2013年11月30日土曜日

207:特定秘密保護法は民主主義者を暗殺する。ドイツは暗殺の歴史をどのように官民で記憶しているのか。日本の国会議員のみなさんへ

 読者のみなさま、ドイツでは11月27日に新政権に向けた連立協定がようやく成立し、早速党首の記者会見がありました。本題に入る前に、長くなりますがこれに少し触れておきます。

 この日、内外の記者、おそらく数百人が押し寄せた会見で、世界中に報道されたのは、このメルケル、ガブリエル両党首のこのような笑顔の写真がほとんどですが、実際にはこの日の明け方まで17時間に渡る徹夜交渉で、恐ろしくタフなメルケル首相も、さすがに疲れ果てて実際には、ここでは気の毒なので、そんな写真は出しませんが、目の下に隈ができていました。
28.Nov.2013. ©T.Kajimura
 2時間近い会見では、大半が3党首とも深刻な疲れた表情で、交渉がどれだけ大変であったか、またどれだけ先行きが大変かもが、よく顔に現れていました。
28.Nov.2013. ©T.Kajimura

来月半ばには、この大連立協定に基づいて、第三次メルケル政権が正式に発足される予定です。ただし、社会民主党は郵送による党員投票で承認が必要としていますので
、その結果が発表される12月15日までは、連立が成立するかはまだ未定です。
2005年の大連立交渉もやはり総選挙から二ヶ月かかりましたが、今回は社会民主党の党内で大連立に反対の声が強く、ガブリエル党首が交渉成立の後に475000人の党員投票での承認を求めることを条件にしたため、現在全国の党支部で協定内容を巡って激しい論争が行われています。

 もし党員投票で否決された場合は、メルケル首相は年明けから、緑の党と連立交渉に入るか、あるいは再選挙に踏み込まざるを得なくなる可能性もあるわけです。
 ご覧のように、この日メルケル首相は、黒の上に緑の上着で、黒のネックレスで記者会見に現れましたが、夕方のテレビインタヴューでも「緑は希望の色ですから」と黒緑連立を臭わす発言をしていました。

 先の総選挙で大勝したメルケル氏にも、どうやら「過ぎたるは及ばざるがごとし」の政局になるのではないかとの印象がわたしの現在の見方です。

連立協定書。28.Nov.2013. ©T.Kajimura
本来は、記者会見を前に記者に配布された185ページもある連立協定書の内容、特に再生エネルギー政策についての見通しなども、簡単にでも報告したいのですが、日本で、編集者の皆さんが首を長くして待っていますので、政権の正式発足を待ってしかるべきところに正式に詳しい報告を執筆する予定です。

さて、本題です。
  日本ではここにきてついに、読売と産経を除くメディアもついに、圧倒的に特定秘密保護法案に反対する立場を明らかにして連日報道し、市民も立ち上がりつつあります。
それはそうでしょう。フクシマ事故で権力の秘密を許せば、命と財産が永久に失われてしまい取り返しのつかない被害に遭うことを、体験しつつあるのですから当然です。
 
 知る権利は民主主義社会の酸素のようなものですから、それを奪われては社会は窒息死します。そのことに気づいた市民が、ようやく超党派で自己防衛に立ち上がりつつあります。 12月6日にはこのような大集会が行われます。詳しくは→Stop!「秘密保護法」をご覧ください。
  
 この呼びかけにはこうあります;
 
法律ができたらジャーナリスト市民運動はもとより国会議員も処罰対象と なり裁判も秘密まま行われます官僚は情報をいくらでも闇に葬ることができます情報にかかわる人は周辺も含めて監視され続けます国は国会も 司法も手が出せない官僚独裁監視国家になってしまです

 全くそのとおりです。戦前戦中の監視闇社会の到来は目の前です。
まず標的とされるのは、報道関係者と市民運動でしょう。
 
 例えば、昨日のこの共同通信の報道→陸自、独断で海外情報活動。年月をかけた非常に優れた、日本の秘密のなかの秘密を指摘したすばらしい記事です。
これを暴かれた闇の権力者たちは怒り狂っていることは間違いありません。
来月にもこの法律が成立すれば、このような報道は不可能になるだけでなく、書いた論説委員の石井暁記者と情報提供者はさっそく、間違いなく捜査対象となり、刑務所にぶち込まれるでしょう。
これについては、琉球新報の29日社説→陸自機密情報部隊 憲法否定の暴走許されぬをご覧く下さい。
  まさに28日のデモでのこの写真のように「戦前かよっ」ですね。
田中龍作ジャーナルより借用します。感謝します(筆者)。
前回で、この悪法が市民の基本権を否定するナチ時代の予防拘束法と本質的に同じであることを指摘しましたが、今回は、80年後の今日、ドイツではその体験がどのように見られているかを、以下写真を主にした現状報告で示しましょう。ある国会議員の運命も紹介します。
  これは本年11月9日のブランデンブルグ門の写真です。この日付はドイツ史では宿命的なものです。ベルリンの壁が突然崩壊したのが、1989年のこの日の夜のことです。
また、1938年のこの日は、いわゆる→「帝国水晶の夜」と呼ばれる、ポグロムが本格化し、シナゴーグの焼き討ちとユダヤ人に対するむき出しの暴力行使が全国規模で起こされました。

