第二次世界大戦以降、最大の犠牲者をもたらした東日本大震災一周年に際し、→市民と科学者の内部被曝問題研究会からだされた追悼のメッセージを以下に転載いたします。
東日本大震災一周年追悼メッセージ
2012年3月11日市民と科学者の内部被曝問題研究会 代表 澤田昭二
東日本大震災の一周年を迎え、あの巨大地震・津波によっていのちを奪われた1万数千人の御霊とご遺族の皆さまに、心より哀悼の意を表します。
また、東電福島第一原発事故に際し、政府と東電の無為無策によって、原発事故現場でいのちを奪われた作業員の方々、心血を注いできた農業や酪農の行く手を 放射能汚染によって阻まれていのちを絶った方々、産まれてこられなかった子どもたちとご遺族の皆さまに、改めて衷心より哀悼の意を表します。
さらに、原発事故による土地や海や食べ物などの放射能汚染に苦しんでおられる地元福島県をはじめ東北・関東の各都県の方々と全国の皆さまにお見舞い申し上げます。
福島原発事故により浮遊し堆積した放射性物質が放出する放射線による外部被曝の影響以上に、飲食と呼吸によって継続的に取り込む放射能による内部被曝の影響は、これからも継続し表面化する深刻な問題です。
事故当初より減ったとはいえ、原発事故現場から放射性物質は今なお放出され続けており、福島・茨城両県の環境放射能水準は過去の平常時よりも高い水準を維 持し続けています。関東と東北を含む広範な地域にも、堆積放射能によるホットスポット的な高濃度汚染地があり、看過できない状況です。さらに、放射性降下 物は水の流れとともに徐々に下流に移動するため、下流域の河川や湖沼・港湾ならびに海の放射能汚染は、これから深刻になることが予想され、農林水産物の安 全性が危惧されます。
福島原発が依然として不安定な状態にあるにもかかわらず、政府が「収束宣言」を発表して幕引きを図ったことや、高線量下に置かれた住民に対する保護責任を果たそうとしないことは大問題です。
旧ソ連邦のチェルノブイリ原発事故で被曝したロシア、ウクライナ、ベラルーシでは、住民の健康保護のために年間被曝線量5ミリシーベルト以上の地域は「移 住義務区域」、1ミリシーベルト以上の地域は「移住権利区域」として、住民の被曝を防護しています。それに対して、日本では「避難指示解除準備区域」は 年間被曝線量20ミリシーベルト以下、「居住制限区域」は年間20~50ミリシーベルト、「帰還困難区域」は 現時点で年間50ミリシーベルト以上」と極めて高い線量を設定しています。このことは、国際的にみても大問題です。日本の市民がチェルノブイリ原発の周辺 の市民よりも放射線に対する抵抗力が何十倍も高いはずがありません。私たちは、政府に対しては、市民の健康を守る施策を緊急に実施することを強く求めま す。
肥田舜太郎名誉会長の発足挨拶「内部被曝の被害と闘うために」(下記)にあるように、当会は、市民と科学者が一体となって、内部被曝を含む被曝問題に積極的に取り組み、子どもたちをはじめとする全国の市民を守るために努力してまいります。
【市民と科学者の内部被曝問題研究会(略称:内部被曝研) 事務局】
http://www.acsir.org/
内部被曝の被害と闘うために
「市民と科学者の内部被曝問題研究会」名誉会長 肥田舜太郎
2011年3月11日の福島第一原子力発電所の事故後、5月初め頃から子どもの症状などを訴える母親からの電話相談が増え、広島、長崎原爆の特に 入市被曝者に多く見られて放射能による初期症状によく似た状況から、私は原発から放出された放射性物質による内部被曝の症状だろうと直感し、その後の経過 に注目してきている。
子どもを持つ母親の放射線被害に対する心配と不安は想像以上に大きく、全国的に広がっている。これに対する政府、東電、関係学者、専門家の姿勢や 発表の内容は、ほとんどが国民の命の危険と生活に対する不安の声に応えるものでなく、原子力発電の持続と増強を求める業界の声に応えるものと受け取らざる をいない実情である。筆者の経験によれば、学習し合い明らかにしなければならない課題は、
① 放射線そのものについて
② 外部被曝、内部被曝の意味
③ 自然放射線に対する人間の持つ免疫能力
④ 人工放射線(核兵器の爆発、原子力発電所で作られる)と人間との関係
⑤ 放射線被曝による被害の治療法はなく、薬も注射も効果はないこと
⑥ 放射線被害に対しては被曝した個人が自分の生命力の力と生活の仕方で病気の発病を予防し、放射線と闘って生きる以外にないこと
⑦ 放射線の出ている原発からできるだけ遠くへ移住し、また放射線で汚染された食物や水を飲んだり食べたりしないことといわれるが、それができる人にはよいことだが、できない人はどうするかが極めて大事なことで、この問題にどう応えるのかが、この問題の最重要課題である。
内部被曝研究会は今でもいろいろな職種の人が集まっていて、医師や弁護士や学者がいれば、肩書きも特殊な技術もない一般職の方々もおられると聞い ている。それらの方々が心と力を合わせて放射線の内部被曝の被害と闘っていく方法や道筋を、話し合い、相談し合って、少しでも有効な方向を見つけ、発信 し、学習し、実践して、今まで人類が経験したことのない課題に立ち向かう出発点に立っている。何もかもが未知の新しい道を歩くのだから、みんな遠慮なく発 言し、みんなで考え、一致したことを確実に行っていくことになる。
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