ただし、この改正法はEU欧州連合の委員会から批判と注文があり、果たしてこのまま実現されるか否か、不確定の面があります。近いうちにその問題が解決されねばならず、ドイツ政府とブリュッセルとの間で交渉が行われます。
現政権のエネルギー転換政策の問題点と課題については、『世界』2014年2月号で→「ポスト原子力時代へ歩むドイツ新政権」としてかなり詳しく報告したとおりです。
ここでは、とりあえず新法での見通しの重点を簡単に書いておきます。
1)ドイツの再生可能エネルギー発電は、これまでの同法による固定価格買取り制度で、またフクシマ事故での脱原発政策で、膨大な投資がされ急速に成長し、現在では発電量の25%が自然エネルギーとなって発電価格も急速に低下しています。
ところが、20年間は固定価格で買い取り保障があり、その差額が消費者の負担となるために、消費価格が急速に上昇するという矛盾が大きくなりました。
ガブリエル経済エネルギー相は本日の議会討論でも「ここ2年で負担金が倍になっている。これ以上の消費者負担は無理だ」と述べています。この図に見られるとおり、本年度は同法による賦課金は6,24セント/キロワット時となっており、
これは、一般平均家庭の年間需要3500キロワットでは年間218ユーロ(約3万円)の 負担となっています。
今回の法改正では、この負担をこれ以上増加させないための複雑な工夫がなされています。(新法はドイツらしくなにしろ200頁もあり、複雑極まります。)
2)これは経済エネルギー省の→改正法解説からの借用した図です。
再生可能エネルギー発電の増加目標を現在の25%から、2025年には40%から45%、 2035年には55%から60%マでの範囲で増加させるというものです。
これは、現大連立政権の連立協定で合意されたものです。
もちろん、緑の党や自然保護団体からは「ゆっくりすぎる、もっと早く可能だ」、「原発に次いで問題のある石炭発電を擁護するものだ」との批判と意見は多数あるところです。
3)この見通しの種類別具体的内訳ですが以下のとおりです。
複雑になりますので詳しい説明はブログでは避けますが、この新法の背景にある考えは、従来の原発と化石燃料発電を電力供給の基本とするのではなく、徐々に再生エネルギー発電を基本供給電源として、化石燃料発電をその補助とする構造を築くことにあります。 不確実性はありますが、どうやらそれが本格化する事態がこれで見えてきそうだというのがわたしの実感です。
以上は、あくまで目標であって、実際にどのようになるかは判りません。いずれにせよドイツのエネルギー転換は、地球の環境保護には不可欠な21世紀の革命的大実験ですので、しっかり注目すべきでしょう。
4)おまけ:現状写真
2014年6月12日 写真:梶村太一郎 |
この写真は、今月ベルリンのど真ん中のテレビ塔の展望室から、小さいカメラで撮ったものですが、地平線にブランデンブルグ州の多数の巨大な風力発電が林立しているのが、かろうじて見えます。同州は電力の50%がすでに自然エネルギーです。左の冷却塔で水蒸気が見えるのはベルリンの火力発電所のひとつです。
原子力発電が視野から本格的に消えつつあるドイツでは、再生可能エネルギー発電が火力発電を包囲しているさまが、一望できますので挙げておきます。これが現状です。
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