2011年10月13日木曜日

40:東京世田谷区のホットスポットの線量はドイツ高レベル核廃棄物施設周辺許容値の47倍(追加あり)

前回、フクシマのJ・ヴレッジが地獄の一丁目であると書きましたが、どうやら東京のど真ん中の住宅地にもそれが出現したようです。

今日10月12日のNHKの報道には以下のようにあります:

「東京・世田谷区で検出された1時間当たり2.7マイクロシーベルトという放射線量は、文部科学省が積算の放射線量を計算する際に用いている、1日のうち、屋外で8時間、屋内で16時間過ごすという条件で計算すると、1日の被ばく量が38.88マイクロシーベルト、1年間にすると14.2ミリシーベルトになります。」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111012/t10013217911000.html

この実に控えめに計算された値が、それでもどのようなものであるかは、ドイツで今現在、大きな問題になっている値と比較すればよくわかります。
これは、ドイツのニーダーザクセン州のゴアレーベンにある高レベル放射線廃棄物中間貯蔵施設の周辺の許容値の約47倍となります。
ゴアレーベン高レベル核廃棄物中間貯蔵施設。奥にあるのがキャスク。DPA
この施設は、高レベル廃棄物の最終処理施設予定地として試掘されている岩塩層の近くにあります。
ドイツでは原発の使用済み核燃料を2005年まではフランスのラアーグの再処理施設に依頼し、ガラス固化体したものを特殊なキャスク(容器)に詰めて送り返されています。最終処理のための1工程です。
2002年の脱原発法で、2005年以降の使用済み燃料は再処理を禁じられ、直接最終処理されることになりました。
ドイツにも最低でも10万年は地下深く埋め込む最終処理施設はまだありませんが(注1)、仮にすでにあったとしてもこの容器は高熱のため10年以上は地上で冷却させなければなりません。それが中間貯蔵施設です。日本にも英仏から世界中の抗議を無視して危険な長い航路を経て船で送り返されてくる同じ施設が六ヶ所村にあります。
昨年の搬入後の内部の写真。TAZ;DPA

さて、この赤松の森の中の施設の地上にある中間貯蔵の建物は空冷式です。すなわち壁の下部にある隙間から入り、暖まった空気を上部から外気に出すという単純な設計です。容器は厳重に密封されていますが、それでも表面はかなりの放射線量となります。
数年に一度フランスから容器が搬入される時には、大きな阻止闘争が行われます。特に5万人を動員した昨年11月の闘争は文字どおりのゲリラ戦となりました(注2)。
核のゴミ搬入阻止のため鉄道線路を枕に夜明かしするデモ隊。2010年11月。ゴアレーベン
写真Jochen Lübke/DPA

さて、はじめの2枚の写真でわかるよう施設建物内の容器の数がかなり増えています。報道によるとこの施設全体ではこれまで120の容器が中間貯蔵され冷却されています。また上記のように、2005年に最後に再処理のためフランスに送られた使用済核燃料の入った容器が、今年の秋には返却搬入される予定になっています。

ところが、さきの8月下旬に地元の反原発運動が、施設のフェンスの放射線量が許容値に近いまで上がっていることを暴露し、これ以上の容器の搬入を止めるようにニーダーザクセン州政府に申し入れました。
大いに困った同州環境省は、昨日10月11日、測定値を発表し次のような見解を示しました(要旨):

Mit diesen Castoren sei eine Erhöhung von 0,238 Millisivert (mSv) auf 0,254 (mSv) zu erwarten. Der Eingreifwert bei der Umgebungsüberwachung in Gorleben liege bei 0,27 mSv pro Jahr, der Genehmigungswert bei 0,3 mSv pro Jahr.

「予定されている容器の搬入では現在の線量値0,238mSv(ミリシーベルト)/年から0,254mSv(ミリシーベルト)/年となることが想定される。ゴアレーベン周辺ではでは0、27mSv/年であり、許容限界線量値は0、30mSv/年であるから、搬入は許可される」

これに対し、反原発運動は、「この値は自然放射能値を差し引いたものであり、事実ではない」と反発しています(注3) 。この秋もまた激しい抵抗運動が予想されます。

さて、この事実で明らかなように、
ドイツの森の中の高レベル使用済み核燃料中間貯蔵施設のフェンスの放射線量許容値は0、30mSv(ミリシーベルト)/年です。NHKが報じている世田谷区のホットスポットは「屋外に8時間」いただけでも14、2mSv(ミリシーベルト)/年ですから、実にその47倍に当たります。

