2011年11月12日土曜日

52:ドイツ核廃棄物最終処理施設の選定、振り出しに戻す合意-Erdölvorkommen in Gorleben

-ドイツのレットゲン環境相は11月11日、ベルリンの環境省で行われた全16の州首相らとの会議で、これまでゴアレーベンの岩塩層にしぼっていた高レベル放射性廃棄物の最終処理場の選定を振り出しに戻し、可能性のある全国に広げることで同意しました。これによると来年の夏までに、連邦議会で「最終処理施設選定法」を超党派で実現し、それに従って全国各地の粘土層、岩塩層などの適地を複数選定し、情報を公開してそれらの地元市民、自治体はもちろん全社会的な議論を経て立地の最終決定をするとのことです。

  レットゲン氏は記者会見で「選定にタブーはない。問題は最も安全な立地をさがしあてることだ」と述べ、とりあえずは全社会的コンセンサスを実現するため、可能性のある8つの州政府と連邦政府の代表でなる 「法案グループ」を年内に発足させることで同意したと述べました。
また、最終処理施設は国外には求めないこと、我々の世代のゴミを次の世代に渡さないことなどの原則を表明し、処理施設から廃棄物を遠い将来に取り出すことを前提とするか否かはグループで検討するとの見解も表明しました。

これで、フクシマの事故で最終的に脱原発に踏み込んだドイツは、残された最大の困難な大問題である高レベル最終処理施設の実現に向けた、最初の大きな一歩を踏み出したことになります。

しかし、試掘中のゴアレーベンの岩塩層もオプションのひとつとして残される可能性があるため、地元の反原発市民団体と全国の諸環境保護団体など、またトッリティン元環境相は、こぞってゴアレーベンの試掘を直ちに停止するよう求めています。

そもそも、ゴアレーベンは同じ岩塩層でも地質学的に最適とはいえない立地条件であるにもかかわらず、35年前に当時のニーダーザクセン州のアルブレヒト首相が、政治的独断で決定しており、以来、同地は反原発運動の中心となっています。
レットゲン氏もこれまで同地にしがみついていたメルケル首相の与党も、他の適地を民主的に選定しない限り、この問題は決して解決しないことを理解し、ここにきて立地選定を35年前より以前の振り出しに戻すことで与野党で合意したというのが実情です。

11日の会議にも参加したゴアレーベンの担当長官ケーニッヒ氏については、ここの追加を:
http://tkajimura.blogspot.com/2011/08/blog-post_03.html

レットゲン環境相と最終処理担当のザイラー氏については:
脱原発を実現した人々/その1
http://tkajimura.blogspot.com/2011/06/blog-post_11.html

を見て下さい。

さて、わたしも先の6月にケーニッヒ氏の案内でゴアレーベンの岩塩層を視察しましたが、これまで35年にわたり、16億ユーロ(現レートで約1700億円、事実上は2000億円以上)も経費のかかったこの試掘は、市民の反対によるだけでなく、地質学的にも疑問が多く、無駄な出費に終わる可能性が強いとの印象を得ました。
ひとつは、岩塩層上部に地下水を遮断する地層がないこと、ガスの発生もあること、さらにケーニッヒ氏らしく、隠さず見せてくれたように、驚くべきことに何と岩塩層から微量ながら天然石油まで出ていることが確認されているからです。写真をお見せしましょう。三枚目がその現場です:

高レベル放射線廃棄物最終処理施設試掘のゴアレーベン岩塩層 2011年6月16日

ゴアレーベン岩塩層抗内を案内する環境省放射線防護庁ケーニッヒ長官
ヴォルフラム・ケーニッヒ(Wolfram König)氏2011年6月







以前紹介しましたように、この人物は緑の党で、これから最終処理施設の選定と実現に際して、高木仁三郎氏の盟友ザイラー氏とともに中心的な役割を果たすことでしょう。




















二億年前の岩塩層からしたたる石油 Erdölvorkommen  aus dem Salzstock Gorleben Photo Taichiro Kajimura 16.Juni 2011


この現場写真は、ドイツのメディアでも未見のものですから、スクープかもしれません。これでは何万年も放射性廃棄物を安全に閉じ込めることは難しそうです。

1 件のコメント:

  1. 国民を信頼している政治家は国民に信頼される。
    従来の対策の安全性や懸念を検証する、環境省(政府)の仕事のあるべき姿。

    うー、ドイツに移住したい。
    ドイツで最悪の事態が起きても、日本で歯ぎしりするよりも幸せだろうな。

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