2012年12月25日火曜日

137:日本の悲劇(1)井戸川町長不信任決議と双葉町民へのメッセージ/双葉を救い日本を救おう/追加情報あり

 日本社会の悲劇は、どのような社会であれ市民がおびただしい犠牲を払って初めて民主主義を獲得し確立できるものだとの体験と認識を、主権者がいまだに持っていないことにあるとわたしは考えています。
 12月16日の国政選挙による自民党と安倍晋三極右反動政権の復活も、根本的には有権者のこの認識の欠落にあるとおもいます。3・11の原発震災でおびただしい犠牲が強いられたにもかかわらず、結果として日本の住民はさらにおびただしい犠牲を強いられることが明らかな選択をしたことにこれがよく現れています。民主主義未熟社会の悲劇です。
これは改善が必要な国政選挙制度以前の問題です。

またその4日後の20日には双葉町議会は井戸川町長の不信任決議案を8名の議員全員で可決しています。→福島民報の報道

井戸川克隆町長は、フクシマ事故の最大の犠牲を受けた自治体の首長のとして、自ら大変な被曝(良く知られているように、彼はいまだに鼻血が止まらないだけでなく、実は体毛の欠落もあったとわたしは彼に近い人物から聴いています)をしながら、この体験で核問題の本質を見抜き、双葉町民の長期的な利益のために、命がけで断固として闘い続けている立派な政治家です。(右の写真は上記福島民報から借用させていただきました)

 彼は10月30日にはジュネーブの国連人権委員会で、フクシマ事故の現状をひとりの被曝体験者として「日本政府は人々が真実を知ることを望んではいない」と国際社会に訴えています。
日本の既成メディアは至極簡単に報道するか、あるいは無視しています。日本の大半の大メディアも真実を知らせることを望んでいないのでしょう。ジュネーブでの演説の記録は「みんな楽しくHappyがいい」さんが丁寧に文字起こしをされていますので→こちらをご覧ください
また、演説は英文からドイツ語にも翻訳され→「放射線テレックス」12月号で公表されています。Ansprache vor dem Menschenrechtsausschuß der Vereinten Nationen in Genf の項です。

広島や長崎の市長はともかく、小さな自治体の長が国連機関で報告をすることは稀なことです。フタバの声は世界に届けられてるのです。残念ながらこのことの貴重な意義を双葉町議会は認識できないようです。

 今日の時点で井戸川町長は辞任か議会解散か決断をまだ表明していませんが、いずれにせよ犠牲者が一致団結すべきところで足を引っ張るのは実に愚かなことです。犠牲者たちが自ら墓穴を掘るのを見て、喜び笑うのはいったい誰なのでしょうか? 間違いなく原発事故の責任を取ろうとしない責任者たちなのです。これも民主主義未熟社会の悲劇といえましょう。

 さて、決議のあった日付で井戸川町長は町のホームページで「町民の皆様へ」というメッセージを公表しており、これも日本のメディアは伝えようとはしていないようです。
今日わたしのところにもファイルで届きましたので、万一町長が失職すると公式記録としては消されるかもしれないので全文を以下記録しておきます。

「目に見えるものは形や重みのあるもの価値が直ぐに判断できるものです。見えないものは未来です。一番心配なのは健康で、被ばくによる障がいであります。」 と町民の真の利益のために、非常に広い視野から無責任極まる日本政府を相手に、命がけで闘う町長が直面している、大きな困難と胸の内を町民に訴える貴重なメッセージです。このような政治家を失うことになれば、日本の民主主義構築にとって大きな損失であることは間違いありません。
 双葉が救われれば日本が救われます。その逆もまた真です。日本はその岐路に立っているのです。

(追加の情報です。12月25日)
*この不信任案決議に関しては天木直人氏が→「脱原発を唱えるものたちよ、いまこそ井戸川町長の下に結集せよ!」と書いています。

*2012年3月末に井戸川町長が彼の考えを非常にわかりやすくインタヴューで答えています。これを読めば彼の怒りと民主主義に関する全うな認識が誰にでも確認できます。→「双葉郡民を国民だと思っているのですか」

*12月20日の双葉町議会の傍聴記を堀切さとみ氏が本日紹介されています。→ 「正しいことしているから叩かれる」。全く議論もなく可決してしまったようです。

*今年のベルリン映画祭で初公開され当時数回関連の報告(→68、→70→71→73)しました「フタバから遠くはなれて」の舩橋淳監督が、これに先立つ井戸川氏の双葉郡町村会議長辞任に関してブログで見解を12月9日と15日の2度にわたり表明しています。町長に近い人物の見方として貴重な意見です。→ここのNewsからご覧ください。(27日追加:舩橋監督は26日に町議会解散についての背景をまとめています。これは必見です。→ここです。拡散お願いします。
 
