えていることは間違いありません。両陣営の健闘に敬意を表します。即脱原発への大きな希望が出てきました。おそらく、海外メディアもここに注目して報道すると思われます。

 併せて今一歩及びませんでしたが、積雪の中で、脱原発の意志を示し健闘された都民の皆さんにベルリンからも深く敬意を表します。

 その上で、これからの課題について少し述べます。 

 今回の選挙では残念ながら鎌田慧氏ら心ある人々の努力にもかかわらず実現できませんでしたが、これからの各地で選挙で脱原発派が統一候補を立てれば、勝利する可能性が現実のものとなりそうです。これがこれからの最大の課題でしょう。

 民主勢力が統一することなしには、脱原発はできません。必要不可欠です。ドイツでは30年かかって実現したのです。フクシマ事故で傷ついている日本には、そのような余裕と時間は残されていません。即脱原発の統一運動を展開することが、重いですが焦眉の実現すべき課題です。再稼働阻止運動も周辺の行政と一致して進めなければなりません。

 もうひとつの重い課題です。今回、極右の田母神陣営がなんと12・5%の61万票を獲得しました。これは大変恐ろしいことです。なぜなら原発の脅威とともに、もうひとつの排外的国家主義という近代史上最悪の勢力が、ここで完全に復活したことが顕著になったからです。これは単に日本社会だけの問題ではなく世界にとっても危険なことです。
これこそ、警告してきた→靖国引きこもり症という病氣の亢進なのです。
 この写真ひとつが明瞭に語っています。
中央が聖戦祭総裁の田母神氏 於金沢
  かつてドイツは、当時は最も民主的なワイマール憲法下にもかかわらず、経済危機による中産階級の没落と、もうひとつは共産党と社会民主党の取り返しのつかない反目によって、ナチスの台頭を許し、ついに人類史上最悪の戦争を勃発させました。
ここで台頭しつつあるこのような勢力を放置すれば、日本は自他ともに再び災いを及ぼすことになることは、断定しますが間違いありません。

 これに対しては、脱原発勢力だけでなく広くリベラルな民主勢力が一致して闘わねばなりません。これも今回の都知事選から出てきた重い課題と言えます。これも安倍首相がこの勢力をNHKの中枢に据え公共放送を乗っ取っり市民権を得ようとしたことのひとつの結果でしょう。 ワイマールの愚を繰り返そうとする日本と安倍政権は、世界からいよいよ厳しく注視され、批判されることも不可避です。なにも中国や韓国だけではなく、日本が異常であるとの危機感は公汎で、非常に強いのです。

 もうひとつ憂慮すべきことは、マスメディアの不甲斐なさです。
一例を挙げると本日の朝日新聞の社説があります。 これほど見事に腑抜けで芯のない社説には呆れるばかりです。笑止ここに尽きます。→天声人語の方が、はるかに全うです。ホントに情けないことです。

 以上簡単ですが、おそらく日本の歴史でひとつの節目になるとおもわれる、今回の東京都知事選挙の結果を観ての、わたしからの若干の課題について述べました。

 余談ですが、つらつら思うに、宇都宮氏と細川氏の人生の長所を併せ持ったような若い世代の人物、もとより男女を問いませんが、 を得ない限り、日本は救われないのではないかというのが、この選挙の結果考えさされるところです。その素質を持った若者が日本に多くいることだけは間違いないのですが。

 もうひとつ、これは個人的なことですが、 明日うらしまのふるさと、岡山県津山市の同じ日の市長選挙で、わたしも支持する→宮地昭範市長が再選されました。こちらの方は諸手を挙げて万歳です。市の財政と環境問題に目張り強く取り組み、とても市民に信頼されている人物が公明党と市の自民党支部の推薦で、自民党県連と維新推薦のの対立候補を打ち破りました。

