2011年9月19日月曜日

33:ベルリン州選挙で海賊党が議席乗っ取り、自民党惨敗で赤緑政権へ/海賊党について追加あり

本日(9月18日)行われたベルリン特別市(州のステータス)の議会選挙の投票締め切り後の出口調査の各政党の得票率の第1報から次のとおり伝えます。暫定確定率がでるまで順次書き入れます:
 なお、数値はARD(ドイツ公共第一放送)とZDF(同第二放送)発表のものを使います。
( )内は前回2006年の得票率%

*18時予測(ARD) *19時集計(ZDF)*24時43分暫定最終得票率*暫定獲得議席数

社会民主党
SPD    29、5  28、6      28、3(30、8)    48

キリスト教民主同盟
CDU       23、5  23、1      23、4(21、3)    39

緑の党
GRÜNE  18.0  17、9      17、6(13、1)    30

左翼党
LINKE   11、5  11、5      11、7(13、4)    20

自由民主党
FDP     2.0   2.0       1、8(7、6)      0  

海賊党
PRATEN   8、5   8、9       8、9(前回0、0)   15

その他    7.0   8、0       8、3
ーーーーーーーーーーーー全議席数152(149定数+3過剰議席)/過半数76
コメント:
*まずの大ニュースは海賊党がドイツの州選挙で一挙に議席を獲得したことです。
緑の党は前回に比べて大きく伸びていますが、明らかに急進リベラルの海賊党に
票を盗られています。もうひとつは連邦政府の連立与党の自由民主党が惨敗し
議席を失ったことが確定したことです。
これで、連邦のメルケル政権は非常に危うくなります。金融危機に面して、野党の支持する
少数政権になる可能性が現実的になるでしょう。(18時書き入れ)

 *今回の選挙は多くの集計予測でも開票から1時間でほぼ固まってきました。
先の第27で予測したように、おそらく社会民主党と緑の党の連立政権になると思われます。
いずれにせよこれまでの社会民主党と左翼党の連立は不可能です。社会民主党には緑の党とキリスト教民主同盟とのふたつの連立の選択肢がありますが、政策の一致点などから緑の党との連立を選択する可能性が大きいでしょう。赤緑のどちらの党員と支持者の多数もそれを望んでいます。
19時段階の得票率では全149議席の内で赤が47、緑が30の議席を獲得し合計で77議席で過半数の75議席を越えています。

さて、海賊党は14あるいは15議席を獲得しそうです。これは彼らが提出している候補者リストが15人ですので、全員当選の可能性もあります。いきなり9%というのは当事者自身が予測していない大躍進で、公共放送までが「海賊が議会を乗っ取り」とやっています。これは世界的なニュースとなるでしょう。民放などは「海賊が首都を乗っ取り」ですからね。

惨めなのは原発維持と新自由主義経済にしがみつき、ここ数日はポピュリズムでメルケル首相のギリシャの金融危機援助に公然と反対した自由民主党です。2%以下というのは歴史的惨敗というよりも、おそらくネオナチ党以下でしょうから、もはや政党としての存在価値を失ったとも言えます。メルケル政権はこの結果を受けて大きな試練に立ちます。自由民主党との連立を解消し、社会民主党との暫定大連立、あるいは野党の支持をとった少数政権として議会で政策毎に多数を確保し、その上で2013年の総選挙を前倒しにする可能性も現実味を帯びてきました。(19時30分書き込み)

*夜中過ぎて暫定得票率がでました。ごらんのように赤緑の連立は過半数をわずかに1議席を上回る76議席だけです。赤黒の大連立では86議席で安定していますが、明日からの連立協議の結果、全体の利害関係からして、おそらく赤緑の連立となるというのが、大方の見方です。(25時半書き込み)

ーーーーーーーーーーーー
一夜明けて、新聞のひとこま漫画です。
わが愛するベルリンの漫画家Sakuraiさんの 今日の作品、ベルリーナーツァイトング紙
タイトルは「船上に新人登場」。ヴォヴェライト市長:「おれは船長のままだ。他のことはどうでもいい」。後ろで緑の党の市長候補のキュナストさんが、ラップトップを肩に乗り込んで来た海賊に蹴飛ばされている。ベルリン丸船上。
Berliner Zeitung 19.9.2011 -Heiko Sakurai
 今回いきなり9%もの得票率で15議席を獲得した海賊党は、1979年の西ベルリンの選挙でキュナストさんらの緑の党(当時はまだ「アルタナティヴリステ」と名乗っていた)が登場したときのことを、ベルリン子に思い出させています。この時は、全体で3、7%の得票率で市議会には議席は取れませんでしたが、区議会では議席を獲得し、これがそれまで議会外野党の68年世代が議会に進出する嚆矢となりました。海賊党の党員はベルリンでは約1000人、平均年齢は31歳。全国で12000人、平均年齢29歳であるとのことです。つまりそれから32年後の今、まさに68年世代の子供の世代が親を蹴飛ばして登場した様子をこの漫画はみごとに捉えています。
今回の海賊党はいきなり市議会に殴り込んだので当時よりも驚きは大きいのですが、当時と雰囲気がよく似ています。ただインターネット世代ですので当時より動きが速いのです。これでおそらく次の総選挙では連邦議会進出も現実的になって来ました。2009年の総選挙では全国で2%を獲得しています。

余談ですが、昨日ちょうどこれを書いている時に、たまたま海賊党の若者と同い年ほどの大学生の息子が現れ、テレビでの報道を観ながら「面白い、卒業したら就職しないで海賊党に入ろうか」なんぞと言っておりました。

今回の海賊党が支持層以外の他党からかっぱらった72000票はどこからのものかと言えば、緑の党から16000、社会民主党から13000、左翼党から12000、そして前回の棄権票から21000も獲得していると分析されています。
悪天候にもかかわらず投票率が少し上がったのも海賊党のおかげが大きかったようです。いずれにせよ注目すべきことです。ドイツで新しいことが起こるのは、まずはベルリンから始まるのです。

なお、昨晩の結果を受けての海賊党と自由民主党の対照的な雰囲気の写真がシュピーゲル誌の電子版で観ることができます:
http://www.spiegel.de/fotostrecke/fotostrecke-72991.html

シュピーゲル誌も「一体こいつら何ものだ」と報道を始めています。
ここでは普通はあり得ないことですが15人の当選したそれぞれを写真で紹介しています:
http://www.spiegel.de/politik/deutschland/0,1518,787001,00.html

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