2014年6月30日月曜日

257:ドイツ紙がこぞってNHKの集団自衛権抗議の焼身自殺報道の欠落を指摘/報道不作為で自殺したNHKはAHKである/追加あり

 6月29日の新宿での集団自衛権抗議の焼身自殺事件は、海外でも広く報道され、 それらの→ロイターに続いてイギリス公共放送→BBCが電子版で報道、同内容の動画もつけて速報しました。いずれも、集団自衛権に抗議するものだとの証言をとりあげ、安倍晋三内閣の平和憲法を守るといいながらそれを破棄する「二重基準」のごまかしを指摘するものです。
 これがBBCの動画です。



 それらの中でも、ドイツの→ハンデルスブラット紙の東京特派員が、電子版で「日本の新たな安全保障政策に対する焼身自殺」との見出しと、「日本の首相は第二次大戦後に定着した平和憲法という日本の安全保障政策の基軸を揺さぶっている:これが東京で悲劇的抗議を呼び起こした」との小見出しで詳しく報道しています。

 最初の記事では、日本メディアの報道に関して以下のように伝えています。:
 ただし、電子版の差し替え記事では削られていますので、その部分を保存のため訳出しておきます。
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Die japanischen Medien sprangen erst mit extremer Verspätung auf den entsetzlichen Vorfall an. Der öffentlich-rechtliche Fernsehsender NHK verschwieg den Japanern in seinen Hauptnachrichten um 19 Uhr den Vorfall sogar gänzlich. Warum, ist unklar.
Klar jedoch ist, dass der neue Intendant des Senders bei seinem Antritt gesagt hatte, dass sein Sender die Regierung nicht kritisieren solle. Und die neue Sicherheitspolitik, gegen die sich der Protest des Unbekannten richtet, ist das langjährige Hauptprojekt von Japans Ministerpräsident Shinzo Abe. Es kommt dem Umsturz eines seit Jahrzehnten geltenden Pfeilers der japanischen Sicherheitspolitik gleich.

 日本の諸メディアは、極端な遅滞でこの驚くべき事件に取りかかっている。公共放送のNHKにいたっては、19時の主要ニュースで事件を全く報道しなかった。理由は判らない。
 ところが、はっきり判っていることは、この放送の新会長が就任時に、放送では政府批判をしてはならないと述べたことだ。この氏名不詳の抗議者が対抗しようとする新しい安全保障政策は安倍晋三首相の長年の主要なプロジェクトである。これは何十年も効力を持った日本の安全保障政策の柱を倒すことと同じなのである。
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続けて保守紙の→ディ・ヴェルト紙の同じく東京特派員が、これについて以下のように伝えています。その部分は以下のとおりです。見出しは「日本の再軍事化へ焼身自殺」です。-------------------------------------------

Selbstverbrennungen sind in Japan extrem selten. Trotzdem verzichtete der öffentlich-rechtliche Fernsehsender NHK auf einen Bericht darüber in den Hauptnachrichten um 19 Uhr Ortszeit, also fünf Stunden nach dem Vorfall. An der Neutralität des Senders kamen in den letzten Monaten immer mehr Zweifel auf. Er wird seit einem halben Jahr von einem Mann geführt, der von Premierminister Abe persönlich ausgesucht wurde.

 焼身自殺は日本では非常に稀である。にもかかわらず公共放送のNHKは19時の主要ニュースで報道をあきらめている、すなわち事件から5時間後にである。この放送の中立性については、ここ数ヶ月間に疑いが増加ししつつある。ここ半年間、安倍首相によって個人的に選ばれた人物によって指導されているのである。

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まるで自殺したのはNHKであるとの印象が得られます。

 以上のふたつの新聞は、日本でいえば日経と読売のようなものです。ドイツでは保守であればこそ、メディアの中立性に厳格であることが、ここにも現れています。どちらも明らかに深い懸念を示しています。もはやAHK(安倍放送協会)と呼んだ方が相応しいでしょう。
 