 ナチス政権掌握80周年の今年は、ベルリンでは年間を通じて官民を挙げて多くの催しものが行われていることはすでに→ここでも報告したとおりですので是非お読み下さい。
そこで、今年はその企画のひとつである「破壊された多様性」の締めくくりのイベントがブランデンブルク門を舞台にして、記念日の翌日の10日の日曜日に行われました。その準備の写真です。バツ印はナチスの歴史を否定するこの企画のロゴです。
この日、暗くなる頃は冷え込んで気温は零度近くなりましたが、パリ広場側では多勢の市民が詰めかけ、ユダヤ人だけでなくナチスによって迫害され、ドイツが失った人々の写真が門をスクリーンとして次々と映し出されました。
そして、ベルリンの各学校の歴史と社会科の授業ではこれをテーマとした生徒たちによるビデオ作品が数多く制作されましたが、そのなかで優秀な作品6点が上映され、それを創った生徒たちもベルリンの教育長官から紹介されました。みんな中学生の年齢で、移民の子どもたちが多いのがこの写真でも判ります。
紹介される生徒たち。右が教育長官アンドレ・シュミット氏 ©T.Kajimura
 その様子を見ながら嬉しそうにしているのは、この日招待された迫害を生き延びたお年寄りふたりです。右は日本でも「黄色い星を背負って」などの著作で知られているインゲ・ドイッチュクローンさんです。この日、子どもたちにも「破壊された多様性」が記憶として受け継がれていくことを確認する生存者の笑顔です。
Margot Frieländer,(l.), Inge Deutschkron 10,Nov.2013,Berlin ©T.Kajimura

このような、負の記憶の継承が、敗戦40周年の1985年の市民運動から始まったことについては、これまでもわたしは繰り返し多くのところで書いてきました。
これについて、シュミット長官はこの日の挨拶で、「30年近く前に市民運動が始められたころには、政治は聞く耳を持たなかった。ここまで来ることができたのは市民運動のおかげであり、まさに彼らの1世代をかけたプロジェクトの成果です」と述べています。

 そして、日本の国会が戦前戦中に逆戻りする悪法を成立させようとしているのと対称的に、ドイツの連邦議会はこのような、負の歴史の記憶とどのように向かい合っているのかを象徴する記念碑二つを、先に「ナチスから改憲の手口を学べ」と「あほう太郎」が述べた際に紹介しておきました。そのひとつ議事堂地下の芸術作品をわたしが撮影した写真で再び紹介しておきます。これらについては詳しくは→こちらをお読み下さい
以下は8月のこの報告の続きとしてお読み下さい。
©T.Kajimura
この議事堂地下の芸術作品はこのように裸電球に照らされて、非常に大きなものです。
そのひとつ、ヒトラーの氏名は「ADOLF HITLER NSDAP 1933」としてあります。
©T.Kajimura
もうひとつの議事堂の外には、当時ヒトラーと議席を同じくしており、ナチスによって殺された国会議員98人の記念碑のことも写真で上記に紹介しておきました。
その一人について以下紹介しましょう。前回書きましたように、このような悪法がまかり通ることになれば、日本の国会議員も暗殺を逃れて亡命せざるを得なくなる日が現実的になりそうだからです。

 わたしがこの人物について知ったのは、つい最近のことです。すなわち11月9日のポグロムの記念日です。この日ベルリンでは、市民運動により12カ所の地域で「つまずきの石を訪ねて磨き、犠牲者を追悼する」行事が行われ、わたしも居住地のそれに参加したのです。
 今では、ドイツの過去の克服の教育に関心ある人にはよく知られている「つまずきの石」について、敗戦60周年の2005年にわたしは→季刊『前夜』5号への寄稿でふれていますので、その部分だけを引用しましょう。これは今では世界的に有名な虐殺されたヨーロッパのユダヤ人追悼記念碑の完成の前史を報告したものです。その一部に知られていない「つまずきの石」について以下のように書いています。長くなりすぎるので掲載分の写真は省きます。


「つまずきドイツと日本歴史認識落差」より一部引用


・・・・・・(前略)
 さて、グンター・デムニッヒという一九四七年、ベルリン生まれの芸術家がいる。現在住んでいるケルン市で、そこからブーヘンヴァルト強制収容所に移送された一〇〇〇人のシンティ・ロマの人々を追悼する行事が行われ始めたのは九〇年五月だ。この年は、彼は犠牲者の居住地から移送のため集められた広場まで、仲間たちと路上に絵の具で線を引く芸術アクションを行っている。九三年の行事では広場に消えることの無い真鍮の板を埋め込んだ。ところが、それを見たひとりの女性が「私たちの街にチゴイナー(差別用語である)が住んでいたことなどあるわけない」と発言した。この体験が契機となり、「つまずきの石」が構想された。


 表面を真鍮の板で覆った一五センチ四方の敷石に、ナチ時代の忘れられた犠牲者の名前を刻んで、彼の元の住居の入り口の前の歩道に埋め込む芸術である。九五年にケルン市の二カ所で試作品の埋め込みが行われた。九七年には、ホモセクシャル、シンティ・ロマ、ナチス被迫害者などの団体とともに市役所に六〇〇個の「つまずきの石」埋め込みの許可申請がなされた。以来、この芸術活動は次第に全国に広がっていくのだが、ベルリンで二〇〇〇年に埋められたふたつの石が、この芸術がどのような意味を持つかをよく現している。


 南アフリカの喜望峰で一九五九年に生まれたスティーブン・ロビンスは、一九三〇年代にベルリンから南アフリカに家族の中でただ一人亡命に成功したユダヤ人の息子だ。
父親が彼に家族のアイディンティティー証明するものとして残したのは、九〇年に亡くなる前に人生を語った強いドイツ語なまりの英語の証言の録音テープと、親族が写っている二枚の写真だけであった。父親の証言は当時の南アフリカのアパルトヘイトとその後の和解の過程で、彼に手応えのあるアイディンティティーを掴みたい欲求をうながし続けた。

 アメリカのコロンビア大学で学位を得た後、生まれ故郷の大学で「ユダヤ人のアイディンティティー」を研究した。長い追求の旅の末に、ある厳冬の夜、彼はクロイツベルク区の、いまはトルコ人が多く住んでいる建物を突き止めることに成功した。父親の弟夫婦が移送される前に住んでいた住居だ。彼は二〇〇一年に、この叔父夫婦のふたつのつまづきの石を芸術家に注文(代金ひとつ九五ユーロ)して埋め込んでいる。これによって彼は初めて「自由なユダヤ人としてのアイディンティティー」を掴んだという。


