なぜ人気があるかといえば、日本の浮世絵は、特に北斎は19世紀から20世紀にかけてヨーロッパの印象派や表現主義、つまり近代絵画に非常に大きな影響を与えたというよく知られた事実があるからです。これには、北斎もまた進取の気性のあるひとで、オランダから長崎経由で入ってきた「眼鏡絵」の手法を取り入れており、それらの作品を、目利きのシーボルトが蒐集してヨーロッパに紹介したというグローバルな文化交流の背景があります。
挨拶するヴルフ大統領8月25日 |
ドイツ紙の中には、画例集『北斎漫画』を「マンガの歴史」だと書いたりもしましたので、日本の漫画ファンも押し寄せるという効果ももっているようです。開会式の挨拶でヴルフ大統領も「亀の親子の遊ぶ絵などは子供も喜ぶでしょう」と述べたものです。
ただ残念ながら期間は10月24日までで、しかもベルリンのみで終わりますので、ベルリンへいらっしゃる機会のある方は是非ご覧ください。もちろん専門家はアメリカからもやってきているとのことです。ドイツ語のカタログはドイツでのこのての絵画展にふさわしい内容の充実した立派なものです:
http://www.berlinerfestspiele.de/de/aktuell/festivals/11_gropiusbau/mgb_start.php
「神奈川沖波裏」中央ドイツ新聞8月26日、写真:DAPD |
この写真は、開会式当日世界的にも有名な「富岳三六景」のひとつを凝視している筆者をドイツの通信社のカメラマンが撮ったものです。それをある新聞が掲載したのです。ドイツ人の美人が見ている写真でも使えばよいのに、日本人の鼻眼鏡の爺さんの写真とは、いささか興ざめですが、実はわたしは撮られていることも気づかないほど熱心に見ていたのです。
何をそんなに注視しているかといえばこの版画にも北斎がたっぷり使った青の色彩のオリジナルをここぞとばかり観たのです。
北斎「富岳三六景・甲州かじか沢」写真提供:東京都墨田区 |
実は、彼も記者会見で述べたことですが、たっぷり使われているこの作品の青の絵の具/染料は、生粋のベルリン生まれなのです。そのことを北斎が知っていたかどうかはわかりませんが、ドイツでは「ベルリンの青/Berliner Blau」と呼ばれている絵の具を江戸でつかった美術品が、いわば里帰りした展示会でもあるのです。しかもこのベルリーナブラウが、フクシマの汚染の防御と処理に直接大きな役割を果たすかも知れないのです。
(長くなるので「続きは次のお楽しみ」にしてください)
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