また、中道左派の南ドイツ新聞と双璧の中道右派のフランクフルター・アルゲマイネ紙が、NHK問題を→「政府放送局である」と厳しく批判したことは2月にすでに伝えたとおりです。 同特派員は→今回も電子版で詳しく現場情報とともに、集団自衛権を特に高年齢の日本人が懸念していることをこのデモの写真を加えて、日本のメディアはツイッターなどのソーシャルメディアに遅れて伝えたと報告しています。

 事件の背景がこの時点ではまだ明らかでないにせよ、集団自衛権への抗議行動であるとの証言は明確といえます。NHKは公共放送としての資格を完全に放棄してしまっていることがこれで明らかです。 視聴料詐欺行為どころではなく、不作為罪に当たります。NHKはこの焼身自殺報道を無視したことによって自殺したのです。

 以上は6月29日。以下30日に追加します: 

 スイスのドイツ語主要紙であるノイエチューリヒャー紙は東京から→「安倍の計画への抗議・東京で焼身自殺」と伝えていますが、その中でNHK以下の日本の大メディア全体を批判しています。その部分だけを訳出します。日本の大メディア内部の雰囲気を伝えている珍しいものです。

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Medien mit Beisshemmung

Shinjuku ist der meistfrequentierte Bahnhof Tokios, entsprechend wurden Hunderte Zeugen der Selbstverbrennung. Innert Kürze erschienen zahlreiche Bilder und Kommentare in den sozialen Netzwerken. Die klassischen Medien hingegen berichten kaum über die extreme Form des Protests. Der öffentlichrechtliche Sender NHK erwähnte die Selbstverbrennung in den nationalen Abendnachrichten nicht einmal. NHK steht seit längerem in der Kritik, sich bei der Regierung anzubiedern . Generell schrecken die grossen Medienhäuser davor zurück, das Vorgehen Abes zu stark zu hinterfragen. Ein Journalist sagt im Vertrauen, dass das Thema in seiner Redaktion eine heisse Kartoffel sei, die sich kaum jemand anzufassen traue. Keinesfalls will er mit seiner Aussage namentlich zitiert werden.

  喰いつきにひるむメディア


新宿は東京で最も往来の多い駅出あるので、自焼行為は何百人にも目撃された。直ちにソーシャルネットワークでは無数の画像とコメントが現れた。それに反して古典的なメディアでは、極端な形の抗議をほとんど伝えていない。公共放送NHKは国民的な夕刻のニュースで焼身自殺について全くふれなかった。NHKは政府に取り入ろうとしていると長い間批判にさらされている。大メディアは全般的に安倍のやり方に強く疑問を呈することにひるんでいる。ひとりのジャーナリストは、彼の編集部では、この問題は誰も拾おうとはしない火中の栗であると打ち明けた。彼はこの発言を決して氏名を挙げて引用してほしくないと望んでいる。

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 さらにニューヨークタイムス紙は29日付で、→「抗議者が自焼」と現場の様子を報告していますが、何と記事では次の映像をリンクしています。日本の大メディアでは絶対にできない報道です。(実はわたしも昨日これを見ていましたが、残酷ですのでブログ引用は避けていました。)これで世界中が現場の実像を見ることになります。知らぬはNHK以下の日本のテレビの視聴者だけとなります。

2014年6月28日土曜日

256:ドイツ連邦議会再生可能エネルギー改正案を決議/自然エネルギーによる基本的電源供給が本格化

 本日6月27日、ドイツ連邦衆議院は、大連立の二大政党の賛成で80%近い多数で、第三次メルケル政権の重要政策のひとつ、エネルギー転換政策の基軸となる再生可能エネルギー法(EEG)改正案を採択しました。同法は7月11日に連邦参議院の決議を受けて、8月1日から施行される見通しです。
 ただし、この改正法はEU欧州連合の委員会から批判と注文があり、果たしてこのまま実現されるか否か、不確定の面があります。近いうちにその問題が解決されねばならず、ドイツ政府とブリュッセルとの間で交渉が行われます。