 また、この地区のギムナジュウムでは、歴史の授業で地域の忘れられた犠牲者の掘り起こしが行われている。生徒たちは手分けして役所の古い住民台帳などを調査し、彼らの運命をたどるのだ。そして寄付を集めて注文する。この人たちの石が埋め込まれるときには、生徒は調査した人物についての短い報告をする。それは小さな儀式だ。こうしてドイツ人、トルコ人の若者たちが,見ず知らずの犠牲者たちに忘れられた名前と運命を返し続けている。


 先月、デムニッヒ氏がベルリンに埋めにやって来たので、その現場のひとつで話しを聴いた。「一番に嬉しいのは、生徒たちがあちこちで取り組んでくれていることです。これまで、全国で六〇〇〇個の石を埋めました。盗まれたり破壊されたのは、わずか三〇個ほどだけです。ウイーン、アムステルダム、遠くはオデッサまで広がってきています」と明るく元気の良い返事が返ってくる。「ユダヤ人だけでも六〇〇万個だから大変だ」ともいう。


 完成したホロコースト追悼記念碑は、毎日訪れる何千人もの者を呑み込んでしまう巨大な石柱の森だ。子供たちにとっては、格好の遊び場となっている。石柱を飛び跳ね、かくれんぼうが始まる。幼児は一瞬のうちに迷子になり母親たちがパニックに陥る。これがドイツ人が六〇年間悩み続けた贖罪碑の現実の微笑ましい情景の一面だ。苦悩とはかけ離れた光景だ。


 反対に、ほとんどの人は、この小さなつまずきの石を、それとは気付かず通り過ぎてしまう。だが、これがヨーロッパ全体に広がることになれば、差別やテロの無い社会となっているに違いないと予測できる。

・・・・・・・(後略)
これが、8年前の「つまずきの石」に関しての報告です。
それからこの運動はドイツ全国だけでなく、東西ヨーロッパ諸国にも広がり、いまでは何と38000の石が埋められており、ベルリンではつい最近、5000個目が埋められたと、この日の説明で知りました。
 デムニッヒ氏はこの年に連邦大統領から連邦功労賞を叙勲されており、それから爆発的に注文が増えたようです。
 さてこの日は、地域の市民40人ほどが指定された地下鉄の駅前に集まりました。老若男女、職業も何もかも別の平均的なベルリン市民で、教師もふたりいたようです。(故意に学校には呼びかけなかったようです。クラスで来られたら収拾がつかなくなるからです)だからこの日も歴史の教師が生徒なしでふたり参加していました。

 3時間ほどの間に、リタさんとスザンネさんという若い女性のふたりが、案内人として資料を手に、それぞれの石に刻まれている犠牲者の経歴を丁寧に説明してくれました。
それを聴きながら、参加者は布を手に真鍮磨きで石を磨き上げ、小さなろうそくを手向けました。その写真です。
石を磨く年配の女性たち。
©T.Kajimura
 ろうそくを手向ける若者。
©T.Kajimura
  資料を手にしているのが案内人のふたりです。どちらもボランティアで資料を捜し研究しているとのことです。
つまずきの石を磨き、ろうそくを手向ける市民 ©T.Kajimura
この日、わたしたちが巡ったのは数えませんでしたが、10カ所ほどの数10個の石でしょう。経歴が詳しく判っている人もあれば、名前と生年月日と死亡場所とその日付だけしか判っていない人もあります。それでもこの場所に居住したことのある犠牲者に名前を返したことになります。現在の住民の記憶に停まるからです。

 さて、その中のひとりにユリウス・モーゼス博士という名前がありました。
石に刻んであるのは「ここにユリウス・モーゼス博士が居住していた。1868年生まれ。1942年2月3日テレジーエンシュタットへ移送。1942年9月24日死亡」 の文字だけです。テレジーエンシュタットというのはチェコのテレジンというところにあった強制収容所のことです。
 リタさんたちの経歴の説明を聴いて、この人物がワイマール時代からの高名な医師であり、社会民主党の帝国国会議員であったことを知りました。女性の権利のために妊娠中絶も許されるべきとの、当時としては最も先進的な社会医療を主張したそうです。
Stolperstein Dr.Julius Moses 9.Nov.2913 ©T.Kajimura

 この人物の経歴は従って、詳しく研究もされているため下記のベルリンのつまずきの石のホームページにも→下の写真入りで記載されています

 リタさんたちもこれを参考に紹介してくれたのですが、これによると国会議員として徹底的にナチスに対抗したモーゼス氏は、33年のナチス権力掌握後の6月から12月までさっそく予防拘禁されており、35年のニュールンベルク人種法により、ユダヤ人ではない夫人と別れさされ、ユダヤ人だけを集めた近くの住居に移住を強制され、38年には医師としての開業も禁止され、上記のように42年強制収容所へ移送されています。生き延びたある同囚の証言によれば、そこで高齢の彼は最後まで未来に対する希望を失うことなく、餓死したとのことです。この信念のある高名な国会議員は、このようにナチスによってじわじわと殺されたのです。まさに悪法による暗殺です。

Dr.Julius Moses

 この報告では、前回に書きましたように日本の国会が特別秘密保護法案を決議し、立法府として自滅しつつあるので、日本の国会議員の皆さんに読んでいただきたく、この人物を採り上げて紹介しました。このような悪法に信念を持って抵抗する日本の国会議員も、多かれ少なかれ、モーゼス博士のような迫害に直面することは間違いないからです。

つまずきの石について詳しく知りたい方は以下を参考にしてください。 特にベルリンのHPは充実しており、グーグルの地図にすべてのつまずきの石の在処と、それぞれの経歴が判ります。

