同法案は、国策としての原発推進を、福島事故の教訓「虚構の安全神話」によって国策としての脱原発政策へ転換し、それを「遅くとも、平成三十二年から平成三十七年までのできる限り早い三月十一日までに実現されなければならない」と明記しています。すなわち2020年から2025年の年度末を最終期限としています。
すなわち、超党派の脱原発会派国会議員の最大公約数をまとめた基本法です。
とはいえ、ドイツの脱原発法では最後の原発は2022年年末ですから、ドイツよりも完全廃炉が早く実現する可能性があります。素晴らしいことです。
これによって1989年から90年にかけて、高木仁三郎氏らのイニシアチブで350万の賛同署名を集めながら、国会提出にいたらなかった未完の意思が、ようやく本日実現しました。日本の市民は、ようやく国策としての脱原発を実現する画期的な市民議員立法案を国会の場に持ち込んだことになります。その意味で今日は歴史的な日と言えます。
今国会会期は明日に終了しますので次期国会での継続審議となりました。もちろん103名では法案成立は不可能ですから、賛成議員を過半数とするべく、次は総選挙での有権者の出番となります。
この法案を基にして、脱原発候補者、エセ脱原発候補者、原発推進候補者を明確に見分けることができます。有権者はまたとない民主主義実現の武器を手にしたのです。
これを基本に脱原発、持続可能エネルギー社会を実現して初めて、日本はフクシマ事故で教訓を得た社会として核兵器と原発で苦しむ世界で全うな未来を選択をした国として、「第二の敗戦」で再び傷つきながらも、国際社会で名誉ある地位をしめることが可能になるのです。
苦しみながらも誇りをもって脱原発で持続可能社会を創りましょう。
本日の詳しい報告は脱原発法制定全国ネットワークのHPでの→海渡雄一弁護士の報告を
ご覧ください。 そこには詳しい経過とこれからの活動の呼びかけとともに、提出された法案オリジナル、賛成・賛同議員のリストの資料などもあります。
また原子力資料情報室の高木仁三郎氏の後継者のひとりである→伴 英幸氏の今日の報告もご参考に。
提出後、議員会館で行われた→提出報告の記者会見はIWJで記録されています。
なお、9月8日発売の→『世界』10月号に河合、海渡両弁護士による寄稿「脱原発法で原発推進の国策にとどめを」がありますので、さっそくご覧ください(8日追加)。
以下は法案の全文です。
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脱原発基本法案
東日本大震災における原子力発電所の事故から学び取るべきものは何か。世界で唯一の原子爆弾の被爆国でありながら、虚構の安全神話の下で推進してきた我が国の電力政策の見直しが、その重要な課題であることは論をまたない。
原子力発電は、潜在的な危険性の高さにおいても、放射性廃棄物の処理においても、信頼性及び安全性が確保されたエネルギーではない。一旦事故が起これば 幾多の人々が故郷を追われ、働く場を失い、家族を引き裂かれるのみならず、周辺地域や国民経済に与える甚大な被害や人々の不安と恐怖を考えれば、むしろエ ネルギーとして、極めて脆(ぜい)弱なものであった。
原子力発電所において重大な事故が発生した場合に被害を受けるのは、原子力発電の利益を享受している現在の世代の人間にとどまらない。将来の世代の人間 も、その事故に起因する数々の危険にさらされる。また、事故が発生しなくても、いまだに放射性廃棄物の最終処理の道筋が確立しておらず、仮に確立できたと しても、十万年以上の長い管理が必要とされる。原子力発電所の事故がもたらす重大な影響を知った我々は、今こそ「脱原発」の意思決定をする責務がある。
一方、今後の我が国は、低炭素社会を目指すとともに経済の活力を維持することが不可欠である。省エネルギーを一層推進すること、再生可能エネルギー電気 を普及させること、発電方式等を高効率化すること、エネルギーの地産地消を促進すること等と併せ、原発立地地域の経済雇用対策も重要である。
このような状況に鑑み、原子力発電を利用しなくなることに伴う各般の課題への適確な対応を図りつつ、原子力発電を利用せずに電気を安定的に供給する体制を早期に確立することは緊要な課題である。
ここに、我々は、国家として「脱原発」を明確にし、その確実な実現を図るため、この法律を制定する。
(目的)
第一条 この法律は、原子力発電所の事故による災害が発生した場合に国民の生命、身体又は財産に重大な危険が生ずること及び経済社会に及ぼす被害が甚大に なること、原子力発電の利用を継続した場合に使用済燃料(原子炉において燃料として使用された物質をいう。以下同じ。)の長期にわたる保存及び管理が一層 困難となること等に鑑み、脱原発について、基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、脱原発のための施策に関する基本的な計画について定めることにより、できる限り早期に脱原発の実現を図り、もって国民の生命、身体又は財産を守るとともに国民経済の安定を確保することを目的とする。