 現政権のエネルギー転換政策の問題点と課題については、『世界』2014年2月号で→「ポスト原子力時代へ歩むドイツ新政権」としてかなり詳しく報告したとおりです。

ここでは、とりあえず新法での見通しの重点を簡単に書いておきます。

1)ドイツの再生可能エネルギー発電は、これまでの同法による固定価格買取り制度で、またフクシマ事故での脱原発政策で、膨大な投資がされ急速に成長し、現在では発電量の25%が自然エネルギーとなって発電価格も急速に低下しています。
ところが、20年間は固定価格で買い取り保障があり、その差額が消費者の負担となるために、消費価格が急速に上昇するという矛盾が大きくなりました。
ガブリエル経済エネルギー相は本日の議会討論でも「ここ2年で負担金が倍になっている。これ以上の消費者負担は無理だ」と述べています。この図に見られるとおり、本年度は同法による賦課金は6,24セント/キロワット時となっており、
これは、一般平均家庭の年間需要3500キロワットでは年間218ユーロ(約3万円)の 負担となっています。
今回の法改正では、この負担をこれ以上増加させないための複雑な工夫がなされています。(新法はドイツらしくなにしろ200頁もあり、複雑極まります。)


2)これは経済エネルギー省の→改正法解説からの借用した図です。
再生可能エネルギー発電の増加目標を現在の25%から、2025年には40%から45%、 2035年には55%から60%マでの範囲で増加させるというものです。
これは、現大連立政権の連立協定で合意されたものです。

もちろん、緑の党や自然保護団体からは「ゆっくりすぎる、もっと早く可能だ」、「原発に次いで問題のある石炭発電を擁護するものだ」との批判と意見は多数あるところです。




 3)この見通しの種類別具体的内訳ですが以下のとおりです。

それぞれの年間発電量の増加量目標を,海上風力発電0,85ギガワット、陸上風力発電2,5ギガワット、太陽光発電2,5ギガワット、バイオマス発電0,1ギガワットとして、2020年までの年間の種別の発累積発電量を示したものです。なお、ドイツでは水力発電は少なく増加の可能性がないのでこれには含まれていません。

 複雑になりますので詳しい説明はブログでは避けますが、この新法の背景にある考えは、従来の原発と化石燃料発電を電力供給の基本とするのではなく、徐々に再生エネルギー発電を基本供給電源として、化石燃料発電をその補助とする構造を築くことにあります。 不確実性はありますが、どうやらそれが本格化する事態がこれで見えてきそうだというのがわたしの実感です。

 以上は、あくまで目標であって、実際にどのようになるかは判りません。いずれにせよドイツのエネルギー転換は、地球の環境保護には不可欠な21世紀の革命的大実験ですので、しっかり注目すべきでしょう。

 4)おまけ:現状写真
2014年6月12日 写真:梶村太一郎

 この写真は、今月ベルリンのど真ん中のテレビ塔の展望室から、小さいカメラで撮ったものですが、地平線にブランデンブルグ州の多数の巨大な風力発電が林立しているのが、かろうじて見えます。同州は電力の50%がすでに自然エネルギーです。左の冷却塔で水蒸気が見えるのはベルリンの火力発電所のひとつです。
 
 原子力発電が視野から本格的に消えつつあるドイツでは、再生可能エネルギー発電が火力発電を包囲しているさまが、一望できますので挙げておきます。これが現状です。


2014年6月26日木曜日

255:「慰安婦」何が本当? ベルリンで講演会/セクハラヤジと「河野談検証話」報道で見える安倍知性欠落政権が陥った罠

 6月26日追加です:以下のドイツ紙報道にも紹介され、都議会セクハラヤジへの抗議キャンペーンで91352の賛同署名(そのうちのひとりは明日うらしま)を数日で集めたことが日本のメディアにも紹介された国際NGO-Change Org日本支部が、あらたに→人権侵害調査特別委員会の設置と、ヤジ発信者の辞職勧告を要求します。とのキャンペーンを初めています。 読者でまだの方はこぞって賛同してください。
先のキャンペーンのその後の報告もありますのでご参考まで。市民ひとりひとりが小さな声を束ねて突きつけない限り、東京都知事と都議会の堕落政治家たちに責任をとらせて日本の恥を雪ぐことはできません。
今日、東京でこの団体の集会があったことを朝日新聞が伝えています。→「 幕引きは許さない」

