2012年7月18日水曜日

101:反原発大デモと海開き/ドイツで報道された7月16日の日本市民のふたつの姿

昨日7月16日に日本で起こったことのドイツでの報道は、東京での反原発のこれまで最大の集会とデモ、それに福島県勿来(なこそ)の海開きについてです。

例えば、シュピーゲル誌電子版は早々と16日夜には→「数万の日本人が反原発デモ」とロイター配信の代々木公園の空撮と参加者のインタヴューの動画に、通信社の7枚の写真を加えて、「主催者は10万人を目標にしていたのだが20万人も集まった。最初の再稼働以来反原発運動が盛り上がっている」と伝えました。
この20万人という数字は、同日夜のZDF公共第2テレビのニュースでも挙げていました。

さらに同誌は、本日17日に→「フクシマで最初の海開き」として、いわき市勿来の海開きとデモの写真を添え、「いわき市のスポークスマンは浜辺の海水の線量は0、08マイクロシーベルト/毎時で心配は無いと述べた。これは昨年のハンブルクで測定された許容限度である。キールの海洋研究所は太平洋の汚染度は希釈されて、すでに26年前のチェルノブイリ事故で汚染されたバルト海よりも低いと発表している。ところが放射線値は場所により非常に高く測定が難しいし、また専門家はフクシマ原発はコントロール下になく冷却プールが地震などで破壊されれば制御不能な核連鎖反応が起こると警告している」としています。
(「海水の線量」とありますが、これは空中線量の間違いでしょう=梶村)

そこでこの二つの報道の写真を7月16日の日本の姿として、それぞれ一枚借用します。
さよなら原発集会 2012年7月16日 東京代々木公園 写真AP
いわき市勿来の海開き 7月16日 写真AP-Kyodo News
この同じ日の写真が、現在の日本の原発を巡る対称的な日本市民のふたつの姿として世界中に伝えられているわけです。代々木では、年配の人々が「子どもを守ろう」とプラカードを掲げ、同時刻には、福島第一原発から60数キロの勿来の海岸では若い人たちが幼児と海水浴を楽しんでいます。

さてわたしのコメントです。
日本での報道からこの海岸の放射線量をさがしましたが、朝日新聞は「 海水の調査で放射性物質は検出されず、8月12日までの期間中、1日2回、放射線量の測定値が掲示される 」と報じ、NHKは「 福島県が放射線量を測定したところ1時間当たり空間線量が006から007マイクロシーベルトで水質も含めて健康に問題がないレベルだとしています 」としています。

朝日新聞は海水には「放射線物質が検出されない」としていますが、「検出されない」とは「無い」ことではありません。測定の方法、あるいは測定機器に問題があることは十分考えられます。NHKはもう少し慎重で「水質は健康に問題がないレベル」と、低線量であることを示唆しています。

そこで見たところ、唯一海水の線量に具体的に触れているのは→河北新報で、「 勿来海水浴場は今夏県内で営業する唯一海水浴場いわき市南端に位置し福島第1原発からは約65キロ離れている県が6月に行った検査では海水放射性物質濃度は1キログラム当たり1ベクレル以下で砂浜表面空間線量は毎時007マイクロシーベルトだった」と具体的に空間線量と海水線量を挙げています。

さて、砂浜表面の毎時0.07マイクロシーベルトはまったく懸念の必要がありません。問題は「海水放射性物質濃度は1キログラム当たり1ベクレル以下」です。これは4月に改正された飲料水の基準値10ベクレルの10分の1以下だから問題はないとの見方です。

「海水1キログラム」というのはおよそ「海水1000CC=1リットル」のことです。それが「1ベクレル以下」ということは、海水1立方メートルでは重さがおよそ1000キログラム=1トン ですから「1000ベクレル以下」ということになります。
そこで、前回の→キール海洋研究所のシュミレーションをご覧ください。そこでは単位を「立方メートル」にしています。

このシュミレーションでは現在の福島沿岸は確かに、北海道太平洋岸よりも黒潮のおかげで汚染度が低いことが予測されていますが、1000ベクレル/立法メートルというのは、あまり気持ちの良い線量ではありません。これは、来年の秋にハワイ諸島、それから数年後の北米西海岸に汚染海水が到達する時の値は、10から20ベクレル/立方メートルとの予測です。その50から100倍ほどの値なのです。
それに加えて、福島第一原発からの風向きやホットスポットも含めて、やはり感受性の非常に強い幼児(下記の注を参照)のここでの海水浴は、できるだけ避けた方が良いでしょう。

