2013年2月8日金曜日

146:第63回ベルリン国際映画祭招待日本作品:舩橋淳「桜並木の満開の下で」、池谷薫「先祖になる」

かなり酷いインフルエンザにやられて、明日うらしま爺さんはひっくり返っていましたが、ネコのアズキの手も借りてようやく復活しました。

さて今夜から第63回ベルリン国際映画祭(通称ベルリナーレ)が正式に始まりました。公式サイトは→こちらです

カンヌやベネチアの映画祭とは異なる多彩で巨大なこの映画祭の雰囲気の1部、記者会見などは日本からもインターネットの中継で毎日観ることも出来ます。
→こちらからどうぞ

 10日間で上映される映画の数は400本以上ですが、メインのコンペ部門には寂しいことに日本映画はありません。
 今年から開設された名作回顧部門では1953年の小津安二郎監督の「東京物語」が上映され、その現代版の山田洋次監督の新作「東京家族」が、特別枠で紹介されます。

とはいえ、ベルリナーレならではのフォーラム部門(これの→歴史的背景は昨年紹介しました)には、将来性のある日本の若手の監督たちの作品が8本ほど招待されています。
その内のいくつかを、わたしは映画祭の準備段階ですでに観ていますので、とりあえずその内の二つの以下の作品をお勧めとして紹介しておきます。
いずれも実績のある若手監督の力作ですので、ベルリン在住のみなさまには、このチャンスに是非とも鑑賞をお勧め致します。

舩橋淳監督「桜並木の満開の下で」Cold Bloom
 公式サイトは→こちら

映画祭での→紹介と上映日程はこちら。

昨年のベルリナーレで紹介された→「Nuclear Nation・フタバから遠くはなれて」で、たちまち→世界的な反響を呼んだ監督の新作です。 監督は引き続き双葉町のその後の厳しい成り行きを記録し続けていますが、今年の作品は、原発震災が起こる前から企画していたフィクションです。手弁当で双葉町を追いながら、このような作品を完成させた監督の努力には脱帽です。
茨城県日立市の小さな町工場で働く、若い男女の過酷な運命を描いたこの作品は、英語のタイトルに現されているように、日本社会の冷たい現実と、そこで憎しみに引き裂かれながらも、必死に愛し生きていこうとする若者のやさしさと悲しみが、古典的ともいえる心理劇として描かれています。この監督の持つ奥の深さがうかがわれる作品です。

池谷薫監督「先祖になる」Roots
公式サイトは→こちら
予告編は→こちら
映画祭での→紹介と上映日程はこちら。

池谷監督のベルリナーレ招待作品としては、10年まえの「延安の娘」以来、二本目です。
3・11の震災と大津波で壊滅的被害を受けた岩手県陸前高田の77歳の佐藤直志老人の、驚くべき生き様のドキュメントです。50年前の新婚時に林業の跡取りとして新築した家は、わずかに倒壊が免れただけで二階まで浸水。消防団員のひとり息子を失いながら、決して仮設住宅には入居せず、驚くべき精神力で、先祖からの木を自ら伐採し、震災一年と半年後に家を新築し、またそれにより地域社会の若者たちを勇気づけ、伝統の「けんか七夕祭り」も復活させてしまう老人。
1000年に一度の自然の猛威の損害にも一切ひるまず、着実に立ち直るきこりの姿は、しっかりと自然に根を張って生き続けてきた日本人の強さの貴重な記録となっています。
大震災と大津波の荒廃の中で、木の香を漂わせながら復活する老人の生活は、このようにして日本列島で人々は危機の中でもしぶとく生き続けてきたことを、わたしたちに改めて知らせ、感動を呼び起こすのです。この作品はかなりの反響を呼ぶとわたしは見ています。

以上、簡単ですが2人の監督の作品を紹介しておきます。二つの作品はまったく別の性格のものです。しかしどちらも歴史的危機にある現在の日本を背景とした作品として極めて貴重なものです。
お二人の監督にはベルリンでお会いできれば、お話を聴き、また反響などについても報告するつもりです。 とりあえず以上簡単な紹介まで。



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