ところが、事態はそんなものではありません。日本は当時よりももっと酷く外交で孤立状態になっています。そのことを知るのは簡単です。世界中の報道で安倍氏の靖国参拝に理解を示す、あるいはそれを支持する報道は、虫メガネで捜してもひとつもありません。あるのは日本の産経と読売など安倍政権翼賛メディアだけなのです。
ドイツでの昨日1月7日の報道ひとつとっても、南ドイツ新聞の東京特派員が「孤島で孤立」という見出しで、「安倍政権が次第に孤立を深めており、中国、韓国は安倍氏を歓迎せず、閣僚級会談もできない状態で、関係を深めているのは原発を輸出しようとしているトルコと中東産油国ぐらいである。メルケル首相も2008年のG8以来日本を訪れていない」と伝えています(電子版では読めません)。
FAZ 7.Januar 2014 |
同日、フランクフルター・アルゲマイネ紙は文芸欄(同紙の文芸欄はヨーロッパでも一流です)に、新年の北京から、盧溝橋の抗日博物館の展示の紹介のルポタージュを掲載しています。
見出しは「一連の未清算」で、 「なぜ博物館での両国友好への表明にもかかわらず、それがが反転してしまったのか?」とのリードが着いています。
これはかなり長い報告ですので、ここで翻訳をすることはできませんが、見逃せないのは、ここでも「日本が両国の外交のパイプを次第に閉じている」、また「これまでにも見られた日本の政治における歴史修正主義的傾向が、これまで以上に強化されている」として非常に危険視していることです。
日本のメディア、政治家の皆さんに知っておいていただきたいのは、ある政権を批判する欧米のメディアが、歴史修正主義という表現を使ったときは、その政権は相手にできない落第の烙印を押されたことと同様であるということです。
近年のその例がイランのアフマディーネジャド大統領政権の歴史修正主義でした。ホロコーストを否定する彼の歴史認識が、どれだけ危険視されイランを国際社会で孤立させたかが好例でしょう。安倍晋三首相は、彼と入れ替わりに登場した歴史修正主義者の首脳としての地位を歴史の中で得つつあるのです。
それこそ、孤立した島国ではその厳しさを認識するのが難しいことは、ある程度は判らないでもないですが、世界世論は安倍政権に極右の歴史修正主義政権として烙印を押しつつあります。安倍政権が続く限りこの烙印が消されることはありません。 日本の外交にとって救いがたい損失です。大げさではなく、靖国引きこもりを続ければ、明治維新以来体験したことがないほどの孤立をもたらしかねません。
さて、安倍靖国参拝問題について、日中関係に詳しい内田雅敏弁護士が、以下の論考を執筆されていますので、特にメディア関係者に一読をお勧めします。
この論考で、特に大切なのは、A級戦犯の分祀の主張を、それが靖国神社の存立にかかわるため絶対にあり得ないことを、詳しく論証している点です。靖国問題理解のためには必読であると思います。
さてついでで、いささか我田引水となりますが、本日発売の『世界』2月号をお読み下さい。
これにわたしの→以下の報告があります。
ポスト原子力時代へ歩むドイツ新政権
梶村太一郎
昨年12月17日、ドイツ連邦議会で首相指名決議があり、大連立交渉をまとめた第3次メルケル政権が成立した。9月 22日の第18期連邦衆議院選挙から三カ月近い時間が必要であった。戦後ドイツ史のなかでも最長記録で、難産の赤ん坊の誕生のようであった。この難産の背 景には、いわば社会の民主化に伴う陣痛がある。その経過と背景、そしてとりわけ注目される新政権の協定のエネルギー政策指針を現地から報告する。
この号は特集として安倍政権批判の論考が多く掲載されているようなので、わたしも楽しみにしています。
この「靖国引きこもり症」という病氣の根源についてはすでに述べましたが、その分析を続いて述べたいと思います。世論調査によれば、日本の若い世代にこの病への抵抗力が目立って低下しているようです。深刻ですね。
とはいえ、日本の駐英大使が、駐英中国大使のハリーポッターになぞらえた靖国批判の挑発にまんまと載せられて、まるで落語の横町長屋の熊八の口喧嘩程度の反論をして欧米メディアの笑い者になる程度ですから、これぞ喜劇です。
この大使の知性こそ、日本の若者の鑑なのです。明らかにこの日本大使には歴史修正主義批判の恐ろしさを自覚する教養が欠落しているのです。憐れなことになりました。
安倍氏の祖父自体が戦犯でしたので、
返信削除「あの戦争は正しかった」
という思想は心からそう思っているのではないでしょうか。
ドイツでいえばヒトラーの側近の孫が首相をやっているようなものなので、
その思想をどうこうしようと思っても難しい気がします。
沢渡さま、
返信削除コメントに感謝です。
全くそのとおりですね。安倍晋三氏は確信犯でどうにもなりません。したがってこの政権を打倒するしかないわけです。でないと大変なことになります。
