2011年10月11日火曜日

39:「放射線労働者の村」:シュピーゲル誌/地獄の一丁目のルポ

第37回で紹介しましたシュピーゲル誌の別冊の記事について、yoshikoさんという読者の方から「 このシュピーゲル誌の特集は、英語か日本語で手に入れることは出来ますか?」とのお尋ねですが、残念ながら日英語のものはないようです。ドイツ語の原文も、本体を購入するか、この場合は電子ペパーで個々の記事をネットで購入できるだけです。

この長い記事は Cordula Meyer/コーデュラ・マイヤーさんというシュピーゲル誌の女性記者が書いたもので、これもかなり長いものです。
この方はかつてスーダンの戦場を命懸けで取材したことでも有名な記者ですが、フクシマについても多く報告しています。最近といっても9月12日のものですが、J・ヴィレッジに潜り込んで報告していますので、これもまた日本の腰抜け記者たちが、やらない/できない報告であるかもしれないので。また内部の動画と写真もあるので簡単に紹介しておきます。

この記事です:
http://www.spiegel.de/spiegel/0,1518,785975,00.html

タイトル: 

Das Dorf der Strahlenarbeiter/放射線労働者の村

リード: 
 Es ist ein verbotener Ort, der Zutritt untersagt: In einem ehemaligen Fußballzentrum rüsten sich jeden Morgen jene Arbeiter, die das Katastrophen-Kraftwerk Fukushima Daiichi unter Kontrolle bringen sollen - ein Besuch im Vorhof des japanischen Ground Zero.

ここは入ることが許されない禁じられた場所だ。このかつてのサッッカーのセンターで、フクシマダイイチ・カタストロフィー発電所を制御すべき労働者たちが 、毎朝装備を整える/日本のグラウンド・ゼロの前庭を訪ねた。

梶村:ここで「グラウンド・ゼロ」という比喩をつかっているのは9・11前後の記事でもあるからです。
しかし、この言葉が元々はヒロシマ・ナガサキの爆心地に使われた言葉でもあったことを考えると、日本の三度目のグラウンド・ゼロでもあるのです。J・ヴィレジイは日本の三度目の地獄の「前庭」すなわち一丁目であるのです。
記事は、J・ヴィレッジの内部がどうなっているのか、そこに入った者しか知ることのできない詳しい描写があり、仕事から帰って来た労働者が、放射線量を測定される様子、また汚染した使用済み労働着など(すなわち低レベル放射線ゴミ)などが山積みになっている様子も写真で紹介されています。

また、51歳の北海道からの出稼ぎ労働者たちから労働内容や、社会的背景について話を聴き、このように書いています:

Oft sehe er Arbeiter "am Limit - nicht nur körperlich, sondern auch mental". Die meisten Jobs seien einfache Drecksarbeit. Viele seiner Kollegen bei Subunternehmen hätten keine Wahl: "Wenn die Nein sagen, wo kriegen die dann noch einen anderen Job?", fragt er. "Ich kenne keinen, der es für Japan macht. Die meisten brauchen das Geld."

彼は労働者たちが「体力的だけでなく、精神的にも限界にある」ことをしばしば目にしている。大半の仕事は単なる汚れ仕事だ。下請け企業の彼の仲間たちの多くには選択肢がない。「もし嫌だと言えば、どこに他の仕事がありますか?」と彼は問う。「わたしは日本のために働いている者をひとりも知らない。みんな金が必要なのです」

 この記事でも、東電が一人につき日当を10万円支出しているのに末端には1万円しか手渡されない実情を述べ、また彼ら末端の労働者は被爆線量が許容量を超えると解雇されて終わりです。「東電ともあろう一流企業がこのような労働力の使い方をするのはあってはならないことだ」との関係者の言葉を引いています。
また、熟練労働者も中長期的には不足する懸念についても書いています。わたしも、これから何十年にも渡って未曾有の危険な作業を続けることは、東電のこのような人間を使い捨てるやりかたではとうてい無理だと考えています。先のZDFテレビの報告でも東電は実情への「知らんぷり」を無責任に決め込んでいる場面がでてきますが、ドイツの企業であれば直ちに反応して対策に当たるでしょう。企業の社会的面目が立たないからです。
通常の原発労働者の数倍の優遇と情報公開下でしか、この日本が直面する人類史上未経験の課題を克服することはとうていできません。そのことを指摘するだけでもこの報告は警告として読めます。
日本政府と東電のトップはこの記事をしっかり読むべきです。

わたしは、ここに日本社会の土壌の凍てついた冷たさを感じます。この耐え難い凍土を溶かすことができるのは、そこで生きようとする人々の意思だけなのです。

記事の冒頭の動画もご覧ください。そこの様子がうかがえます。
ここではシュピーゲル誌のオンラインから内部の写真を二枚お借りします。核地獄の一丁目の恐ろしい光景です:
使用済み汚染物集積場には、ゴムプールのようなものに、原発構内でついた車のタイヤに着いた汚染物を除去したガムテープが特別に仕分けされフックに懸けられている。(梶村:おそらく中レベルの汚染度のためであろう)写真:Noriko Hayashi/ DER SPIEGEL
作業終了後にJ・ヴィレッジで被曝線量を測定する。写真:Noriko Hayashi/ DER SPIEGEL

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