つまずきの石HP(英文あり)。 
デムニッヒ氏の個人HP。 
ベルリンのつまずきの石HP。

2013年11月26日火曜日

206:立法府が自滅した日。特定秘密保護法案衆議院通過。もはや民主主義の保護は議会外野党の市民の力だけ。日本が直面する80年前のドイツの悪夢。

 さきほどインターネットの国会中継でベルリンから本日の衆議院本会議を傍聴しました。特定秘密保護法案が圧倒的多数の賛成で決議されました。続いて参議院でも同様の経過で本議案は成立施行されることはまず間違いないでしょう。
 中継カメラが振られているので、自民、公明党らの議員が賛成起立する場面はちゃんと撮影できませんでしたが、これがその瞬間です。
これは、最高の国権機関である立法府が、憲法に違反する法案を通過させた歴史的瞬間です。
 審議を見て、つくづく思い起こされるのは、いまから80年前の1933年2月28日のワイマール憲法下で施行された→「国民と国家保護大統領緊急令」(いわゆる「帝国議事堂火災規則」)のことです。
 これは、ヒトラーがヒンデンブルク大統領に指名され、首相になった直後に起こった国会議事堂放火事件を口実に、大統領緊急令として施行された特別法です。日本ではあまり知られていませんが、これこそが後の全権委任法の基礎となり、当時の世界で最も民主的であったワイマール憲法で保障されていた国民の基本権が停止されることが可能にされたものです。

 この規則により、人格の自由権を始めに、報道の自由を含む言論の自由、結社、集会の自由、通信の秘密、住居の不可侵権、私有財産権などが制限されることにより、国権の捜査権などが強化されました。特定秘密保護法案と本質が同じです。

同規則によるワイマール憲法の基本権条項の制限は→以下のとおりでした:

  • Artikel 114 Verbot von Beschränkungen der persönlichen Freiheit
  • Artikel 115 Unverletzlichkeit der Wohnung
  • Artikel 117 Brief-, Post-, Telegraphen- und Fernsprechgeheimnis
  • Artikel 118 Meinungsfreiheit
  • Artikel 123 Versammlungsfreiheit
  • Artikel 124 Vereinigungsfreiheit
  • Artikel 153 Recht auf Eigentum

 恐ろしいのは、これにより、嫌疑だけで予防拘束が可能となり、予防拘束状だけで市民は強制収容所などに「合法的に」拘束されたのです。
 これこそが麻生大臣の発言で日本でも最近知られることになった、ヒトラー独裁の根拠となる同年3月24日の→全権委任法の基礎となり、緊急令にもかかわらず敗戦までこの緊急令は停止されませんでした。

 なぜこれを思い出したかといえば、本日の国会審議で、賛成演説をした自民党の岩屋毅議員が、その冒頭で法案の必要性として、中国政府による防空識別圏の設定を挙げるのを聴いて、共産主義者による国会放火容疑(今日まで実行犯は不明)を理由にしたこの法律と発想が同じであると思ったからです。他者からの危機感を煽り、「国民の安全のためには必要である」と理由付けする点で同じです。

 このような法律が施行されれば、どうなるかはまた後に詳しく書きたいとおもいますが、いずれにせよ、本日、日本国憲法で保障された国民の基本権を行政により大幅に制限し、憲法を窒息死させる第一歩としての悪法のを通過させたことは、立法府としては自殺行為であることは言わずもがなのことです。

 これにより、憲法の基本権を保護するのは、議会外野党の市民の力だけとなりました。このような国会を選挙で選んだのは、他ならぬ日本の有権者ですから責任は重大です。まさに有権者の自己責任です。
できる限り、集会や街頭、職場で発言し、連帯してこの悪法を廃案に持ち込まない限り、日本が再び、民主主義の窒息で取り返しのつかない間違いをしでかすことは、これも目に見えることです。

 憂うべき事態ですが、それでも国会演説で中身のある反対演説をした民主、共産、生活の3名の議員諸氏の名誉のために、以下その写真だけを挙げておきます。

長島昭久議員 民主党
赤嶺政賢議員 共産党
玉城デニー議員 生活の党

この法律が施行されれば、近いうちに日本で起こるであろう事態を予言する歴史資料を挙げておきましょう。
これは、1935年9月に、ドイツのある街のナチスの役所から出された予防拘束令状です。
上記の33年の国民と国家保護規則に則った、当時33歳のカトリックの男性労働者に対する予防拘束命令です。

ここでは、理由として「ヨハネス・ラングマンテルは、マルキストであり、今日に至るまでその信条は全く変わっていない。それをことあるごとに表現している。彼とその妻は、ユダヤ人の店だけで故意に買い物をし、それにより国家社会主義の意思に対抗している。このような態度は公共の安全と秩序を直接脅かすものであることからして、予防拘束すべきである」とあります。
  この人物は、マルキストであることと、ユダヤ人の店で買い物をしたことを理由に強制収容所に拘束されたのです。

 特定秘密保護法案では、例えば反原発を信条とする市民が、機密保護の対象である原発施設の情報を探したり、それを公言しただけで処罰の対象とされます。
 現在の日本は、このような80面前のドイツの悪夢に直面しているのです。
敗戦までの日本の治安維持法が息を吹き返しているようです。間もなくその息吹が感じられるでしょう。それは時間の問題です。

 まもなくベルリンには日本からの亡命者が増えるでしょう。理由はまた書きます。

 追加の注釈(11月28日):上記のドイツ語 Schutzhaftは、通常の辞書では「保護拘束」などと訳されています。これは法律用語としての本来の意味では間違いではありません。ところがナチス時代の上記の法律は、本来の「危険から個人を保護する」のとは正反対に「国家の安全を脅かす虞れのあると判断した個人を拘束する」ために使われました。そのため、ナチ時代のこの用語は予防拘束とするのが内実からして正しいのです。

もうひとつ、本日の日本からの報道です。歴史を知るものは同じ見解を持ちます。
→ナチスドイツ全権委任法に当たる 

東京都内で記者会見した栗原彬くりはらあきら立教大名誉教授政治社会学全て情報を統制したナチスドイツ全権委任法に当たると指摘 田敦すぎたあつし法政大教授政治学法案は非常に粗雑で秘密指定はノーチェックに等しい行政府に権力を集中させ発言権を失わせる 意図があるではと述べた