第一条 この法律は、原子力発電所の事故による災害が発生した場合に国民の生命、身体又は財産に重大な危険が生ずること及び経済社会に及ぼす被害が甚大に なること、原子力発電の利用を継続した場合に使用済燃料(原子炉において燃料として使用された物質をいう。以下同じ。)の長期にわたる保存及び管理が一層 困難となること等に鑑み、脱原発について、基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、脱原発のための施策に関する基本的な計画について定めることにより、できる限り早期に脱原発の実現を図り、もって国民の生命、身体又は財産を守るとともに国民経済の安定を確保することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、「脱原発」とは、原子力発電を利用しなくなることに伴う各般の課題への適確な対応を図りつつ、原子力発電を利用せずに電気を安定的に供給する体制を確立することをいう。
2 この法律において、「再生可能エネルギー電気」とは、太陽光、風力等の再生可能エネルギー源を変換して得られる電気をいう。
第二条 この法律において、「脱原発」とは、原子力発電を利用しなくなることに伴う各般の課題への適確な対応を図りつつ、原子力発電を利用せずに電気を安定的に供給する体制を確立することをいう。
2 この法律において、「再生可能エネルギー電気」とは、太陽光、風力等の再生可能エネルギー源を変換して得られる電気をいう。
(基本理念)
第三条 脱原発は、遅くとも、平成三十二年から平成三十七年までのできる限り早い三月十一日までに実現されなければならない。
第三条 脱原発は、遅くとも、平成三十二年から平成三十七年までのできる限り早い三月十一日までに実現されなければならない。
2 脱原発を実現するに当たっては、電気の安定的な供給に支障が生ずることとならないよう、かつ、二酸化炭素の排出量の増加ができる限り抑制されるよう、 省エネルギー(エネルギーの使用の合理化をいう。以下同じ。)が一層推進されるとともに、再生可能エネルギー電気及び天然ガスを熱源として得られる電気の 利用の拡大が図られるものとする。
3 脱原発を実現するに当たって生ずる原子力発電所が立地している地域及びその周辺地域の経済への影響については、その発生が国の政策の転換に伴うものであることを踏まえ、適切な対策が講じられるものとする。
4 脱原発を実現するに際し、発電の用に供する原子炉は、その運転を廃止するまでの間においても、最新の科学的知見に基づいて定められる原子炉等による災 害の防止のための基準に適合していると認められた後でなければ、運転(運転の再開を含む。)をしてはならないものとする。
(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、脱原発を実現するための施策を総合的に策定し、脱原発を実現するため、省エネルギーの推進並びに再生可能エネル ギー電気及び天然ガスを熱源として得られる電気の利用の拡大のために必要な政策を推進するとともに、脱原発を実現するに当たって生じ得る原子力発電所を設 置している電気事業者等(以下「原子力電気事業者等」という。)の損失に適切に対処する責務を有する。
第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、脱原発を実現するための施策を総合的に策定し、脱原発を実現するため、省エネルギーの推進並びに再生可能エネル ギー電気及び天然ガスを熱源として得られる電気の利用の拡大のために必要な政策を推進するとともに、脱原発を実現するに当たって生じ得る原子力発電所を設 置している電気事業者等(以下「原子力電気事業者等」という。)の損失に適切に対処する責務を有する。
2 国は、前条の基本理念にのっとり、脱原発を実現するに当たって原子力発電所が立地している地域及びその周辺地域における雇用状況の悪化等の問題が生じないよう、エネルギー産業における雇用機会の拡大のための措置を含め、十分な雇用対策を講ずる責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、第三条の基本理念にのっとり、国の施策を当該地域において実施するために必要な施策を推進する責務を有する。
第五条 地方公共団体は、第三条の基本理念にのっとり、国の施策を当該地域において実施するために必要な施策を推進する責務を有する。
(原子力電気事業者等の責務)
第六条 原子力電気事業者等は、第三条の基本理念にのっとり、第八条第一項に規定する脱原発基本計画に基づいて、脱原発を推進する責務を有する。