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 本文:
 いやはや、海外住まいをしている日本人、特に男性にとっては、新聞を読むのが苦痛な昨今ですね。東京都議会でのセクハラ女性差別ヤジの惨状が、日本の大恥として伝えられるので、まったくたまりません。
 ドイツの新聞でも大手の保守系紙ディ・ヴェルトの女性特派員が6月22日付けで、「→ Immer Ärger mit den japanischen Machos /日本のマッチョーにまたまた憤慨」との見出しに加え、「日本の女性たちが防衛している:女性議員に対する性的なヤジで激しい論議が喚起。安倍首相の女性に親切な社会は遥か彼方」とのリードで、電子版では塩村文夏議員の→日本語ツイッターと→Chenge Orgの署名呼びかけまでそのまま紹介して、詳しい経過と問題点を詳しく伝えています。
 東京都議会は、ヤジを飛ばしたマッチョー議員全てを洗い出して辞職させない限り、オリンピック開催資格がなくなることが、まったく理解できていないようです。自民党議員の 度し難い姑息さに世界中が呆れているのです。恥ずかしいでは済まない事態が世界世論の実情です。このズレは絶望的です。

 さらにこれと平行して、安倍内閣による「河野談話検証結果」発表問題が報じられ、これについては22日、ニューヨークタイムスが社説で「→ Japan’s Historical Blinders /日本の歴史の目隠し」の見出しと「第二次大戦時の性奴隷への謝罪がまた問題化」 との小見出しで論評しました。これについては時事通信が→以下のように報道しましたので、以下引用させていただきます。
26日追加:この→記事の日本語訳がカナダのピースフィロソフィーに乗松さんのいつものとおり丁寧なものがあります。年寄りには読みにくければ地球座が転載していますので→こちらからどうぞ。)

河野談話検証は失敗=安倍首相は立場明確に米紙社説


時事通信 623()2252分配信
 【ニューヨーク時事】米紙ニューヨーク・タイムズは23日付の社説で、従軍慰安婦問題に関する河野洋平官房長官談話の検証結果について、「韓国との緊張 緩和を見込んでいたのなら、失敗だ」と否定的に論じた。その上で、安倍晋三首相は、慰安婦問題の「否定論者」が間違っていることを日本と世界に対して明確 にする時だと注文を付けた。
 検証結果では、談話作成時に日韓で非公表の文言調整が行われ、元慰安婦とされた女性への聞き取り調査で裏付け調査が行われなかったことが明らかにされた。
 社説はこれらの点を踏まえ、検証結果が河野談話に盛り込まれた謝罪について疑問を差し挟んだ格好だと指摘。「韓国人にとって、日本が謝罪に関して決して誠実でなかったことが示された」と述べた。

 
 要するに内閣の検証行為そのものが間違っているという主張です。ここでも安倍内閣の世界世論とのズレと乖離が明らかです。このことを安倍首相は認識能力がないので、増々韓国や世界から孤立してしまうだけです。これについてはわたしも→あらかじめ指摘したとおりです。

 こんな中、今週中にも公明党を籠絡して集団自衛権行使の閣議決定でもすれば、日本政府は日韓両国から、本格的に敵視されどうにもならないほど孤立してしまうことは、火を見るより明らかなことです。外交的には拉致問題で北朝鮮だけが頼りという情けない事態になります。独裁者同士には親和性がありますから、これも歴史の必然といえます。