2013年11月18日月曜日

205:ドイツのローストック大学がスノーデン氏に市民の不服従実践で哲学名誉博士号を審議中

 先週の金曜日に、北ドイツのオストゼーツァイトングというローカル紙が、ローストック大学がスノーデン氏に名誉博士号を授与することを検討していると短く報道しました。
それ以来、注目していたのですが、土曜日になって公共第1放送の→北ドイツ放送NDRが報道、またついに日曜日にはベルリンの→ベルリーナーツァイトング紙が電子版で内情を報道しましたので報告します。

スノーデン氏と大学のコラージュ
 この写真は、シュヴェリン市の北ドイツのローカル紙がローストック大学の本部と紋章をスノーデン氏の写真とともにコラージュしたものです。

 多くの報道によれば、北ドイツのハンザ同盟の街にある古いローストック大学の哲学部教授会が学部長の提案で、エドワード・スノーデン氏に名誉博士号を授与することを、ふたりの教授の態度未定(白紙)だけで決議し、大学の名誉博士審議会に木曜日に上程したとのことです。

 上記ベルリンの新聞のインタヴューで、教育哲学専門のヴェンジールスキー学部長は、提案した理由として「スノーデン氏の行った市民の不服従の実践は、社会ならびに精神科学の中心的テーマです。それに加えて私たちは、成人した人間(mündiger Menschen)が到達できることについて、教えかつ学ばなければなりません。私たちは真実を明らかにするために、社会的存在を投げ捨てモスクワに滞在しているスノーデン氏を忘れることがあってはならないのです」と述べています。
  
 大学の審議会での議論の結論が出るまでには当分かかるとのことです。目下、地元ではかなりの議論が巻上っているようですし、実現するか否かはまだ判りません。
ローストック大学でガウク現ドイツ大統領

ところで、同大学の神学部は、1999年にローストック大学で神学を学び、同地で長く牧師を勤めた現ドイツ大統領のガウク氏に神学名誉博士号を授与しています。
 この写真は、大統領となったガウク氏が大学で名誉博士号に感謝の辞を述べている時のものです。
ですから、もしスノーデン氏への名誉博士号の授与が正式決定すれば、これは大きな出来事となります。


 そもそも、ドイツはもちろんヨーロッパでは、スノーデン氏はアメリカやイギリス政府がいう犯罪者ではなく英雄であるととする世論が圧倒的です。
これは、公共第1テレビが毎月行う11月7日に行われた世論調査の結果です。
 スノーデン氏は英雄であるが60%、犯罪者であるが14%、どちらでもあるが5%、
どちらでもないが17%となっています。

 このような世論を背景に、スノーデン氏が名誉博士となれば、反響もまた大きなものとなるでしょう。

 

204:シュピーゲル誌「イギリス女王陛下の諜報機関が世界中のホテルで外交官を監視盗聴」スノーデン資料が暴露

 明日発売のシュピーゲル誌は、英国諜報機関→GCHQ/政府通信本部 "Royal Concierge"/「王室の守衛/ドアマン」というコードネームで、世界中の高級ホテルで世界中の外交官の動きを監視、盗聴していると報じています。スノーデン氏の資料から明らかになったものです。
 
GCHQ極秘資料の部分。Der Spiegel Nr.47.2013

 同誌に掲載された5つの目用のトップシークレットの資料によれば、同機関は、2010年からこれまで3年間、世界中の約350の高級ホテルの各国の政府関係の予約メールをリアルタイムで海底ケーブルなどからもれなく収集し分類、興味深い宿泊者には客室の電話。ファックス、インターネットを監視盗聴し、成果が大きいとされているとのことです。
Der Spiegel 電子版より


特に注意深く重要な外交官には
"Humann Intelligence"つまり人間のスパイを派遣し、古典的にホテルのバーなどで監視するとあります。
それだけではなく、必要あれば、宿泊客に「技術的アタック」を加える準備もされているとのことです。

 この3年間、成果は大きいとされており、これからは プログラムの発展で、外交団などの予約を妨害し、故意に他のホテルに予約させる謀略もこれからの可能性としているとのことです。


 笑うべきことには、この秘密プロジェクトには、ロゴまであり、最初の写真の右下にあるのがそれです。王冠をかぶったペンギンの王様の図案です。
いやはや、女王閣下のスパイの非ジェントルマンぶりにはあきれますね。これでまた英国の情報機関の信用ががた落ちになることは目に見えています。

この報道を受けて、ドイツ公共第1放送のロンドン特派員が、ラジオで早速→ルポを放送しましたが、女王陛下のスパイ機関は「この件に関しては、否定も肯定もしない」すなわちノーコメントが問い合わせの返事であったとのことです。

女王陛下のスパイ本部GCHQの入り口 ARDより

お知らせ:ベルリンで「エネルギー転換を救え!」大デモ。11月30日13時中央駅前広場に集合!

 ドイツでは総選挙後、間もなく2月も経つのに大連立交渉が果てしなく続いています。
キリスト教民主同盟と社会民主党との連立交渉では、石炭発電が保護され、再生エネルギー転換政策にブレーキがかかりそうな気配です。
 それにしびれを切らした反原発運動が→「エネルギー転換を救え」大デモを呼びかけています。

スローガンはこのポスターのように:フラッキング、石油、原子力の代わりに、太陽と風力で。エネルギー転換を救え!です。

11月30日(土曜日)13時から16時30分まで。
ベルリン中央駅前のワシントン広場に集合。
集会の後、近くの首相府を包囲するデモの後に、同所に引き返して集会をします。

これから成立する新政権に対して要求をしっかり訴えておくことが目的です。
 またベルリンでは反原発市民運動の、久しぶりの大きなデモになりそうなので、寒さを吹っ飛ばして、皆さん参加しましょう。

以下呼びかけ引用です:
 ============================================

Am 30. November wird die überall spürbare Unzufriedenheit mit dem Tempo und der (Nicht-)Gestaltung der Energiewende auf der Straße in Berlin zu sehen sein. Wir wollen die zukünftige Bundesregierung erinnern für wen sie die Energiewende machen und was wir uns für eine zukünftige Energieversorgung wünschen: sauberen, sicheren, bezahlbaren Strom aus Bürgerhand!