 宮地市長!おめでとうございます。わが歴史あるふるさと津山をこれからもよろしくお願い致します。
再選された宮地津山市長。山陽新聞より感謝して借用します。



2014年2月9日日曜日

228:世界中が東京都民による原発ロビーの最初の首とりを注視しています

 いよいよ、東京都知事選挙の投票日となりました。東京都都民の皆さまの意志を世界に示す日です。

 今から300年前、赤穂浪士はちょうど積もった雪を踏みしめて、江戸の吉良邸に討ち入り、憎き吉良の首をとりました。今日世界中は、日本の首都の有権者がはたして、原発推進派の最初の首をとるか否かを注視しています。

 始まったばかりの冬期オリンピックの開催地であるソチに接したグルジアの出身で、→エリソ・ヴィルサラーゼというピアニストがいます。彼女は都知事選挙の期間に偶然ですが、日本で演奏しています。シューマンとショパンの演奏家としては世界一です。
 
 音楽好きな皆さんは、彼女のこの→力強いシューマン演奏でも聴きながら、雪を踏みしめて投票場に向かってくださることを願います。落ち着いて、元気が出ますよ。

 歴史の節目には古典が姿を現します。

 それをひたすら期待しています。




2014年2月6日木曜日

227:3年前のベルリン映画祭:小泉元首相を脱原発へ転向させた映画「オンカロ・10万年後の安全」を紹介

 今日、3月6日から例年のとおりベルリン映画祭が始まります。
このブログを始めて以来、招待された一昨年、昨年と2月にはフクシマ事故と震災に関する日本の優れた作品、またこの→映画祭の歴史背景を紹介してきました。

27.Jan.2014.Berlin.Photo:T.Kajimura
今年は、これらに関する日本の映画は、残念ながら久保田直監督の「家路」一本を除いて見当たらないようです。今年の様子は→永井潤子さんの報告をご覧ください。
しかし先月末にあった映画祭のボスであるコスリック氏の記者会見には出かけました。日本の映画人の皆さんにはおなじみのこの方の、記者会見は、実に面白いからです。
その時の左の写真の背景にあるのが今年のベルリナーレのポスターです。

日本映画以外でも、興味ある映画に出くわせば(これは時間があればの問題です)、紹介したいと思います。

 さて、そこで今回は、3年前のベルリン映画祭、すなわちフクシマ事故のちょうどひと月前の2011年2月に上映された原発に関する映画のひとつについて書きます。

というのは、今日、東京都知事選挙戦で連日声をからしている小泉純一郎元総理が、→彼のツイッターで以下のようにつぶやいていることを知ったからです:


私はこれをみて変わった!一人でも多くの人に是非是非みて欲しい。 映画『100,000年後の安全』→(日本語吹き替え版・21012時まで無料配信中


 日本のみなさまにも、この原発推進をしていた(すなわちこの面でも、わたしの長年の宿敵であったし、靖国問題などでは今でも宿敵である)元総理大臣の原発に関する考えを180度転向させる助けとなったこの映画を、無料サービス中の10日までに是非とも観ていただきたいと思うからです。(ただし、ドイツなど特定の日本国外からはネットでは観れませんので、ご了承下さい)

ついでですが、連日街頭演説で頑張っている小泉氏は、ツイッターで以下のようにもつぶやいています:


今日荻窪八王子町田街頭もスゴかっただけど街頭反応と世論調査とどしてこんなに違何度も選挙をし街頭演説をしてきた僕から見るとこれなら圧勝はずだが調査結果は一位ではないおかしい


話だけどところテレビや新聞都知事選報道が限定的時には一方的だと感じるは僕だけだろ原発争点隠しにも見える壁を突破するには街頭で出会った人ネットを見てくれる人力にすがる他はない皆さん壁を必ず突破しよ

この指摘の意味するところは、おそらく今回の選挙結果に関して大きな意味を持つことになると思いますので、ついでにここで引用しておきます。

 さて、本題ですが、2011年2月のベルリン映画祭は、当時の中道右派の第二次メルケル政権がすでに決定されていた脱原発法にある原発の稼働期間を延長させることを強行し、ドイツで反原発運動が、寝た子を起こすように活発になっていた時期でした(わたしも当時の『世界』でこの様子を報告しています)。
そのような政治情勢を背景に、映画祭ではいくつかの原発に関する優れた映画が紹介されており、そのひとつが「10万年後の安全」でした。これも芸術祭の批判精神が社会文化に貢献することの、実に良い一例であると言えます。

