2012年7月13日金曜日

100:人類的犯罪フクシマ事故の太平洋放射能汚染長期シュミレーション/ドイツ・キール海洋研究所/日本近海拡大図を追加/再追加図あり


この画像をご覧ください。これはドイツのキールの海洋研究所(GEOMAR)が先週の7月6日付けで発表した福島第一原子力発電所の事故による太平洋の海水放射能汚染の長期シュミレーションによる事故から16ヶ月後、すなわち現在の汚染の想定図です。
フクシマ事故16ヶ月後のセシウム137による海洋汚染シュミレーション画像 出典:GEOMAR Kiel

同研究所は→「フクシマ=どこに放射能の水はあるのか?」という報告で、英国の「環境研究レター」に発表された「フクシマからのセシウム137の太平洋への拡散の長期モデルシュミレーション(英文): → -->

Model simulations on the long-termdispersal of 137Cs released into the Pacific Ocean off Fukushima」という研究(ここには英語による解説の動画もあります)の解説をしています。

 

それによれば、フクシマから空気中に出された放射能雲が運んだセシウムが太平洋の海水を汚染し、また原発から海に排出された放射能汚染水が、強力な黒潮によって拡散され、上図に見られるように日本近海は北海道太平洋側を除いてむしろ相対的に汚染度が 低いことが現されています。16ヶ月後の現在では事故直後の2011年4月時よりも、海流で希釈されたセシウム値は約1000分の一になっているとの解説が付けられています。

 

しかし、報告でダウンロードできる10年の長期予想のシュミレーション動画 に顕著に見られるように、黒潮と寒流の南北からの海流で長期的には北半球の太平洋全体に汚染が広がり、海流の逆流に乗って日本海から中国沿岸にも汚染が拡散することがわかります。


5年後の放射能汚染


5年後にはアメリカ西海岸からアラスカの北太平洋の汚染度が高く、10年後にはアメリカ大陸西海岸が最も汚染度が高いことが次の二枚の写真のように見られます。

 

報告にある10年間のシュミレーション解像度の高い2分39秒のアニメーション動画は重いので、ベルリンのターゲスシュピーゲル紙電子版の昨日→7月11日の記事から簡単に観ることができますので、ぜひご覧ください。驚くべき高度のシュミレーションです。

 

10年後の放射能汚染

この二枚の写真は同記事の真ん中にある動画から撮ったものです。
 この研究は現在入手できる排出された放射線値を根拠に海水のセシウム137の 線量をシュミレーションしていますが、それによれば、事故から2年後には海水の汚染値は10ベキュレル/立法メートルまで希釈され、それからさらに4年から7年後には1から2ベキュレル/立法メートルまでに下がるが、それでも事故以前のおよそ2倍ほどの値であると予測しています。しかし、実際に排出された放射性物質の量が、2倍であればその2倍となり3倍であれば3倍となると研究者は述べています。

わたしのコメントですが、フクシマの4基の原発がこれまで大気中に排出した放射性物質の量はまだ確定しておらず、回収できていない冷却用汚染水がどれだけ海に直接放出されたかも不明です。
さらに現在もフクシマの高線量の環境汚染はとどまることなく継続しており、もし世界中が危惧しているように、破損された原発の燃料プールの冷却に失敗したりすれば、太平洋の海水の高度な汚染とその拡散はこのシュミレーションに示されているように、想像を超えるものとなるのは間違いないということです。このようにフクシマ事故は間違いなく人類的犯罪に属するのです。少なくともヒロシマ・ナガサキに匹敵する人道犯罪になる途上にあります。
今から予言しておきますが、そうなった時にその刑事責任を日本の裁判所が問わなければ、国際刑事裁判所が問うことになります。

日本のメディアはこの研究について、おそらく触れないでしょうし、触れたとしても、「セシウムは十分希釈されるので漁業には影響ないだろうと研究者は述べている」といった報道の仕方となり、魚を通じて食物連鎖体系に入り込み世界中の生物を汚染することなどは、決して報じないでしょう。日本の大半のメディアは色のついた逆さ望遠鏡でしか世の中を見ないのです。このシュミレーションの画像についても然りでしょう。国際刑事裁判などは想像を絶することなのです。

また、同じ日に公表された国会の事故調査委員会の報告書には、このような人類的刑事犯罪であるとの問題意識は前提として排除されており、虫眼鏡で探しても見つかりません。
これが、日本の知識人の実情なのです。亡国の現状ここにありと思わずにはいられません。
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7月13日追加です。
問い合わせがあり、また気にもなりますので、上記キール海洋研究所が公表した→シュミレーションオリジナル動画から事故発生後585日目、つまり現在の汚染度の日本近海の部分を拡大してみました。
これで観ると、黒潮に押されて本州太平洋岸は汚染度は比較的低いですが、北海道の太平洋沿岸は内浦湾から全体にかなり汚染されている様子が見られます。

魚介類はもちろん、日本人の食卓には欠かせない昆布などのセシウム汚染が心配されます。日本政府はここでも知らんぷりを決め込んでいるのではないでしょうか。

事故から585日後の海洋汚染拡大図 出典 GEOMAR Kiel

もう一度、オリジナルから10年後のセシウム137の汚染シュミレーションの画像を掲載しておきます。まさに 「海のチェルノブイリ」です。これが人類的犯罪でなくて何であると言えるのでしょうか。