Am 30. November um 13 Uhr am Washington-Platz in Berlin können alle zusammenkommen,

  • denen der Atomausstieg viel zu langsam geht,
  • die nicht wollen, dass immer mehr Braunkohle verfeuert wird und neue Kohle-Kraftwerke gebaut werden,
  • die sich vor Ort gegen Fracking-Pläne einsetzen,
  • die es begrüßen, dass Bürgerinnen und Bürger die Energiewende vorantreiben, indem sie selbst zu Stromerzeugern werden und
  • die den Ausbau der Erneuerbaren nicht bremsen, sondern intelligent forcieren wollen.

Ablauf der Demonstration:

13.00 Uhr: Auftaktkundgebung auf dem Washingtonplatz vor dem Berliner Hauptbahnhof

14.00 Uhr: Demonstrationszug durch das Regierungsviertel mit lautstarker Umzingelung des Kanzleramts

15.30 Uhr: Abschlusskundgebung und Konzert, Washingtonplatz

16.30 Uhr: Ende der Veranstaltung

2013年11月17日日曜日

203:ドイツを基地とした「アメリカの秘密戦争」(2)ドイツ政府も米スパイ産業に重要なハイテク業務を委託。日本を米スパイ産業の輸出天国にしてはならない

 南ドイツ新聞の連載の「アメリカの秘密戦争」第2弾/11月16日は、「どのようにCIAなどが、民間企業に厄介な業務委託をしているか=ドイツ国内でも」との見出しです。

Süddeutsche Zeitung 16/17 Nov.2013

 リードは「彼らは、拷問し、誘拐し、スパイをする=アメリカの諜報機関は、すでに長い間、不愉快な仕事を民間諸企業に請け負わせている。そのかなりの企業はドイツ内でも活躍している。そして彼らはアメリカのためだけではなく、ドイツ政府の業務を請け負っている」というものです。
南ドイツ新聞特集のロゴ
同紙は、昨日から始まった連載に左の写真のようなロゴを使用していますが、これはドイツの新聞では珍しいことです。無人機とその照準標的の図案に、「秘密戦争/ドイツ内のアメリカの陰の軍隊」との文字をあしらったロゴです。
 米軍は、バイエルン州の基地に少なくとも、57機の無人機を駐屯させており、その指令とオペレーターの本部は、シュットットガルトとラムシュタインの米軍基地にあるとのことです。
これについてはドイツ公共第一テレビのニュースで筆者のジョーン・ゲッツ氏がインタヴューで→14日に指摘しています。
アフリカや中東方面への作戦がおこなわれていることが明らかであるとし、ソマリヤやイエメンへの無人機攻撃で、何の罪のない妊婦や民間人が多勢犠牲になっていることは、これまでも明らかになっているとおりです。
今年の6月にドイツを訪問したオバマ大統領は「ドイツから無人機の作戦は行われていない」と否定していますが、これは嘘であることは間違いないと報道されています。

 さて、今回の特集では、図表でCIAやNSA以下のアメリカの7つの諜報機関の年間予算を示し、なんとその70%もが軍事産業と民間企業への委託業務のため支出されていることが示されています。なんとドイツでの支出は、アフガニスタンでよりも多いとのことです。
 
 それら民間情報技術/IT会社は、ドイツ国内の米軍基地の近くに支店があり、そのひとつヴィースバーデンを本拠とするCSC社/Computer Sciences Corporation は、キリスト教民主同盟の国会議員も取締役とする現地法人を設立、顧客としてはダイムラー、アリアンツなど民間大企業だけでなく、政府内務省の暗号ソフトの開発、法務省の裁判所の公文書電子化など非常に多くのを業務を請け負っているとのされています。
 
 内務省は、これに対し「秘密維持の契約があるので問題はない」と取材に対して回答していますが、さきほどのラジオでのニュースでは、元NSAのアメリカ人職員が「そんな言い逃れは、笑うべきことだ。秘密保持が実際に行われているかどうかコントロールはされていない」とアメリカ英語で答えていました。
 
 つまり、ドイツ政府は国民の税金を使って、アメリカ情報機関の民間子会社に秘密維持の中心的技術の業務依頼を行っていることになります。グルというべきか、滑稽というべきか。外国のスパイ技術産業に国家機密維持の中枢を任せているに等しいのが実態であるようです。

政府報道官ザイベルト氏 15.Nov.2013
イラク戦争以来ブッシュ政権は、特に国際法違反の汚い軍事行動を、ブラックウオーターなどの民間会社の民兵に委託していたことは、周知の事実です。
 ここにきてアメリカのスパイ業務も、大規模な民営化が行われ、特にドイツがその重要な取引相手であることの実態の全体的輪郭が明らかにされつつあるようです。

 昨日、南ドイツ新聞の暴露の第1弾が出された日の、定例の政府記者会見で、ザイベルト報道官には、「読みましたか」、「ドイツからアメリカはテロ容疑者を誘拐したり、拷問した事実を把握しているか」などの、質問が相次ぎました。前者には「Ja 」後者には「Nein」と答えました。
 彼も元は公共テレビのジャーナリストですから、これらの暴露に関しては「この調査報道の枠内で、新たなきっかけや、新たな事実、または新たな見解が登場すれば、ドイツ政府は真剣に受け止めます」と述べました。写真のように回答に考え込む姿も、これから増えることでしょう。
 なを同日、アメリカ大使館はドイツからの誘拐や拷問の疑いの一連の報道に対し「とんでもない主張だ」と否定しています。
 
