去る3月15日の早朝、菅直人首相が東電が「福島第一原発から撤退したい」との情報を得て激怒し、東電本社に乗り込んで同社内に政府と東京電力の統合本部を設置したことは当時広く報道されました。
東京新聞は9月6日の菅直人氏とのインタビューで、この日のことを聴いています。ようやく緊迫した当時の舞台裏が本人の口から語られたわけです(下記2)。
これに続いて同紙は今日9月9日の朝刊に、この日の東電での首相訓示の全文を入手したと報道、電子版でこのように伝えています:
(1)命懸けて。逃げても逃げ切れぬ 前首相の東電訓示
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2011090902000035.html
ところが、電子版では肝心の「訓示全文」が読めませんので、この記事と併せて掲載されている全文を、長いものではないので、世界中で読んでいただくためにそのままを書き写しておきます。東京新聞のご協力に感謝いたします。
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*前首相訓示全文
今回のことの重大性は皆さんが一番分っていると思う。政府と東電がリアルタイムで対策を打つ必要がある。私が本部長、海江田大臣と清水社長が副本部長ということになった。
これは2号機だけの話ではない。2号機を放棄すれば、1号機、3号機、4号機から6号機。さらに福島第二のサイト、これらはどうなってしまうのか。これらを放棄した場合、何ヶ月後かにはすべての原発、核廃棄物が崩壊して、放射能を発することになる。チェルノブイリの二〜三倍のものが十基、二十基と合わさる。日本の国が成立しなくなる。
何としても、命懸けでこの状況を押さえ込まない限りは、撤退して黙って見過ごすことはできない。そんなことをすれば、外国が「自分たちがやる」と言い出しかねない。皆さんが当事者です。命を懸けて下さい。逃げても逃げ切れない。情報伝達が遅いし、不正確だ。しかも間違っている。皆さん、萎縮しないでくれ。必要な情報を上げてくれ。
目の前のこととともに、五時間先、十時間先、一日先、一週間先を読み行動することが大事だ。金がいくらかかっても構わない。東電がやるしかない。日本がつぶれるかもしれない時に、撤退はあり得ない。会長、社長も覚悟を決めてくれ。六十歳以上が現地に行けばよい。自分はその覚悟でやる。撤退はあり得ない。撤退したら東電は必ずつぶれる。
(東京新聞2011年9月9日朝刊掲載)
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この資料のソースは当然明らかにされていませんが、おそらくは菅総理の官房でしょう。東電がだすわけがないからです。であれば、これは公式な一次資料となります。
この訓示から伺えるように、この時点で東電が福島第一を放棄撤退していたら、菅直人首相の危惧は現実のものとなったに違いありません。すなわち首相は東電の会長以下を叱り上げて、日本を危急存亡の危機から、間一髪で救ったことになります。また世界を未曾有の放射能汚染から守ったことになります。本物の政治家としての立派な行動ですから、やがて世界も注目するでしょう。 これはとてつもなく重要なことです。よって記録しておきます。戦後史の節目として記録される資料として貴重でしょう。
この記事に先立つインタヴュー:
(2) 首都圏壊滅の危機感 菅前首相に聞く/東京新聞9月6日
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011090690070913.html
またこの日のことについては昨日、読売新聞がこれを裏付ける、もう1人の当事者である枝野幸男前官房長官の言葉として「『菅内閣への評価はいろいろあり得るが、あの瞬間はあの人が首相で良かった』と評価した。」と伝えて、首相の行動を裏付けています:
(3)前首相の東電乗り込み、危急存亡の理由が・読売新聞/9月8日
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110907-OYT1T01246.htm
なを、この件とは別ですが、本日の毎日新聞の以下の記事も優れたものです。
特に小出氏の専門家としての現状認識は重要ですので挙げておきます:
福島第1原発:収束いまだ見えず 事故から半年/毎日新聞9月9日
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/nuclear/news/20110909k0000m040164000c.html
福島第1原発:京都大原子炉実験所・小出裕章助教に聞く/毎日新聞9月9日
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110909k0000m040167000c.html
(15日追加です)上記の訓示全文掲載分の新聞のオリジナルがようやくベルリンにも着きましたので、その写真を追加しておきます:
東京新聞2011年9月9日朝刊2面より |
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