9日追加です:
ICIJが9日に公表したデターベースの検索は→こちらからどうぞ。
ここで例えば、MItsubishi ,Sumitomo ,Itochu などで検索して、結果の会社名をクリックすれば、脱税天国の疑惑がある会社の名前と所在地が出てきます。
11日追加です:
下記にある7日の「南ドイツ新聞」に掲載されたパナマ文書提供者の声明文をIWJが
同紙の→ネット版の英文から翻訳して掲載されています。こちらです→ 日本語翻訳文
IWJ翻訳チームのみなさまご苦労様でした。とても良い翻訳です。
これは本来ならば、ICIJと協力関係のある共同通信ないしは朝日新聞が、南ドイツ新聞同様にきっちりと全文を紙面化すべきなのですが、どうも腰が引けているようですね。
またまた、しかる筋からの圧力で上の方からブレーキがかかっているのかもしれません。
『南ドイツ新聞』が国際調査報道ジャーナリスト連合/ICIJと共同でパナマ文書の内容の暴露を始めてから、かれこれひと月になります。
以来、世界中に激震が走りましたが、それは余震でしかなく、明日9日(日本時間10日未明)に、いよいよ文書で確認できる世界中のタックスへイヴンの全利用者の実名が公表されることによって、脱税者天国が地獄となる本震の始まりとなりそうです。
これは、以下のように国際金融の歯止めのないグローバル化の結果、世界中で亢進する貧富の拡大のその病根にメスを入れるものですからどこの社会においても対処すべきとてつもなく重要な課題なのです。世界中の人々の生活に直接影響する今世紀の最大の問題なのです。この問題が大金持ちの問題だというのは大間違いで、庶民のだれにも直接かかわる問題なのです。またこれを機に国連機関も加わり、歯止めをかけない限り、近いうちに世界経済は腐敗の極に達して取り返しのつかないことになるのは必至です。
わたしも同紙を講読していますが、毎日の報道に目を通すだけで、この史上最大の暴露であり、このジャーナリズムの挑戦について、深い関心はあっても報告することができませんでした。というのは、そのころわたしはドイツとヨーロッパの難民問題について原稿を執筆中でどだい物理的に余力がなかったからです。
のっけから我田引水となりますが、本日8日に発売された『世界』6月号にその報告が掲載されていますので、関心のある方はお読み下さい。また同号には、合田寛氏の「パナマ文書が浮き彫りにしたオフショア・ヘイブンの秘密世界」という報告も掲載されていますので合わせてお読み下さい。
『世界』2016年6月号271頁 |
同書の表紙と目次だけは、依頼されて仮翻訳したものがありますので、この末尾に添付しておきます。
そこで先週の5月3日に著者の一人と、出版社の編集長がベルリンのドイツ外国人記者協会で記者会見しましたので、わたしも参加して背景の話しを聴き質問もしました。
右が著者フレデリック・オーバーマイヤー氏 Frederik Obermaier l. |
この記者会見の様子は、わたしの隣りに座っていた共同通信のドイツ語堪能な櫻山ベルリン支局長が、わたしの質問への回答も含めて、その場であっというまに記事を書いて送ってしまったので、→日経掲載分から以下それをお借りします。優秀な若者にはじいさんはまったく太刀打ちできませんね。
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安全のために合同取材 パナマ文書入手の記者が会見
【ベルリン=共同】タックスヘイブン(租税回避地)に関する膨大な資料「パナマ文書」を入手した欧州有力紙、南ドイツ新聞の記者フレデリク・オー バーマイヤー氏が3日、ベルリンで記者会見し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)との合同取材を選んだのは「自分たちや家族(の安全)を守るた めだった」と語った。
資料には、麻薬や武器の取引をする者など「記者1人を消すくらいはいとわない」危険な人物が含まれていたため、報道を継続する上でも約400人の記者とデータを共有することにメリットがあったという。
オーバーマイヤー氏は南ドイツ新聞で調査報道を担当。パナマ文書は1977年以降に租税回避地21カ所に設立された法人約21万社に関する書類1150万通に及び「史上最大のリーク」とされる。
社内では、合同取材に反対し、独占的に報道すべきだとの声もあった。オーバーマイヤー氏は「記者は皆、エゴイストだ。自分にとっても重大な決断だったが、 合同取材をしなければこれだけ幅広く調査するのは不可能だった」と振り返った。世界中の記者と資料を共有しながら事前に情報が漏れなかったのは「奇跡だ」 と話した。
南ドイツ新聞によると2014年末、匿名の人物が「私の持っているデータに興味があるか」と同紙に暗号通信で接触。租税回避地の法人設立を代行する中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の資料が提供された。