 次の月曜日には、南ドイツ新聞は第3弾として「なぜフランクフルト空港でアメリカの機関が、だれが搭乗を許されるか決定できるのか」についての暴露があると予告されています。

なお、南ドイツ新聞はこの連載の一部と関連を電子版の→英語版でも報道していますのでご覧ください。

 ところで、これまでの報道で、わたしがあらためて考えさせられるのは、以下のことです。

 1)集団自衛体制の危険性

 ひとつは、アメリカとの軍事同盟の怖さです。冷戦後、確かにNATO軍のドイツ国内の駐留軍の数は大幅に削減されましたが、アメリカは「テロへの戦争」で、冷戦時の既得権の枠内で、内実を変えているだけで現在もドイツが、世界戦略の最前線であることは変わっていないことが明らかになりました。沖縄のような冷戦時そのままの大規模な基地は無くなりましたが、最前線であることには代わりはないことが明らかになりました。特にドイツは分断国家として冷戦時、NATO集団安保体制下で、自立性を奪われていましたが、そのくびきが今でも残ったままです。集団自衛権の危険性がここにも明らかです。

 2)悪の民営化による肥大化
  もうひとつは、情報機関の下請けとしてインターネット技術を軸とするハイテクスパイ産業が、アメリカの新たな陰の輸出商品として制御できないほど肥大化していることです。
これは、悪の民営化の結果ともいえます。権力が汚れ仕事を下請けに出すシステムの現代版といえましょう。 スト破りにヤクザを動員したり、フクシマの事故処理の末端にヤクザが入り込む構造の現代版です。放置すれば肥大化は亢進し、無法状態となり罪のない犠牲者を餌食にしてやがて自滅します。日本は現政権が進んで餌食になろうとしています。ドイツは、メディアの健全な免疫抵抗力でそれから逃れようとしています。

この肥大化は、ジンギスカーンが、駅伝の優れたロギスティックで帝国を拡張し、その後蒙古帝国が一挙に元の木阿弥になった歴史にそっくりです。アメリカの西部開拓史もよく似ていますね。

 3) 民主主義の窒息
日経新聞も→今日の社説で特別秘密保護法案を廃案にせよと主張しましたが、防衛、外交、スパイ活動、テロの4分野が、特定秘密に指定されれば、今日のドイツでの報道の内容は全くできなくなります。日本がアメリカの情報機関の下請け企業の輸出天国になることは間違いないでしょう。民主主義を窒息させるネオコンのイデオロギー実践のたどり着く結果です。

 4)主権の放棄
 それによりこの法律の陰で、国家機密がアメリカのものとなり、事実上主権を売り渡してしまう事態も起こるのでないかと危惧されます。岸信介総理が1960年、日米安保改訂の際、CIAから現金を受け取っていたことは証明されています。その行く着く先が、特定秘密保護法案であるのでしょう。まさに主権放棄の売国法案です。

 以上ですが、今回のこのドイツメディアの調査報道は、以上のように範囲も広く奥も深く、日本にも直接間接に大きな影響があります。
明日うらしまの老爺心の蛇足ですが、特派員が少ない日本のメディアの支局では、とてもフォローが難しくなるのではないかと心配です。各社とも専門記者の何らかのかたちでの援助が必要ではないでしょうか。



2013年11月15日金曜日

202:ドイツを基地とした「アメリカの秘密戦争」北ドイツ放送と南ドイツ新聞が共同で暴露を予告。日本では犯罪となる報道。

 ドイツの公共第1放送ARDの一部である北ドイツ放送NDRと南ドイツ新聞が、1年半に渡る共同調査で、ドイツを基地とした「アメリカの秘密戦争」を、近日中に連載として暴露することを予告しました。
 公共テレビと民間紙の、珍しい共同取材ですが、これはメルケル首相の携帯電話の盗聴暴露より、はるかに深い衝撃を与えるものとなるのではないかと予想されます。
ドイツの基地から北アフリカに出撃する米軍ヘリコプター AFP 
本日11月15日、両メディアはこのテーマで共同のサイト→「アメリカの秘密戦争」を公表しました。
 
 それによると、アメリカ軍はドイツの多くのNSAの根拠地で、秘密作戦を計画し、無人機による北アフリカへのドイツの基地からの作戦など、いわゆる「テロへの戦争」を極秘に実行しており、テロ容疑者の誘拐や、ルーマニアでの秘密牢獄なども、ドイツの情報機関も情報供与などで関与して行っているとのことです。
ドイツ国内での情報機関のメッセ
エドワード・スノーデン氏が一次働いていた、アメリカの情報会社などは、ドイツ国内のホテルで情報関係のエキスパートをリクルートするメッセを行っているとのことです。
 アメリカの情報機関の元職員などがこの調査には、かなり協力していることが示唆されています。

 スノーデン氏の内部告発とモスクワへの亡命は、このチームの長期的な調査中に起こり、このチームのふたりのジャーナリストが、シュトローベル議員のモスクワでの→秘密会談に同行して報道したことも明らかになりました。なるほど、奥が深いですね。

 冷戦時代に、ドイツが対東欧の再前線基地であった後も、9・11で「テロへの戦争」というアメリカの新世界戦略のその多くが非合法な秘密作戦の前線基地として使用されている事実がかなり暴露されるようです。

 「ドイツ国民はこれらの事実を知らなければならない」と両メディアは主張しています。

 特定秘密保護法などが、成立すれば、日本では明らかに犯罪とされる報道となり、内部告発者はもちろん、ジャーナリストも禁固5年から10年の刑となります。

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一夜明けての追加です。
これが本日11月15日の南ドイツ新聞です。トップで予告し、政治面2ページの報道です。連載記事の第一弾です。これは「アメリカのドイツを基地とした国際法違反の秘密作戦は、痛みの限度を超えている。ドイツ政府は知りながら無視している」といった、いわば総論にあたる内容で、明日から具体的な事実報道を行うとと予告しています。詳しくは回を代えて続報します。
18日の月曜日には、新国会で盗聴問題を議題にした特別審議が行われますので、そこでメルケル首相が何を述べるかが、世界中の注目するところになるでしょう。