そのためには、安倍氏の妄想を白日の下に晒すことが大切です。このブログでの「靖国引きこもり症」連載は長くかかりそうですが、じっくり続けます。
ご存知でしょうが、岸信介の「名にかへてこのみいくさの正しさを来世までも語り残さむ」を採り上げるつもりです。
ちょうど今、原稿締め切りでお尻に火がついていますので、とりあえずお返事まで。
忌憚ないご批判、ご意見お願い致します。
檜原転石です。
返信削除「引きこもり」は、厚生労働省の定義では――
[仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6ヶ月以上続けて自宅にひきこもっている状態」時々は買い物などで外出することもあるという場合も「ひきこもり」に含める]です。
よって安倍晋三批判で使うには適当な言葉ではなく、「井の中の蛙」状態の方がいいと思います。また日本ではトンデモ和製英語「ブラック」も氾濫しています。ブラックが黒人を意味することや「ブラック・イズ・ビューティフル(黒は美しい)」運動も知りません。総じて日本列島以外の世界のことはほとんど知らないようです。
さて、アフマディーネジャードの発言といえば、
「ヒトラーが数百万人の無辜(むこ)のユダヤ人を殺害したと主張する欧州諸国がある。 我々はこうした主張を受け入れないが、もし(ホロコーストが)本当だとしても、それが (イスラエルによるパレスチナ)占領を支持する理由になるのか、と聞きたい」など、嫌々ながらもホロコーストを認めているような論理展開が多いようです。もちろんホロコーストがあったからこそ現在の強欲土地泥棒テロ国家イスラエルが存在するので、歴史の事実に曖昧な態度を取ると、抵抗運動の戦略を誤ることになる。例えば、ロマ民族もナチスのホロコーストの被害にあったが、ロマは強欲土地泥棒テロ国家イスラエルのような国家を有していないという発言は、ナチスのホロコーストを前提としないかぎり不可能です。そう「ユダヤ・ナチの蛮行」という言葉も、ホロコーストを否定していたら使えない。あと一部シオニストとナチスの協力関係もイスラエルでは有名な話なので、事実を踏まえてのイスラエル批判が有効なのは言うまでもない。
さらにもう一つ――
▼イスラエルの嘘プロパガンダ・マシン全開
2008年12月31日
スチュアート・リトルウッド
GlobalResearch原文
http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/
・・・
以下は、2008年12月22日の声明から:
「イランの支援を受けたハマスは、イスラエルの完全破壊を望むと繰り返し発言してきた。」
率先して破壊を行ってきたのはイスラエル自身であり、現在も、ハマスとガザの人々を完全抹殺しようとしている。イランのアフマディーネジャードは故アヤトーラ・ホメイニの発言を引用して、「エルサレムを占領している現在のイスラエル政府は歴史から消え去らねばならない」と述べた。国連の分割案のもとでエルサレムはベツレヘムとともに「国際都市」と指定されたことを考えると、妥当なコメントである。
イスラエルのプロパガンダはこのイランの発言を「イスラエルは地図から抹消されなくてはならない」とねじ曲げた。一方、シオニストの情報源やイスラエル諸政党のマニフェストは以前から、イスラエルはパレスチナを地図から抹消する計画であることを明らかにしており、イスラエルの行動と嘘はすべてその目標に向かっている。
***
以下、改めて比較します。
★アフマディーネジャード
「エルサレムを占領している現在のイスラエル政府は歴史から消え去らねばならない」
★イスラエル
「イスラエルは地図から抹消されなくてはならない」
トンデモナイ違いですが、メディアではイスラエル政府の奨励用語が流されます。
ここでもイスラエルのホロコースト利用の手口が使われ、イランへの先制攻撃も辞さないとイスラエルは主張(アホを抜か)しますが、『アンネの日記』を知りすぎている私たちもそれに一定の理解を示すわけです。
檜原さま、
返信削除コメントに感謝です。
「靖国引きこもり症」という表現が適当か否かは、読者のみなさまで、それぞれ判断してくだされば結構です。
わたしは「井の中の蛙」よりも、家族や周辺社会を困らせ、いずれは破綻する病的状態にあるのでこの表現を使うことにしました。
井戸の蛙は健康であるかぎり迷惑はかけません。
イランの元大統領の反ユダヤ主義に関しては、これも大変迷惑で中東の危機を煽るだけでした。幸いハタミ新大統領が、CNNのインタヴューなどではっきり否定し、軌道修正されやれやれです。おかげで核協議も最初の一歩で合意しました。