これらの原発映画について、日本語の→「ドキュメンタリー映画の最前線」というメルマガでフクシマ事故後の2011年7月に報告があります。

 実は、この報告の筆者である、梶村昌世というのはわたしの長女です。ですからおやじが紹介するには、気が引けるところです。しかしこの際、日本の元首相の考えを変えた映画の日本語でのまとまった内容の紹介の嚆矢でもあるので、ここにあえて該当する後半部分だけを採り上げておきます。全文は上記をご覧ください。
この優れたドキュメントの理解の一助になればと願います。

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   原子力とそ後先をめぐるドキュメンタリー映画

 ・・・・(前半は省略)・・・・

 今日まで核廃棄物問題は解決されていない持続的な処理計画もなければ最終処分場もはない課題に取り組むも一つドキュメンタリー映画がある
 

 様々な映画祭で受賞したデンマーク人監督ミヒャエルマドセンInto Eternity』(『100000年後安全』)はフィンランド最終処分場オンカロを探査するオンカロとはフィンランド語で隠れ場所を意味する世界初永久な最終処分場として企画設計され18億年岩盤地下500メートルに巨大なトンネルシステムが建設されつつあるフィンランドとスエーデン共同企画として20世紀70年代に発足2100年代に完成が予定されている 
 こ最終処分場にはランプルトニムなど原発核廃棄物が保管されるわけな10万年とい想像を絶する期間封じられたままである必要があるすると実践的に切実な同時に哲学的な質問が出てくる10万年後人類は滅びているかもしれないもしかして存在しているかもしれないまたは違生態系が生まれているかもしれない

 いずれにしろ10万年後文明に最終処分場オンカロを封鎖したまま開けてはならないことをど伝えるとい問題にぶつかる言語も文字も知能も10万年後間は全く異なっていることが予想されるに未来人間とコミュニケーションをとるか如何にして情報を収めるか北欧専門家が思い悩む

 『アンダーコントロールとはスタイルが全く異なるこ映画はタイムカプセルな建設中最終処分場を発破工に付いて探索し最終処分場をめぐる様々な要素を専門家たちが会議で議論しているかにカメラに向かって語る監督自身も10万年未来人間に語りかけるといナレーション手段を取り映像撮り方使い方も現実を超現実的なもにしていく 
 実際10万年歳月を考えると現実といはとてつもなく小さくなっていく未来が如何に予想できないことかが明らかになりそして人間存在私たち想像限界が見えてくるわからないとい事実だけが確かに見えてくる

 今私たち家庭に送られてくる原子力によって発電された電気はな計り知れない後難がある原子力といテクノロジーが生み出した様々な問題は末永く人間に付き添い被曝と放射能汚染とい危険はなくなることがない

 
 戦後子力いわゆる平和利用が始まってから平均で10年に一度世界どこかで起きた大きな原発事故と核軍拡競争へ反応としてドイツでは60年代から根強い反核運動が生まれ人々は高い問題意識を持っているそして1986チェルノビリ原発事故で放射能雲が西ヨーロッパまで届き健康と生活を脅かされる経験をする今回福島第一原発事故で地球反対側にあるドイツがここまではっきりと脱原発に踏み出した背景がある

 しかし似たよな過去を持っている日本とドイツが現在こにも違状況にある一つ理由があるよに思える第二次世界大戦で同盟国として加害者であった二つ国は戦後戦争責任へ取り組みが国レベルでも個人レベルでも異なっている 

 日本では原爆投下被害によりアジア各国で戦争犯罪を充分に伝えれることなく広島長崎経験者でありながらも原発を促進してきたドイツはホロコーストと60年代から向き合い反省が社会全体に対する批判的な姿勢を促し根強い社会運動と環境保護運動を生み出した過去に向き合い責任を持つことは未来を育てることでもある今回大きな試練を機に日本人一人一人が自分と社会繋がりそして自国歴史を見つめ直し自分と世界日本と世界関係を考え今後少しでも暮らしやすい環境を作っていけたら今回大きな犠牲もまたチャンスであるに違いない

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