2013年11月13日水曜日

201:外国特派員教会が「秘密保護法案」に抗議声明。"Designated Secrets Bill"Protest Statement of The Foreign Correspondents’ Club of Japan

  11月11日、東京の日本外国特派員協会(会員2000名)が、現在衆議院で審議中の「特定秘密保護法案」の廃案、ないしは大幅修正を求めて抗議声明を出しました。
 以下→日本語→English英文をそのまま引用します。

Süddeutsche Zeitung 11.Nov.2013
  この法案の反民主性と危険性については、ドイツでもこの日、南ドイツ新聞が写真のように「秘密事項原子力発電/日本市民はもはや核施設の安全性について知ってはならない」との見出しで、原発に関する情報秘匿を例に挙げて、民主主義の基本を否定するものであることを解説しています。

 また、日本での権力の公文書の私物化と隠蔽の一例として、沖縄返還時の核付き返還の秘密協定文書が、政府の保管ではなく、安倍総理の大叔父である当時の佐藤栄作元総理の遺産の中から出てきたことを挙げています。
 その上で、このような酷い法案を安倍政権が実現しようとする裏にはアメリカの圧力があるのではないかとの見方を紹介しています。(クリックで拡大します)
このような見解はすでに10月29日に、ニューヨーク・タイムズが社説で指摘しています。これの翻訳はカナダの→乗松さんたちのサイトで読めます。

 これらは報道の数例でしかありませんが、特派員協会の抗議声明に見られるように、特派員たちの自らの職業に対する弾圧法であるとの強い危機感は、民主主義擁護を基本とする者にとっては全く正当なものです。したがって同法案が可決成立するようなことになれば、日本の国会の世界の民主主義を脅かす行為として、全世界から集中的に批判の的になることは明らかです。
 要するに、日本の国会議員は世界から彼らの民主主義認識の常識を問われているのです。情けないことに、そのことすら認識していない無能な国会議員が多数であるようです。
少なくとも、この法案成立と同時に、日本の報道の自由は、中国並みのランクに格付けされることだけは確実ですから、それくらいの自覚は持ってほしいものです。

 以下抗議声明の引用です。
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 日本外国特派員協会は現在日本の国会で審議中の「特定秘密保護法案」を深く憂慮してい
ます。
 特に、われわれが懸念しているのは、同法案の中にジャーナリストに対する起訴や禁固を
可能にする条文が含まれており、与党議員の一部が、それに順ずる発言を行っていること
です。
 開かれた社会における調査報道の真髄は、政府の活動に関する秘密を明らかにし、市民に
伝えることにあります。そのような報道行為は民主主義の基本である抑制と均衡のシステムに
不可欠なものであって、犯罪などではありません。
 本法案の条文によれば、報道の自由はもはや憲法で保障された権利ではなく、政府高官が
「充分な配慮を示すべき」対象に過ぎないものとなっています。
その上、「特定秘密保護法案」には公共政策に関する取材において「不適切な方法」を用い
てはならないといった、ジャーナリストに対する具体的な警告文まで含まれています。こ
れはメディアに対する直接的な威嚇であり、十分に拡大解釈の余地がある表現は、政府に
対し、ジャーナリストを意のままに逮捕する権限を与えることになります。
 日本外国特派員協会の会員には日本国籍を有する者と外国籍を有する者が含まれて
いますが、1945年に設立された由緒ある当協会は常に報道の自由と情報の自由な流通こそが、日
本と諸外国との間の友好関係や相互理解を維持、増進するための不可欠な手段と信じてま
いりました。
 そのような観点から、われわれは国会に対し、「特定秘密保護法案」を廃案とするか、もし
くは将来の日本の民主主義と報道活動に対する脅威とならないような内容への大幅な修正
を、強く求めます。
ルーシー・バーミンガム
日本外国特派員協会々長
平成25年11月11日


The Foreign Correspondents’ Club of Japan

1-7-1 Yurakucho 20F

Chiyoda-ku, Tokyo

03-3211-3161

  FCCJ "Designated Secrets Bill"Protest Statement

The Foreign Correspondents' Club of Japan views with deep concern the

"Designated Secrets Bill" now under consideration by the Japanese Diet.
In particular, we are alarmed by the text of the bill, as well as associated

statements made by some ruling party lawmakers, relating to the potential

targeting of journalists for prosecution and imprisonment.


It is at the very heart of investigative journalism in open societies to uncover
secrets and to inform the people about the activities of government. Such

journalism is not a crime, but rather a crucial part of the checks-and-balances

that go hand-in-hand with democracy.

The current text of the bill seems to suggest that freedom of the press is no

longer a constitutional right, but merely something for which government officials

“must show sufficient consideration.”



Moreover, the "Designated Secrets Bill" specifically warns journalists that they
must not engage in "inappropriate methods" in conducting investigations of

government policy. This appears to be a direct threat aimed at the media

profession and is unacceptably open to wide interpretations in individual

cases.


Such vague language could be, in effect, a license for government officials to

prosecute journalists almost as they please.

The Foreign Correspondents' Club of Japan includes members who are both

citizens of Japan and those who are not. 


But our venerable organization, established in 1945, has always viewed freedom
 of the press and free exchange of information as the crucial means by which to 
maintain and increase friendly relations and sympathetic understanding between 
Japan and other countries.


In that context, we urge the Diet to either reject the "Designated Secrets Bill" in

total, or else to redraft it so substantially that it ceases to pose a threat to both

journalism and to the democratic future of the Japanese nation.


Lucy Birmingham


President

Foreign Correspondents' Club of Japan

November 11, 2013