事故から3651日後のセシウム汚染シュミレーション 出典 GEOMAR Kiel
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7月14日の再追加です。
北海道の太平洋沿岸のいくつかの自治体でこのキールの研究所のシュミレーションに注目が集まっているとの間接情報があります。
そこで、北陸沿岸から北海道沿岸にかけてセシウム拡散が最も高い時の画像を掲載しておきます。ちょうど一年前の事故後135日のそれとその日本近海の拡大図です。

事故から135日後の汚染シュミレーション 出典 GEOMAR Kiel
上図135日目の日本近海の拡大図 出典GEOMAR Kiel

 なを、このシュミレーションに使われている色ですが、黄色を最大濃度値としてオレンジから赤はその1000分の1、青は100万分の1の相対濃度値を現しています。




セシウム137の海洋中の分布については→ヴィキペディアでは次のように解説されています:

--> 海洋中では水深約200 m付近にある水温躍層(温度変化の急激な変化点)より浅い海域に多く存在し、濃度は比較的均一である。つまり、水温躍層が一種のバリヤ的機能を果たしている。生物濃縮により魚食性の高い魚種での高い濃縮度を示すデータが得られている

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 15日追加です。

かなり反響が大きく、関心のある方も多いようなので、読者の方のコメントにもあるとおり、地球規模の汚染がかなり精密にこのスパコンを駆使したシュミレーションで可視化できます。福島事故の世界的影響のこれからについて、大きな影響を及ぼすことは、まず間違いないでしょう。
そこで、専門家の方のためにこのシュミレーションの前提となっている研究とその議論
137Cs off Fukushima Dai-ichi, Japan – model based estimates of dilution and fate→「ヨーロッパ海洋研究」の電子版から読めますので指摘しておきます。

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27日追加です。

キール海洋研究所の上記の解説用の動画の英文解説を。先日ある方が日本語に翻訳してYou Tubeで観れるようにして下さっていますので、紹介させていただきます。
→セシウム137の太平洋汚染10年間シュミレーションの解説翻訳

さらにこの方は動画そのものに日本語の→一年ごとの日付も入れて投稿しています。
こちらのほうが研究所のものより見やすいようですのでお勧めです。

ここで述べられているように、ハワイに汚染海流が到達するのは、来年の秋頃でアメリカ大陸西海岸には5、6年後。
そのころはかなり希釈されているものの、北太平洋全体に拡散したその後からの希釈の速度は非常に遅くなるとのことです。

なを、この件に関連して、専門家の間での予想の議論を紹介しますと、震災のガレキが早くもアラスカに到達しているのは、海面の風力によるものだとのことです。汚染海流は黒潮や親潮による海流循環で撹拌されながらこのシュミレーションのように拡散する。
 この海流循環に乗った海洋の食物連鎖の上部に位置するマグロやクジラの汚染値が次第に上がり、セシウムマグロやセシウムクジラが登場する。解説のように北太平洋はフクシマ汚染が何十年も続くことは避けられない。
 その後、汚染海水が熱塩循環(鉛直循環)によって深海水と混ざり世界中の海洋で一巡するのは、気の遠くなるような2000年から3000年後であるとのことです。
 そのころまで人類が存続しているかはわかりませんね。

これを書きながら気付いたのですが、この投稿をしたのは13日の金曜日でした。



 

3 件のコメント:

  1. 日本の危機認識のゆるさは情緒バイアス、これに尽きる。
    地球規模の汚染が進行する中、
    日本国政府は「世界の方々にもご理解を頂きたい」のか?

    このつぶやきは言い得て妙なり。
    http://twitter.com/Angama_Market
    放射能と生きていくって、まるで随分長く生きていけるような発言だな。

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    1. Fabyさま、

      地球規模の汚染が進行する中、
      日本国政府は「世界の方々にもご理解を頂きたい」のか?

      これは通用しないでしょうね。つまり、政府はつぶれます。
      外圧でつぶれれば、日本の恥。内圧でつぶれれば日本の面子が保たれる、そんな事態が間もなく来るでしょう。

      ここでサンプル基準として用いられているセシウム137の半減期は30年強で、現在の最低推定放出量でチェルノブイリの20%ほど。100年後でも自然を十分痛め続けて人類の悪夢として記憶され続けるでしょう。

      梶村

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    2. 梶村太一郎さま、
      今日のNHKお隣の代々木デモ、これを見ぬふりした政府はもう死に体も同然です。
      昨年のドイツ放射線防護協会の日本政府への勧告も馬耳東風。
      現政府の声掛けで、この「禁止」されている事項をことごとくしているのですから。
      ヒドラのごとき政財官を原発とともに葬るまで見届ける、生き甲斐ですね。

      Faby

      以下一部引用
      放射線防護の国際的合意として、特殊措置をとることを避けるために、汚染された食品や廃棄物を、汚染されていないものと混ぜて「危険でない」とすることは禁止されている。日本政府は現在、食品について、および地震・原発事故・津波被災地からのがれき処理について、この希釈禁止合意に違反している。ドイツ放射線防護協会はこの「希釈政策」を至急撤回するよう勧告する。

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