2011年11月14日月曜日

53:ドイツ原発ドキュメンタリー映画『アンダーコントロール』が日本で上映開始

フクシマの大事故が起こる直前の今年の2月に、ベルリン映画祭で初公開された、ドイツの若い監督による原子力発電施設の内部のドキュメンタリー映画『アンダーコントロール』が、日本でも11月12日から上映されています。徐々に全国で上映されるとのことですので、日本のみなさまにお勧めします。

 日本語公式サイト:
http://www.imageforum.co.jp/control/
ドイツ語公式サイト:
http://www.unterkontrolle-film.de/unter_kontrolle/

日本での公開に際して監督が映画専門誌にインタヴューしています:

 原発風景を淡々と映し出す映画『アンダー・コントロール』監督、福島第一原発で働く作業員に同情!「地獄のような状態だった……」
http://www.cinematoday.jp/page/N0036950

実はわたしはこの映画を観ておらず、またDVDもまだ発売されていないようなので、いまのところ、この映画について感想を述べることはできません。ただ、ドイツの反原発運動の中でも評判になって推薦されていることだけは確かです。
 そこで、その代わりとして、実はわたしの長女が映画の専門家でベルリン映画祭にも長くかかわっており、この映画と、同じく今年のベルリン映画祭で公開された北欧の放射性廃棄物最終処理施設に関するもうひとつの映画の二本について、日本語のドキュメンタリー映画のメールマガジン7月号に感想を書いているので、それを参考としてお読みください:

ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo 172号
梶村昌世ワールドワイドNOW ≪ベルリン発≫ 原子力とその後先をめぐるドキュメンタリー映画」
http://melma.com/backnumber_98339_5236137/

この文末で、筆者は日本の歴史認識と原発について厳しく批判し編集者の伏屋博雄氏を驚かせていますが、これは筆者がわたしの娘であるからそうであるのではありません。ドイツ生まれでドイツ育ちの世代では、日本社会をよく知る者のごく普通の見方です。

さてこの映画からの二枚の写真をお借りしましたが、上の写真は、舞台となったニーダーザクセン州にあるグローンデ原発のおそらく燃料棒交換時の原子炉の様子です。わたしもこの比較的新しい原発を稼働中に見学し原子炉建屋まで入ったことがあります。ウラン燃料の放射能を制御する普通の水が、非常に人工的な青い色に見えるのは中性子の作用によるものだとのことですが、わたしにはこの色が生命を拒否する不気味な色にしか見えません。
先月、原発部門から撤退を表明したシーメンス社が当時は大変に自慢する原発でした。10年ほど前の見学時には年間稼働率が世界一で、95%を越えていたからです。映画の撮影が可能であったのも、おそらくそのような背景があるからでしょう。この原発も32年を経て間もなく廃炉になります。

もうひとつ、この映画には、こちらは稼働するまえに廃炉となったライン河下流のカルカー高速増殖炉の現在の姿が紹介されています。 下の写真はその冷却塔が遊園地として再利用されている様子のものです。
実は、この原子炉は日本の「もんじゅ」のモデルとなったものですが、「危険性があまりにも高い」などとの判決で、プルトニウム燃料が装填される直前に廃棄されたため、このような平和利用が可能となったものです。映画でその様子が見れるのは非常に参考になるでしょう。
いずれ、このブログでも「もんじゅ」については、わたしの考えをくわしく書きます。この「地獄の釜」が廃炉にならない限り、日本はいつ何時でも、フクシマ事故とは次元を異にする想像を絶する破滅の淵に陥ることから逃れられないからです。この原子炉がナトリウムによるプルトニウム燃料の制御に失敗すれば、その暴走はフクシマなどの一般の軽水炉の原発事故とは比較にならず、少なくとも日本列島の大半には人間は住めなくなります。ドイツの裁判所のカルカー判決でも「事故が起こればヨーロッパは破滅する」危険性が指摘されています。


1 件のコメント:

  1. DVDがあれば即見たい、この映像。
    中性子の存在を水が示す、感性が凍る水色に言葉が消える。
    「しにみずいろ」は生命を蔑ろにする「イル・ルミノス」
    何度見ても生命が拒むこの水の色。

    一番近い上映館が東京ですが汚染が進む方面へ行きたくない。
    DVDが待たれます。

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