長期予測によれば、数年後には日本の海岸全体が太平洋を還流してくるセシウムによって 、さらに汚染度が高くなるとされています。長期的な十分な対策が必要でしょう。

以前に紹介しましたように、ドイツの反原発運動が予言していた→「原子力経済=親父は金持ち、息子は貧乏、孫は早死に」の第二段階までが日本では現実になっており、今は最後の孫の早死にを防ぐことに日本社会は全力を挙げる時期なのです。

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7月18日追加です。

本日の東京新聞の報道→「 事故なら漁業全滅 茨城・漁連 原電に再稼働中止要請によれば、 「 県内では十七日現在一キログラム当たり一〇〇ベクレル基準値を超えて出荷が規制されている魚が十一種同五〇一〇〇ベクレルで漁連が販売を自粛している魚が十二種ある」とのことです。
これが、茨城県の沿岸の汚染の実情のようです。子どもを魚のようにしてはいけませんね。

(上記の注)最近日本も訪問され各地で講演されたバーゼル大学医学部教授のミッシェル・フェルネックス医師は昨年11月のフクシマでの被曝を懸念した→緊急提案で次のように書いています:
 
細胞分裂の早い成長期の子供は、成人に比べて千倍も放射能の影響を受けやすい。妊娠八週以内の胎芽が死亡するリスクもある。すなわち早期流産である。86年のチェルノブイリ事故前の統計と比較すると、事故後、女児新生児の5%が死亡している。(小川万里子訳)

勿来の海開きで無邪気に楽しむ幼児と若い女性の姿は、したがってわたしにとっては、何とも言えない思いをさせます。

5 件のコメント:

  1. チェルノブイリの後の欧州の選択が日本でも。
    それは、死の慰撫プロジェクト・放射能汚染を甘受する生活指導だった。
    政府の「正しく怖がる」=「放射能に勝つ」の楽観プロパガンダの真相。

    私たちは放射能汚染世界の三つのステップを経るまでもなく、
    早々と崖っぷちに立たされている。

    「死ぬまで騙して欲しい」人たちが隣人を殺していく。
    この地球に、私たちは何処から来て、何処に行くのか。


    [福島で昨年から始動し始めた<エートス・プロジェクト>とは何か、
    バーゼル大学医学部名誉教授ミッシェル・フェルネックスがその実態を明らかにする。
    http://www.youtube.com/watch?v=2_oKtjnh52c&feature=youtu.be

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    1. Fabyさま、
      よくご存知ですね。
      フェルネックス教授には、お会いしたことがありますので、近いうちに紹介したいと思います、

      ご指摘のインタヴューは、最近コリン・コバヤシ氏が彼をジュネーブのご自宅に訪ねてのもので、大変参考になりますので、読者のみなさまも是非ご覧ください。

      梶村

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    2. 梶村さま
      エートス・プロジェクトのツイートは飛田 まり@kappel0208様より発信。

      「内部被曝研・医療部所属です。拡散するよう要請あり。ご協力下さい。「エートス・プロジェクト」についてのミシェル・フェルネックス氏のインタビュー。福島の子供達を被曝から守る為に」

      Faby

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  2. 梶村さま
    先日、この内部被爆情報を「至急拡散希望」と某ツイター処にあり、初めて知ったしだいです。

    真実を静かに語られるフェルネックス教授の報告は驚くべき内容でした。
    政府の方針に疑問を持つ多くの生産者、加工業者、消費者の方々も、
    「エートス・プロジェクト」の名から実態が見えてこないため、
    今まで見過ごされていたのかもしれません。

    ぜひ、広く情報を、フェルネックス教授のご紹介をお待ちしております。

    Faby

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    1. Fabyさま、

      ご要望にお応えして、牟田論文に簡単な解説と写真をつけて二回に分けて掲載いたしました。

      学者の論文は少し読みにくいですが、そこはじっくりお読み下さい。
      梶村

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