文科省以外の計算基準によってはその倍近くになるでしょう。
いずれにせよ、とても人間がその側で生活できる値ではないことだけは、とりあえず指摘しておきます。スポットとはいえ、そこは文字どおりの「地獄点」といえるでしょう。

ネットでざっと観たところ、この朝日新聞の12日午後4時の現場写真が一番良いのですが、確かに歩道は車道より一段低く、さらに樹木の多い垣根の側なのでホットスポットになりやすい場所です:
http://www.asahi.com/national/update/1012/TKY201110120605.html

3月からじわじわと汚染が蓄積しているのでしょう。
世田谷区長の保坂展人さんによると、住民からの通報でわかり、計測したり洗浄しても線量はあまり下がらないとのことですが、汚染がかなり酷いということです。垣根や樹木に放射性物質が染み込んでしまっているのでしょう。
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/bfe7006ac08a6a89abaa27582cbdeb21

とりあえずは、保坂区長はここの住民の方を安全のため説得して一時移住してもらって、徹底的に除染するしかないと思われます。
しかしこのようなところは東京でもでもあちこちにあるし、増えるでしょう。セシウムだけでなくプルトニュウムが出ても不思議ではありません。これが原発がもたらした足下の見えない現実です。


(注1)岩塩層最終処理施設の責任者のケーニッヒ氏については以下をお読み下さい:
http://tkajimura.blogspot.com/2011/08/blog-post_03.html

(注2)これについては、梶村「政権を揺さぶるドイツ反原発運動」『世界』2011年1月号を参照して下さい。警備の警察官の方が気の毒になるような闘いでした。
また、この5日間に渡った激しい抵抗行動の写真はStern誌の電子版で多くの写真が見られます。ドイツの反原発運動がいざとなれば文字どおり身体をかけた大規模な抵抗運動であることが良くわかります。
http://www.stern.de/politik/deutschland/castortransport-polizei-raeumt-gleise-wir-bleiben-friedlich-1621566-photoshow.html

(注3)http://www.ad-hoc-news.de/strahlung-in-gorleben-laut-tuev-auch-durch-weitere-castoren--/de/News/22500875


(10月13日追加)
一晩明けてみると、あちこちでもっと酷いホットスポットがあるという報道が続いているようです。前にも書きましたが、事故はたった今始まったばかりなのです。本当の脅威はこれから長年にわたって姿を現します。
世田谷のホットスポットについては「南ドイツ新聞」が本日10月13日付けで報じています:
http://www.sueddeutsche.de/v5J385/254591/Erhoehte-Strahlung-in-Tokio.html
 この記事は、ついでにつけ加えて「野田新政府は菅直人首相が受け入れ難いとしたベトナムへの原発の輸出を東電も加わった新会社で実現しようとしている」とも書いています。

さて、本日、各紙は9月に英国から六ヶ所へ返却された高レベル使用済み燃料容器が汚染していると日本原燃が発表したと伝えています:

 基準の最大47倍の放射線 九電、ガラス固化体(東京新聞/共同)
安全目安を超す放射性物質 (朝日新聞)
http://mytown.asahi.com/aomori/news.php?k_id=02000001110130002

この容器汚染の問題は、ドイツでもしばしば起こっており、大分前ですが輸送した貨物車両がかなり汚染したことが判明し大問題になったことがあります。そのため原因追及がおこなわれましたが、どうやら容器そのもののビスやネジ状の部分が汚染しており、それが高温の表面に付着した湿気に混じり車両を汚染したとのことでした。
結論としては「どんなに厳重に密封しようとしても、現在の技術では100%は不可能である」ということです。それ以来、輸送の際は外部に汚染が漏れないような特別な車両に容器を入れています(上記の2枚目の写真にそれが見えます)。
日本では容器を裸でトレラーに積んで輸送している写真がこの共同に記事には使われていますが、これは目に見えない汚染を道路と周辺にばらまいている写真でもあるのです。
ですから「これが初めて」というのは疑わしいものです。原燃が発覚を恐れて初めて発表したのが真相でしょう。しかも汚染の線量値は今のところ公表していないのはなぜでしょうか。

(追加2)
書いていると世田谷の高線量の原因は原発事故ではなく、床下の瓶であるとの報道がでました。
かなりの高線量らしいので、これは第25、26回で述べました、ゴイアニア事故の日本版未遂事件となる可能性があります。
http://tkajimura.blogspot.com/2011/09/blog-post_02.html

だからといって、フクシマの汚染が納まるわけではないので安心は全くできません。

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