 さてこのような日本の惨状の中ですが、来週末に以下の講演会がベルリンでありますのでお知らせします。
「慰安婦」問題では、世界中の諸政府と国際諸機関によって、最も信頼されている日本のNGOのエキスパートの渡辺美奈さんが、国際会議に出席されるついでに、日本語で講演してくださるそうです。ドイツではめったにない機会ですので、こぞってご参加下さい。関心のある方に判りやすく話してくださるでしょう。普段から日本の生徒たちにも解説の経験を積んでいる資料館の方です。ちなみにマッチョーでない日本人男性も歓迎だそうです。

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    <「慰安婦」問題 何が本当?> 

     話し手: 渡辺美奈さん 
<アクティブ・ミュージアム →女た ちの戦争と平和資料館wam事務局長>
                 
日 時: 2014年7月5日(土曜日)15時~17時半 <会場は14時半から開けています>
会 場:  →WerkStadt <カフェバーで飲み物を自由にご注文いただけます>
 Emser Straße 124 (Ecke Ilsestr.),12051 Berlin – Neukölln
     S & U Bahn Hermannstraße 駅またはNeuköln駅から徒歩6分です。
(チラシはクリックで拡大)

以上ですが、以下は当問題に関心のある方のへの情報です:

1)6月20日に日本政府が公表した河野談話検証の原文は政府が関係公館で日本語と英語で公表しています。→日本語のPDF(25ページ)。

これを読んで判りますが、これは河野談話の成立過程を検証しただけでなく、その後の「アジア女性基金」の成立と破綻の過程を韓国との関係を中心に述べていますが、この部分は検証とはいえず、自画自賛になっている一方的な内容です。

2)これについて、特に韓国から厳しい批判が多く伝えられていますが、韓国側の見方を伝える日本語報道のなかでは、 シンガクス ソル大学日本研究所特任研究員元駐日本大使
が中央日報へ寄稿した → 時論河野談話検証は歴史轍だその1、→その2 が 非常に良い参考になります。

3)韓国政府の反応に関しては同紙が
 →韓国政府日本軍慰安婦白書出す河野談話毀損に対抗
と伝えています。おそらく韓国と中国両政府の合同プロジェクトが計画されているのでしょう。これが、安倍政権が河野談話検証で蒔いた種の結果となるでしょう。

4)さらに検証問題が、喚起した新たな展開としては:
 *ウオールストリートジャーナルが日本語電子版で、本日6月25日に
→「慰安婦問題、失われた正義―日本だけの問題ではない」との論評で、あえて戦後の日本占領時に日本史府が解説した米兵専用の慰安所/RAA(the Recreation and Amusement Association=特殊慰安施設協会)について報道したことです。自国も直接かかわった類似の歴史をしっかり報道したものです。
これについて、わたしから解説を付加しておくと、アメリカはこのRAAでの経験を含めて、後に海外駐屯地で米兵が売春施設を利用することを禁止しています。それが建前であるにしても、沖縄の基地司令官に「風俗を利用すべし」と勧めたのが橋下元大阪府知事です。

*さらに同日、韓国における米兵用の慰安所に関してTBSが →「米軍慰安婦だった」と主張する韓国人女性らが集団訴訟 と報道しました。これは全文引用させていただきます。

いずれにせよ、安倍政権のいらぬ愚行で、「慰安婦」問題が「戦争と性」という極めて普遍的な問題であることが、いよいよ認識されることになっています。
これらによって安倍知性欠落政権が陥ったパラドックスの罠が次第に見えてきました。

そもそも、この失敗は2007年の安倍第一次政権で行った同じ失敗の繰り返しですから、世界世論が当時よりさらに厳しくなるのは当然のことです。その自覚が全くないのですから、何とも救いがたい惨状です。自国の歴史に目隠しをする政権が陥る典型的な罠で自縄自縛となるさまはみじめなものです。これこそ「積極的自虐史観」といえましょう。

  「米軍慰安婦だった」と主張する韓国人女性らが集団訴訟

 朝鮮戦争後の韓国で、政府の管理の下、駐留するアメリカ兵士の相手をさせられ、「米軍慰安婦だった」と主張する女性たちが、韓国政府に対し謝罪と賠償を求め集団訴訟を起こしました。