第六条 原子力電気事業者等は、第三条の基本理念にのっとり、第八条第一項に規定する脱原発基本計画に基づいて、脱原発を推進する責務を有する。
(法制上の措置等)
第七条 国は、この法律の目的を達成するため、必要な関係法令の制定又は改廃を行わなければならない。
第七条 国は、この法律の目的を達成するため、必要な関係法令の制定又は改廃を行わなければならない。
2 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
(脱原発基本計画)
(脱原発基本計画)
第八条 政府は、脱原発を計画的に推進するため、脱原発のための施策に関する基本的な計画(以下「脱原発基本計画」という。)を定めなければならない。
2 脱原発基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 発電の用に供する原子炉の運転の廃止に関する事項
二 電気の安定供給を維持し、及び電気料金の高騰を防ぐために必要な措置(省エネルギーの推進及び化石燃料の適切な調達を含む。)に関する事項
三 再生可能エネルギー電気及び天然ガスを熱源として得られる電気の利用の拡大並びにエネルギー源の効率的な利用に関する事項
四 発電に係る事業と変電、送電及び配電に係る事業との分離等の実施に関する事項
五 発電、変電、送電又は配電の用に供する施設によって構成される電力系統の強化等の電気の供給に係る体制の改革に関する事項
六 発電の用に供する原子炉の運転の廃止を促進するための原子力電気事業者等への支援その他脱原発を実現するに当たって生じ得る原子力電気事業者等の損失への対処に関する事項
七 原子力発電所が立地している地域及びその周辺地域における雇用機会の創出及び地域経済の健全な発展に関する事項
八 使用済燃料の保存及び管理の進め方に関する事項
九 発電の用に供する原子炉の廃止に関連する放射性物質により汚染された廃棄物の処理、放射性物質による環境の汚染への対処、原子炉において燃料として使用される物質の防護等のための措置に関する事項
十 発電の用に供する原子炉の廃止及び前号に掲げる事項に係る原子力に関連する技術並びにその研究水準の向上並びにそのための人材の確保に関する事項
十一 その他脱原発の実現に関し必要な措置に関する事項
一 発電の用に供する原子炉の運転の廃止に関する事項
二 電気の安定供給を維持し、及び電気料金の高騰を防ぐために必要な措置(省エネルギーの推進及び化石燃料の適切な調達を含む。)に関する事項
三 再生可能エネルギー電気及び天然ガスを熱源として得られる電気の利用の拡大並びにエネルギー源の効率的な利用に関する事項
四 発電に係る事業と変電、送電及び配電に係る事業との分離等の実施に関する事項
五 発電、変電、送電又は配電の用に供する施設によって構成される電力系統の強化等の電気の供給に係る体制の改革に関する事項
六 発電の用に供する原子炉の運転の廃止を促進するための原子力電気事業者等への支援その他脱原発を実現するに当たって生じ得る原子力電気事業者等の損失への対処に関する事項
七 原子力発電所が立地している地域及びその周辺地域における雇用機会の創出及び地域経済の健全な発展に関する事項
八 使用済燃料の保存及び管理の進め方に関する事項
九 発電の用に供する原子炉の廃止に関連する放射性物質により汚染された廃棄物の処理、放射性物質による環境の汚染への対処、原子炉において燃料として使用される物質の防護等のための措置に関する事項
十 発電の用に供する原子炉の廃止及び前号に掲げる事項に係る原子力に関連する技術並びにその研究水準の向上並びにそのための人材の確保に関する事項
十一 その他脱原発の実現に関し必要な措置に関する事項
3 内閣総理大臣は、脱原発基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定により脱原発基本計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長(当該行政機関が合議制の機関である場合にあっては、当該行政機関)と協議するものとする。
5 原子力規制委員会は、前項の規定により内閣総理大臣に協議を求められたときは、必要な協力を行わなければならない。
6 内閣総理大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、脱原発基本計画を公表しなければならない。
7 第三項から前項までの規定は、脱原発基本計画の変更について準用する。
(年次報告)
第九条 政府は、毎年、国会に、脱原発基本計画の実施の状況に関する報告書を提出しなければならない。
第九条 政府は、毎年、国会に、脱原発基本計画の実施の状況に関する報告書を提出しなければならない。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
この法律は、公布の日から施行する。