これは非常に重要な出来事ですので、ここ二十四時間に私が見たことを簡単に報告しましょう。
昨日の日曜日の夕方、この日交渉が行われているバーデン・ヴュルッテンブルグ州のベルリン代表部へ様子を見に行くと、建物前の欧州旗、ドイツ国旗、それに同州の旗が半旗になっていました。この日は毎年恒例の「国民追悼の日」として死者を弔う日であったためです。 この光景に何やら不吉な感じを抱いたのですが・・・、
建物の入り口には朝から多くのメディアのカメラが待ち続けています。
この公共第二テレビのカメラマン、私を見つけて途端に映し出しましたので、こちらも写真を撮りました。暇を持て余しているのです。
この建物の主に二階の会場で交渉が行われています。
外から覗くと、ちょうど入り口のカフェテリアで緑の党の党首たちが交渉団のメンバーと対策を協議している場面が伺えました。
以上は私が撮った写真ですが、以下は報道写真とヴィデオです。
ところが交渉中の真夜中、日付が変わる直前に、突然自由民主党の代表団が交渉からの離脱を表明して席を蹴り、入り口で待ち構えている記者団にリンドナー党首があらかじめ用意された声明を伝えました。
これは明らかに周到に準備された行動でした。
一月以上の連立協議で 最後の難関である難民問題での妥協案が成立しそうになった瞬間に席を蹴った同党のこの行為によってジャマイカ連立は流産してしまいました。
その一時間後にメルケルキリスト教民主同盟・CDU党首と、姉妹党のゼーフォッファーキリスト教社会同盟CSU党首が記者会見し、どちらもが「最後の土壇場での交渉の不成立を非常に残念に思うと」落胆の意を表しました。
また緑の党の交渉団も、ほぼ同様の意見表明をしました。
この時点までに起こったことを現場から公共第一放送ARDが20午前1時30分からのニュースでまとめて伝えました。(これは今日から一週間は閲覧可能です。⇨こちらから)
以上が日本時間の20日の月曜日の朝に起こったことです。
メルケル首相は、10月24日に新しい連邦議会が招集された日から、新政権成立まで暫定政権の首相の立場ですので、本日20日の正午にシュタインマイヤー連邦大統領を訪ねて、連立交渉の不成立を伝え、大統領にこれからの対策について相談をしました。このような時には大統領が連邦議会に方針を提案する権限があるからです。
これを受けて大統領は先ほど日本時間の22時30分から大統領府で記者団を前に⇨
声明を発表しましたが、「欧州の重要な国であるドイツが、選挙の結果、安定した政権を構築できないのは、有権者に対して無責任であり、したがって簡単に再選挙を呼びかけることはできない。私はこれから各政党の党首ら、並びに三権の長と対策を協議するつもりである」という短い簡潔な内容のものでした。
これからの見通しとしては、メルケル首相のもとでの黒緑の少数与党政権、あるいは再選挙が考えられますが、いずれも戦後のドイツでは初めてのことであり、どちらも簡単ではなく、しかもこれから数ヶ月から半年近い不安定な政治情勢が不可避となります。
この混乱で最大の漁夫の利を得るのは、極右政党のドイツのための選択肢 ・AfDであり、すでに彼らは我田引水の「連立交渉の破綻は我々の勝利である。メルケル首相は退陣すべきである」と党首らが声明しています。
というわけで、この結果はいずれにせよこの国の戦後政治史で最長の危機をもたらし、したがって民主主義の成熟度が厳しく問われることになります。大きな 試練の時期に突入したことだけは間違いありません。
ここでドイツの政情が大きく揺らげば、ブレクジット、トランプ登場に続く、世界規模での不安定要因になることも懸念されますので、そうならないことを願っています。
以上ベルリンからとりあえずの報告とします。