他方イスラエルのパレスチナ政策は、これはもっと困ったもので、西側が頭を抱える大きな問題です。同国の反イラン政策に関しては戦争の危機がつのった2012年⒋月に、ギュンター・グラスが先制攻撃を主張するイスラエル批判をして大騒ぎになりました。
これについては、当時わたしもここで詳しく報告して非常によく読まれました。ここから3回の報告をご覧ください。
http://tkajimura.blogspot.de/2012/04/blog-post_05.html
いずれにしても、今日もドイツのシュタインマイヤー外相が、シャロンの葬儀に出かけ、そこで「パレスチナ国家を承認して二国共存を実現すべきだ」と強調していますが、わたしもこれしか平和的解決策はないと考えています。それでないかぎり、中東全体がシリアのような戦争状態になってしまいます。
シリアもようやく来月からジュネーブで和平協議が始められますが、解決は難航するでしょう。
梶村さん、こんちは。
返信削除「靖国引きこもり症」という表現は、厚労省が定義したような意味で“引きこもり”という言葉が今のように定着する前なら、何ら問題ない表現です。ただし時代は変わっているのです。私の周り(親戚を含む)を見渡しても“引きこもり”の人間は数多くいます。彼ら彼女らは実際は病を抱えているわけで、その病のために引きこもっているに過ぎないのです。“引きこもり”の全ての事例がそうだとは思いませんが、厚労省の調査結果にもあるように引きこもり経験者のかなりは精神障害を経験しているのです。
よって権力者を批判する時には“引きこもり”という表現は適当ではありません。私も日本人を批判するときに、「強度の歴史健忘症」と表現する時がありますが、この言葉が適当かどうかは自信がありません。総じて病に関連させて人を批判することは慎重であるべきでしょう。
私が言う「井の中の蛙」状態とは、靖国が“侵略神社”であることはアジアを含め日本以外の世界では常識だが、日本では追悼施設だと誤解している人が多数であるという意味で使っています。また靖国史観の政治屋は安倍晋三だけでありません。石原慎太郎・河村たかし・橋下徹などもふくめ、日本の政治屋のかなりの部分が同類なのであり、NHK経営委員の百田尚樹は「南京事件はなかった」と言い張っています。かように日本人全体もほとんどが右翼思想の人間ばかりなのです。よって安部は今の“右翼日本”の象徴にすぎません。右翼思想は海外から叩かれれば却って内に向かって盛り上がる傾向もありますから、まことに厄介なのです。
テロ国家イスラエル問題については、米国でもこんな映画が作られています。
▼「アパルトヘイトへのロードマップ」 バンツースタン化するパレスチナ国家
http://democracynow.jp/video/20121221-2
▼※公式ウェブサイト
Roadmap to Apartheid
http://roadmaptoapartheid.org/
檜原さま、
返信削除おっしゃるとおり、人を批判する時に病に関連させるのは慎重であるべきであるのはおっしゃるとおりです。
実はわたしは、10年以上前に日本でいわゆる「引きこもり」が問題になりだした頃に、千葉県にある問題を抱えている人たちの社会復帰を行っている施設長から対策を相談されたことがあります。だから問題の深刻さは存じています。かなりの人たちは精神障害者であるようです。
それを日本の社会情勢に当てはめるのは問題があることも承知しています。しかし、ある社会が精神障害に陥ることはあるのです。
ナチスドイツがそうでした。人種主義イデオロギーを信じ込んで、それに従わない/あるいはそぐわない人々を徹底的に排除し、虫けらのように殺すのは当然のことと、あるいは黙認された社会でした。狂気が支配した社会です。ドイツ語では「人種主義の狂気 ・Rassenwahn」といわれよく使われます。日本でもヘイトスピーチでそれが出てきていますね。ドイツではあのようなことをする人たち、例えば「朝鮮人を殺せ」などとデモなどで公然と叫べば、たちまち批判されれるだけでなく法律で厳しく処罰されます。
この靖国イデオロギーがこれ以上若い人たちに蔓延すれば、引きこもりどころか、「靖国パラノイア(妄想)」となるでしょう。そうなれば本当に人を殺し始めます。
20年ほど前にホロコースト否定する歴史修正主義者を「パラノイア」すなわち精神障害者と批判して名誉毀損で訴えられたことがありますが、その裁判では勝訴したことがあります。
その手前にある表現として「靖国引きこもり」を使っています。明らかに日本社会に亢進する精神障害症です。
天皇制軍国主義の日本は、普通の市民が侵略兵士とされ、何の罪もない諸国の庶民を平気で大量虐殺したのです。パラノイア社会であったからそんなことが可能であったと考えています。
そこまで病が亢進することを懸念しての表現であるとご理解下されば幸いです。