これを受け南ドイツ新聞が、共同通信も参加するICIJに合同取材を要請、ロシアのプーチン大統領周辺など各国首脳の疑惑報道につながった。約80カ国の報道機関による取材が続いている。
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この記事で「情報が漏れなかったのは奇蹟だ」とあるのは、わたしの質問への回答でした。これに付け加えておくと、秘密保持は奇蹟的に成功したが、公表前から噂はかなり流れていたとのことです。一例として、「公表前に裏取りのために、プーチン大統領のスポークスマンにメールを送ったのは、ほかならぬ私でした。それもありロシア政府筋から噂もでたようで、かなり準備もしていたようです」とオーバーマイヤー氏。また「モスクワのロシア人記者は、公表直後に身の危険もあるので数日間雲隠れした」とのことで、国によっては危険が高いので心配しているとのことです。
さて明日からの実名公表で「本震」が始まり、これは熊本地震ではありませんが、全貌が暴かれるまでに、おそらく数年続くでしょう。それだけ膨大な内容なのです。
ただ、今地獄の奈落を覗いて震え上がっている脱税者への情報として、オーバーマイヤー氏によれば、実名と所在地は公表するが、その根拠であるオリジナルの資料(契約書やパスポートのコピーなど)は一点も公開しないとのことです。理由は、オリジナルを公表すると提供者を特定される危険性があるからだそうです。
ただし、それで安心して言い逃れができると考えるのは甘過ぎます。以下のように提供者が条件さえ満たされれば、直接捜査当局に証拠を提供すると声明を出しているからです。もしそうなれば、偽証罪で追訴されて追徴金だけでは済まなくなりますので、名前が出たら正直に白状した方が賢明です。 その点を警告しておきます。故意であろうとなかろうと脱税は脱税ですから、潔くしたほうが利口です。
わたしも若い頃に「オランダ人『慰安婦』の史料」を暴きましたが、嘘をつくのが国益だと勘違いしている隠蔽体質の日本政府が、それを認めるまで何と20年以上もかかっています。 このブロクでも→こちらと→こちらで報告したとおりです。
さて、この資料の提供者が昨日7日付けで初めて「革命を前に」と題する長文の声明を出しています。これが「南ドイツ新聞」では文芸欄の一面を使って掲載されました。
南ドイツ新聞2016年5月7日 |
→情報提供者が初の声明 「パナマの事務所は無数の法を犯した」 捜査協力と自身の免責を要求
南ドイツ新聞にもドイツの税務当局から情報提供の申し出があったのですが、「情報源秘密の原則と、情報提供者の保護のためその場で断った」とのことです。声明では、「その姿勢はまっとうであるので、提供者を保護するとの条件によってはこちらから提供しよう」とするものです。このような声明も前代未聞です。上記の『世界』6月号の会田寛氏の報告でも、脱税者天国に「集積している資金は2000兆から3000兆円もの巨額に達する」とあります。これは膨張する日本の本年度国家予算の20から30倍もの驚くべき金額です。
この内どれだけが脱税対象になるかは判りませんが、いずれにせよきっちりと課税されて、その税収がまともに配分されたなら、現在世界中で急速に進んでいる極端な貧富の差とそれによる社会危機の解消に大きく役立つことは間違いありません。情報提供者のモチーフ/動機もそこにあると声明で述べていることを付け加えておきます。
会田氏も、今月末の伊勢志摩サミットで、新しい国際ルールを構築することを求めています。議長国の日本の安倍首相が、本気でこれを議題として取り上げるとはおもえないのですが、注目しましょう。キャメロン首相も追いつめられて父親の天国利用を認めざるを得なかったようなありさまですから、心もとないこと甚だしいのが現実でしょう。
さてドイツでベストセラーとなっている『パナマ文書』ですが、記者会見で配布された版元の出版社の資料がこれです。
英文ですのでクリックして拡大してお読み下さい。これによると記者会見当日までに、世界中の12カ国の出版社が翻訳権を取得しており、日本では角川書店から出版されるとのことです。イタリアとオランダではすでに翻訳も終わっており、今月16日には発売されるとあります。アジアでは日本と韓国と台湾での翻訳が決まっています。
上記写真の左の編集長が記者会見の後での立ち話で「角川とはどんな会社か」と聴くので、「大手のひとつです」とだけ答えておきました。彼によると日本からは6社が入札に参加したそうで、落札の金額を聴くと「それこそ企業秘密だよ」と笑っていました。良い翻訳がされることを願っています。
なにしろ、この史上最大の暴露にいたる舞台裏の実情を知るには必読書です。当事者でなければ判らない小説より奇なるドキュメントです。一気に読めます。
以下が、わたしによる本書の表紙と目次の追字の仮翻訳です。
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Bastian Obermayer | Frederik Obermaier