 訴えを起こしたのは、いわゆる「基地の村」でアメリカ人兵士の相手をさせられた「米軍慰安婦だった」と主張する韓国人の女性122人です。

 「基地の村」とは、朝鮮戦争後の1950年代後半、韓国に駐留したアメリカ軍の付近にできた集落とされ、女性たちは声明書で「国家が旧日本軍の慰安婦制度をまねて『米軍慰安婦制度』を作り、徹底的に管理してきた」と指摘しました。

 その上で、当時、政府が特定地域を売春防止の除外対象としたほか、女性を国家に登録させ、「愛国教育」という名称で教育まで受けさせたと説明しています。

 女性たちは韓国政府に対し、「米軍慰安婦制度」の歴史的事実と法的責任を認め、被害者に謝罪するとともに、1人あたり日本円でおよそ100万円の賠償を求める訴えをソウル中央地裁に起こしました。

 韓国では、過去にもこの問題が取り上げられたことがありますが、支援団体によると、こうした女性たちが訴訟に踏み切るのは初めてです。(25日19:45)




2014年6月19日木曜日

254:シュピーゲル誌がスノーデン資料を大量に公表。日本でのアメリカのスパイ基地名は「レディーラブ」

 アメリカの情報機関の内部告発者エドワード・スノーデン氏が、膨大な極秘情報を公表するため香港経由でモスクワで亡命状態になって、丸1年経過しました。彼の持ち出した機密情報でドイツに関する情報については、昨年10月下旬の→メルケル首相の携帯電話盗聴が暴露されて以来、ここでも数回に渡って報告したとおりです。

 その後この問題はメディアによって、9・11以降拡大され、現在ではドイツ国内のアメリカの秘密施設が、アフリカやパキスタンなどの無人機攻撃による無法な殺人行為(これこそ国家によるテロ行為そのものです)には不可欠なキーステーションとなっていることも明らかにされました。
 それを受けてドイツ連邦議会に設置された調査委員会などで追求されてきましたが、ようやく最近になってドイツの検察庁がメルケル首相への盗聴問題だけに関して捜査を始めることが決定されただけで、何一つこの問題は進展しないままです。

 このありさまにしびれを切らしたように、シュピーゲル誌が今週号(左)で、ドイツとアメリカの情報機関NSAの非常に密接な協力関係を「わが隣人NSA」タイトルで暴露するスノーデン情報を特集し、続けて6月18日午後に電子版で、53点に及ぶ関連資料を→一挙にPDFで公表しました。
この問題でドイツメディアがまとめて生情報を公表するのはこれが始めてです。

 今回公表された資料は、大半が昨年秋以来、主要メディアが徐々に報道してきたドイツにおけるアメリカの情報基地に関するものと、両国の情報機関の協力関係のものです。
しかし、スノーデン資料には未公開の日本関連のものも大量に含まれていることは、大方が推定されているとおりで、それを示唆する資料も含まれています。

 とりあえず、ざっと目を通しただけですが、日本に関連する部分を4点だけ選んで原資料で以下、簡単ですが紹介しておきます。

1)これは2009年5月21日付けのいわゆるFive Eyesのトップシークレット資料で、情報収集のターゲットにされている世界中の主要政治家名のアルファベット順リストです。
9番目にアンゲラ・メルケル首相が挙げられています。同誌によれば、この時点でメルケル首相に関する情報は300点以上(>300)集められていることが示されています。122番目はウクライナの当時のユリア・ティモシェンコ首相で、200点以下(<200)です。
ここでは公表はされていませんが、当時の日本の麻生首相が「Taro Aso  Japan Prime Minister」 として当然ながら数も含めてリストアップされていると推定できます。

