2011年9月21日水曜日

33の補足:ベルリン選挙で得票数の計算間違いか/赤緑連立成立危うし/追加「連立協定」について

第33で報告しましたように、18日のベルリン議会選挙の結果、赤緑の連立政権が成立の可能性が強いと報告しましたが、今夕の報道によると、リヒテンベルク区のひとつの投票所での票集計の計算間違いで社会民主党が1議席失い左翼党1議席増える可能性が出たとのことです。
もしそうなれば、赤緑連立は過半数プラス1議席となり、これでは非常に不安定な連立となるため、連立交渉の行方は混沌となりそうです。安定した赤黒の大連立となり緑の党は野党になる可能性があります。

ドイツの選挙制度は(1)政党を選ぶ比例代表制と(2)個人候補者を選ぶ複合制度になっているため、かなり複雑で 、過剰議席追加制度で最終議席数が選挙のたびに変わり、わずかな得票集計の間違いが全体の力関係に大きな影響を与えることが、希なケースですがあります。この場合もそうなる可能性が出た疑いがあります。
下手すれば、昨日の暫定集計結果が修正され、最終集計結果がでる10月6日まで公式な結果が分からないというとんでもない事態になる可能性もあります。

しかし、これも予期せぬ海賊党の大躍進がもたらすカオス/大混乱とも言えないことはありません。
昨日、緑の党のトリッティン氏は「次の総選挙で海賊党が連邦議会に進出すれば、赤緑連立が不可能になり、大連立の可能性しかなくなるかもしれない」と警告していますが、まさにその懸念がベルリンですでに現実となったのかもしれません。

いやはや、若者の海賊党恐るべし。しかし面白い! さてどうなるか?

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22日の追伸です。上記のように選挙の暫定最終集計が公式に発表された翌日になって、集計に間違いがあったことがわかり、それによって議席配分が変わるというのは、ベルリンの選挙ではこれまでなかったようです。大半のメディアでは、すでに最終議席配分が以下のようになると報道されています:

社会民主党:47、キリスト教民主同盟:39、緑の党;29、左翼党:20、海賊党:15。

この結果では全議席は149(過半数75)、赤緑連立では76、赤黒連立では86となります。
おそらく、ほぼ間違いなく最終的にはこうなるでしょうが、しかしこれはまだ公式には確定していません。
公式のベルリンの選挙管理委員会の暫定最終集計では、わたしが当日に報告したとおりの別の結果(第33の報告)が掲載されておりまだ変更されていません:
http://www.wahlen-berlin.de/home.asp
http://www.wahlen-berlin.de/wahlen/BE2011/Ergebnis/mandateah/mandateah.asp?sel1=1052&sel2=0670

困ったものです。これに加えて、昨日は西ベルリンの住宅街のゴミ箱から、379通もの記入され郵送された不在者投票の封筒が発見され、大騒ぎになり警察が捜査を始めています。
この選挙区ではこのぐらいの票では議席配分に変化は無いと選管が述べていますが、これも困ったものです。 選管の最終的公式結果は10月6日の発表となるとのことです。

さて、政党の方はこんなごたごたをよそ目に
最初の赤緑の連立の予備会談を終えて。9月21日ベルリン市役所,写真DPA
来るべき連立交渉の予備会談に入っています。ドイツでの選挙後の政党間の連立交渉はドイツ人らしくなかなか、メリハリの利いたもので定式化しています。戦後になっても政党政治が定着できなかった日本との違いがこんなところに顕著に出ていますので、少し詳しく書いておきましょう(日本の陣笠国会議員諸氏の参考にもなるでしょうから)。

連立協定/Koalitionsvertrag はいかにしてできるか

一般的には、まづは第一党が可能性が高いと判断した連立候補の党の親玉を呼び、正式な連立協議に入ることができるか否かを確かめるための政策についての予備会談をします。
社民党のヴォヴェライト市長は21日にまず緑の党のキュナスト氏らを市役所に呼び、最初の話し合いを行いました。ベルリンの両党のトップ各5名だけが会談に参加しています。面白いのは、この話し合いには各党のスポークスマンは外されます。具体的な内容が外に漏れる、とりわけありうる連立相手の他党に漏れるのを防ぐためです。
写真は予定されていた2時間を越えて、昼飯の「ジャガイモスープ」をはさんで4時間後に出てきた短い記者会見で、話し合いの「印象」を語るヴォヴェライト市長とキュナスト氏です。両者とも「非常に良い雰囲気で、具体的な話し合いができ、満足している」と述べ、両党の最大の争点となっている市内のアウトバーン建設などについての「具体的」話し合いの内容は一切述べません。
メディアの印象は全般に「過半数ギリギリだが、雰囲気としては赤緑の本格的な連立交渉が始まりそうだ」というものです。

これに続き、本日22日には市長はキリスト教民主同盟(CDU)のヘンケル氏を招き話し合いをしました。これは予定通りの2時間で終わり、したがってジャガイモスープも出なかったようです。両者とも「お互いの一致点と違いがはっきりした」と述べているだけです。
しかも緑の党とは明日の金曜日に第二回目の前交渉をすることになっていますが、CDUとはその予定がないとのことです。
したがって、明日の緑の党との再度の予備会談が順調であれば、社会民主党は来週月曜日に緑の党と正式な連立協議にはいることを決定するであろうというのが、いまのところの大方の見方です。

その上で、正式な連立交渉が始まれば、今度は各党の政策分野の専門党員が入れ替わり立ち代わり大勢参加して、財政、教育、交通といった各分野の具体的な政策を協議し連立政策を練り上げます。
このようにして、最終的には「連立政策協定書」を作成し、それに両党トップが署名してようやく、新政権が成立し議会が招集されます。
このような連立政党政治の手順を踏むため、選挙後に新政権が正式に発足するまでには、州政府段階では最低ひと月、連邦政府段階では2ヶ月かかるのが普通です。
この連立政策協定書というのは、いわば「連立政権のマニフェスト」とも言えるものです。昨年、日本に滞在していた時に与党民主党の国会議員のみなさんと話す機会があったのですが、「民主党のマニフェストなどは、ドイツの連邦政権の連立協定の目次だけのようなものですよ」と申し上げておきましたが、これは誇張でもなんでもない事実です。名目だけでなく実施する内実があるのです。それでも実行が難しいのが民主主義政治体制の現実です。

ちなみに最近のいくつかの連立協定を簡単に紹介しておきましょう。

現在のベルリン市政府の社会民主党と左翼党の2006年の連立協定です:
http://www.berlin.de/rbmskzl/koalitionsvereinbarung/
 21項目に渡り詳しく取り決められており、PDFでは86頁あります。

次に現在の連邦政府のキリスト教民主/社会同盟と自由民主党の2009年の連立協定です:
http://www.cdu.de/portal2009/29145.htm
約130頁あります。メルケル党首らの署名のある現物の写真を挙げておきます。

大作は2005年秋に成立した連邦政府の大連立のそれですが、これは約二ヶ月かかり約190頁もありました。二国間国際条約のようなものです。

現ドイツ連邦政府の連立協定正本2009年10月、連邦政府のホームページより

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