バスチアン・オーバーマイヤー、フレデリック・オーバーマイヤー
(訳中:この二人の著者の姓は綴りが異なっても発音は同じで、南ドイツ新聞の同僚記者。バスチアンに最初のコンタクトがあった)
Panama Papers
パナマ文書
Die Geschichte einer weltweiten Enthüllung
ある世界規模の暴露の物語
【いかにして私たちは首相たち、独裁者たち、国際サッカー連名の役員たち、コンツェルン統率者たちと超富裕者たちの隠された大金を見つけだしたのかーそしてプーチンの側近の秘密の資金も】
Inhalt目次
Prolog 前書き7
1. Start 発端17
2.Wladimir
Putins rätselhafter Freund ウラジミール・プーチンの謎の友人24
3.Schatten der
Vergangenheit 過去の陰32
4.Die Lügen
der Commerzbank コメルツ銀行の嘘45
5.Syriens
Krieg und Mossack Fonsecas Beitrag シリアの戦争とモサックフォンセカの貢献56
6.Von der
Waffen-S S zur C I A nach Panama 武装親衛隊からCIAに向かってパナマへ76
7.Der
geheimnisvolle Agent 秘密に満ちたエージェント91
8.Die Spur
nach Nyon(スイスの)ニヨンへの手がかり107
9.Vom Fischen
und Finden und von ganz großer Kunst 漁と発見そして非常に偉大な芸術作品114
10.
Das Weiße
Haus im Rücken ホワイトハウスを背後に121
11.
Wie die
Funken sprühen火花が飛び散るように 129
12.
Angst und
Ängste恐怖と多くの恐怖 139
13.
Die
Siemens-Millionen シーメンスの百万ドル148
14.
Helfer und
Komplizen 援助者と共犯者159
15.
Geheimtreffen
mit Alpenblick アルプスを標榜する秘密会合172
16.
Die Kanzlei
des Bösen 悪の弁護士事務所182
17.
Spirit of
Panama パナマの精神193
18.
Die Welt ist
nicht genug 世界は十分ではない198
19.
Die
Ausbeutungsmaschine 搾取の機構207
20.
Geheime
Treffen im Komitèrom (リリハンマー/ノルエーの)「委員会の部屋」での秘密会合223
21.
In der
Gewalt der Monster 化け物の暴力の中で231
22.
Der rote
Adel 赤い貴族237
23.
Die
Gasprinzessin und der Schokoladenkönig ガスの王女とチョコレートの王様247
24.
Deutschland,
deine Banken ドイツとその銀行257
25.
Der Beutezug
der Finanzwikinger 金融バイキングの盗賊行267
26.
Spuren ins
Nichts 無への痕跡276
27.
Bund der
Ehe, Bund des Geldes 婚姻の結束、金の結束283
28.
Star, Star,
Mega Star スター、スター、メガスター294
29.
Der vierte
Mann und die FIFA 第四の男と国際サッカー連盟299
30.
Die 99 % und
die Zukunft der Steueroasen 99%と税金(脱税)オアシスの未来308
Epilog後書き 319
Dank謝辞 332
Glossar 語彙注釈335
Anmerkungen 脚注339
日本からの5月10日以降の情報があまりに少ないので、遂に自分でICIJのOffshore Leaks Databeseに接続し、検索してしまいました。意外と簡単に出来るのでびっくり。特に「Japan」と国を限定しなければ、いろいろ出てきます。気になったこと。Secomの創設者で現在取締役最高顧問、首相の長く深い友人で富豪のIida氏の名が、「Lida」でデータベースに登録されていること。思わずICIJにEメールで直して下さいとお願いしたのですが、さて、実行されるか。話変わりますが、首相は26日のSummit開催前に、伊勢神宮にG7を案内するそうです。1945年8月15日に「天皇に裏切られた」と絶望、空襲と児童疎開と戦前戦後の飢えに苦しむ幼少時代を送った母を持ついち日本人として、やりきれない思いです。メルケル氏にこの気持ち伝えたい。
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