2)これはアメリカの暗号通信情報機関の世界中の在処です。大半がアメリカ本国にありますが、ドイツには3機関あり、日本にもあります。

3)これは世界中にあるスパイ衛星の秘密受信基地の地名と、そのコードネームです。日本には三沢基地に「Ladylove/レディーラブ」という、実にふざけた名の施設があります。ドイツのそれは「ニンニク」で、本国には「ジャックナイフ」等々、アメリカの情報機関の品性を自ら暴露しているような命名ぶりですね。

4)スノーデン資料には、アメリカが第二次世界大戦後に集めた世界諸国と諸機関の極秘リスト(35頁)が含まれており、日本に関しては「1954年12月31日以降」とあります。(赤字での書き込みは梶村です)。

2014年6月17日火曜日

番外:サッカーワールドカップ2014。ドイツ初戦で完勝。メルケル首相のおっ母さんぶり。

 さきほど行われたブラジルでのサッカーワールドカップ初戦でドイツチームが、予想を上回る4:0でポルトガルに完勝しました。
首相と大統領の様子を紹介しましょう。

サッカーも好きなメルケル首相も現地で観戦し、試合終了直後にチームのキャビネットまで出向いて裸ん坊の若い選手たちと記念写真。おっ母さんそのものです。監督のレーヴ氏はテレビインタヴューのためでしょう見えませんね。
報道によると「決勝戦なれば、また来るから頑張ってね」と言って励ましたそうです。
写真は、同行した政府スポークスマンのシュテッフェン・ザイベルト氏の→ツイッターより。

 調べてはてはいませんが、おそらくこのナショナルチームの選手の3分の1ほどは、戦後ドイツへ出稼ぎなどでやって来た移民の子弟であると思います。
わたしは自宅でテレビで観戦しましたが、今日出場した選手だけでもポーランド、トルコ、ガーナ、チェニジア、アルバニア人の親がいる選手がいました。

→最近の連邦統計局の調査によるとドイツの住民の20%近くが、ドイツ以外の血統を引いているとのことです。18歳以下では40%にもなっているそうです。ですからこのチームでも当たり前のことです。これがドイツチームの強さの背景のひとつでしょう。
もちろん西ヨーロッパのナショナルチームではフランスやオランダも外国系の選手の割合はもっと多いでしょうが、旧植民地出身の子弟がドイツには皆無であるところに違いがあります。
 
写真:DPA
これは前半でドイツが2点目のゴールを入れたとき喜ぶメルケル首相。彼女の眼鏡姿は、サッカー観戦の時しか見たことはありません。
写真:DPA
 ガウク大統領は、25年前の今日が、ハンガリーがオーストリアとの国境を開いて、旧東独の市民が西側に大量に亡命すきっかけとなった日なので、ブダペストでのその記念式典に参加した後、そこでサッカーを観戦。勝利に喜ぶ大統領です。

ベルリンの壁が崩壊して今年は四半世紀となります。首相も大統領も旧東独出身です。当時はこのような統一ドイツの姿は夢にも考えられなかったことです。
ベルリンの市民はブランデンブルグ門前の大スクリーンで観戦。これがこれから大会終了まで延々と続きます。

17日追加:
ちなみに、昨年公式に公表されたところによると、メルケル首相の父方の祖父は、ワイマール時代のポーランドからの→ベルリンへの移民であったとのことです。 したがって彼女は四分の一がポーランド人です。
写真:AFP
この写真は、メルケル首相とポーランドの→トゥスク首相ですが、彼の方はポーランドの北部のドイツとポーランドの間で歴史的に翻弄されたスラブ系少数民族カシューブの出身です。ドイツでのカシューブ系の有名人としてはギュンター・グラス氏がそうです。

この写真は後半戦に出場した→ポドルスキ選手が上記の選手のキャビネットからツイッターで送ったものですが、彼はポーランド生まれで、幼い時からドイツで育っており、二重言語でアイデンティティーもダブルです。メルケル首相とは親子のようですね。

2002年の ワールドカップが日韓で行われて成功したことも、思い出しました。スポーツには狭い国民国家を越える可能性が含まれています。これが大事です。