Der Spiegel Online |
同州はメルケル首相の選挙区もあり、彼女は7回も応援演説に駆けつけたのですが、同党はご覧のとおり前回の2006年より5%以上減らし、SPDが同程度増加しています。
また緑の党は同州では今回初めて5%条項を突破して初めて議席を獲得しました。緑の党は伝統的に旧東独の州では弱体でしたが、これによって全国の州議会に議席を確保しました。もちろんこれは同党の原発撤退政策が追い風になっています。
残念なのは、ネオナチの党である国家民主党/NPDが得票を減らしつつも議席を確保したことです。同党はこれで旧東独のザクセン州とともに州議会で議席を確保することに成功しています。もし同党が議席を失えば、社会民主党と緑の党の連立政権が可能であったとされていました。とはいえ、緑の党の議会進出で、脱原発後の政策として同州でも再生可能エネルギー政策が、これまで以上に促進されることは間違いありません。
社会民主党は明日から、CDUと左派党/Linkeと連立の話し合いに入ります。
ところで、この選挙でも連邦与党の自由民主党が前回の10%近くから3%を切って惨敗し議会から消えたことが連邦与党に大きなショックを与えています。2週間後のベルリンの州選挙でも同党は5%以下と予想されていますので、結果によってはメルケル政権は、世界経済の急速な悪化もあり、2013年の総選挙を待たず、崩壊の危機に立たされる可能性もあります。
メルケル首相の脱原発への決断は社会全体としては評価が高いのですが、自党内で落胆が大きく内輪もめが進んでおり、またドイツ戦後史で大きな役割を果たして来た自由民主党は、原発促進では最右翼であり、ネオリベラルの経済政策を主張し続けたため、ドイツのリベラリズムの地位を緑の党にほぼ完全に奪われ、急速に政治舞台から消え去ろうとしています。
原発促進にしがみつく政党は、いずれ市民から厳しい判断をくだされる運命になることの実例だといえます。フクシマを体験している日本でもそうなるでしょう。日本の民主党と自民党も当然ですが、このドイツの政情を教訓とすべきです。 生き残りたければ原発からはっきりと絶縁すべきです。
ドイツのメディアでは、いずれにせよ次期の連邦政権は社会民主党と緑の党の連立となることが、まるで既成事実であるかのような論調です。今年中に決められるであろう社会民主党の首相候補に誰がなるかが、目下の政治記者たちの注目の的です。
9月18日のベルリン特別州の議会選挙でも緑の党の躍進は間違いありませんが、昨年の秋に予測された緑の党の政権奪取は無理なようです。一時期、世論調査で緑の党が社会民主党を上回り30%台に乗ったのですが、ここに来て20%ほどに落ちています。大きな理由は市長候補の人気の差です。もう2期の10年もやっている社会民主党のヴォーヴェライト市長の人気が強いのです。緑の党のキュナスト候補は大物ですが、選挙戦術で中道路線をとり過ぎて失敗しています。その隙をついて、インターネットの自由を主張する若者たちの「海賊党/Piratenpartei」という、まさにベルリンらしい急進リベラルの政党が5%を獲得するのではないかとの予想もあります。緑の党の中道化に飽き足らない若者が支持しています。
おそらくベルリンの州議会選挙結果は社会民主党と緑の党の連立でしょう。ついでですから、ベルリンの顔を紹介しておきましょう。
ヴォヴェライト市長8月4日記者会見で |
まずは社会民主党左派のベテラン市長クラウス・ヴォヴェライト氏です。彼は10年前に初めて市長候補になった際、「わたしはホモセクシャルです。これは良いことだ」とカムアウトしましたが、この言葉が評判になり、今でも人気抜群です(当時「週刊金曜日」に報告したことがあります)。
この日の外国人特派員との記者会見でも、人気の秘密を聴かれて「クラウスはベルリンに合うのでしょうね」と余裕たっぷり。社民党の赤のネクタイではなく、ピンクのネクタイがよく似合っていました。
わたしは「外国人居住者にも地方選挙権は与えるべき」と質問ではなく要求をしましたが、「よく判っています。次期には実現の努力をします」と返事がありました。
まあ、ベルリンの姉妹都市である東京都知事の誰かさんとは、まったく別世界の政治家ですね。
キュナスト氏とクレッチュマン首相8月19日 |
日本でも報道されたバーデン・ヴルテンベルク州の首相となったクレッチュマン氏が、ちょうど権力掌握100日目となった8月19日に、連邦記者会議の招待で緑の党のベルリン市長候補のレナーテ・キュナスト連邦議会共同総務との共同記者会見に望みました。これが、キュナスト氏には失敗でした。ケレッチュマン首相の人気が大き過ぎ、あやかろうとしたのが逆効果になったのです。
彼女には気の毒なことでしたが、大勢の記者のなかで、わたしがクレッチュマン首相に脱原発の質問をした際に、「あなたは日本では、いまやメルケル首相についで良く知られたドイツの政治家です」と冒頭に述べたことが、翌日の新聞に大きく採り上げられてしまったのです。 クレッチュマン氏の地元の保守紙までが「遠い日本の記者までが、地方州の政治を注目しているとは、疑いなく特別のことだ」と書いたのです。実際に彼の人気は地元でうなぎ上りです。ハンデルスブラット(全国経済紙)はわたしの名前までも挙げて「クレッチュマンが大喜び」と書きました。(記事は下記)
おまけ、昨日散歩がてら近くの子どもたちのお祭りに出かけたついでのスナップです。「海賊党」の選挙ポスターのひとつです。 もしこの党が議席を獲得すれば、大きなニュースになるでしょう。若者のインターネット政党が政界に進出するのは、世界でも初めてのことだろうからです。
(訂正:と書きましたら、海賊党はスエーデンで2006年に発足し、同国の国会では議席は得ていませんが、2009年の欧州議会選挙で7%を得て、1議席を確保しています。ですから世界初は欧州議会です。訂正します:
http://de.wikipedia.org/wiki/Piratpartiet)
http://sv.wikipedia.org/wiki/Piratpartiet
(追加)またシュピーゲル誌電子版は最新の記事で、緑の党のキュナスト氏が「もし海賊党が議席を得れば、議会での協力もあり得る」と述べたとのことです。つまり、どうやら議会進出は現実的なようです。
5%とれば7議席は確保できるとのことです。同記事では候補者の写真も多く見られます:
http://www.spiegel.de/politik/deutschland/0,1518,784334,00.html
もしそうなったら、彼らに訴えて大沼安史氏をネット攻撃する連中に反撃してもらうことにします。
大沼さん、期待して下さい。
(追加)上記の8月19日の記者会見の報道:
Stuttgarter Zeitung
http://www.stuttgarter-zeitung.de/inhalt.die-gruenen-kuenast-holt-sich-tipps-bei-kretschmann.efb3657c-0c51-4873-b47f-14a3507bf2f9.html Handelsblatt
http://www.handelsblatt.com/politik/deutschland/kretschmann-festspiele-im-laendle-berlin-und-japan/4521294.html
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