*こんな騒動の中で、何と埼玉の高校校舎に避難しいまだに残っている年金生活のお年寄りたちの給食が有料になり寂しい正月になりそうだと本日、スポーツ報知が伝えています。→「双葉町民155人、震災最後の避難所を助けて」。耐え難く酷い仕打ちです。町議会の議員は井戸川氏を引きずり落とすような愚行を行いながら最も弱者の町民の最低限の利益のために力を出すべきです。以上が追加情報です。

*26日再追加:本日井戸川町長は町議会を解散しました。
毎日新聞の報道→「福島県双葉町:町長が議会解散」
なおこの井戸川問題については非常に重要なのでまた項を改めて追加します

(以下メッセージ引用)
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               町民の皆様へ

 町民の皆様、皆様の苦しみは計り知れないものです。毎日、皆様と話し合いができれば良いのですが、なかなか叶えられませんことをお詫び申し上げます。

 私が一番に取り組んでいますのが、一日も早く安定した生活に戻ることです。双葉町はすぐには住めませんが、どこかに仮に(借りに)住むところを準備しなければなりません。そこで、国と意見が合わないのは避難基準です。国は年間放射線量20mSvを基準にしていますが、チェルノブイリでは悲惨な経験から年間5mSv以上は移住の義務と言う制度を作りました。

 私たちは、この事故で最大の被ばくをさせられました、町民の皆様の健康と家系の継承を守るために、国に基準の見直しを求めています。この基準がすべてです。仮に住む場合は安全でなければなりません。子供たちには、これ以上被ばくはさせられませんし、子どもたちが受ける生涯の放射線量は大きなものになります。事故から25年が経ったウクライナの子供たちには働くことができないブラブラ病が多く発生しているそうです。

 私はこのようなことが一番心配です。町は絶対に事故を起こさないと言われて原発と共生してきました。しかし、今は廃虚にさせられ、町民関係も壊されました。自然も、生活も、生きがい、希望やその他すべてを壊されました。一方どうでしょう。これほど苦しんでいる私たちの思いは、皆さんが納得いくものになっていないのです。これを解決するのが先だと訴えています。

 私が皆さんに多くの情報を出さないと叱られていることは十分承知しています。出したくても出せないのです。納得のいくような情報を国に求めていますが、出してこないのです。国とは隠し事のない交渉をすることを求め続けてきています。町民の皆様を裏切ることは決していたしません。これから多くの情報を出していきます。

 放射線の基準に戻りますが、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告を採用していると国では言いますが、国際的に採用している訳ではありません。ヨーロッパには独自の基準があり、アメリカでも自国の基準を作って国民を守っています。最近のICRP勧告では日本を非難しています。もう120mSvを採用しなさいと言っています。これは大変なことで、区域見直しも賠償の基準も変わってきます。
 
 このような中で冷静にと言っても無理かもしれません。このような環境に置かれているのだから、皆さんの要望を常に政府、与党には伝えてきました。政争に振り回されて進んでいません。

 福島県内に避難している町民を県外に移動してもらう努力はしましたが、関係機関の協力は得られずにいます。しかも盛んに県内に戻す政策が進行しています。県に理由を聞いても納得のいく返事は来ません。町民(県民)の希望を国に強く発信して頂きたいと思います。

 町民の皆さん、損をしないでください。財産には目に見えるものと見えないものが有りますので、区別しなければなりません。目に見えるものは形や重みのあるもの価値が直ぐに判断できるものです。見えないものは未来です。一番心配なのは健康で、被ばくによる障がいであります。ウクライナでは障がいに要する費用が国家の財政を破綻させるような事態になっています。今のウクライナが25年後の日本であってはならないのです。子供に障がいが出ればとんでもない損害です。この見えない、まだ見えていない損害を十分に伝えきれていないもどかしさがあります。まだ発症していないからとか、発症したとしても被ばくとは関係がないと言われる恐れがあります。水俣病のように長い年月をかけて裁判で決着するような経験を町民の皆さんにはさせたくありません。

 昨年の早い時期から町民の皆さんの被ばく検査を国、東電、福島県にお願いし、被ばく防止も合わせてお願いしてきました。しかし、思うようになっていません、原発事故による放射能の影響下に住むことについて拒むべきです。

 損について一部しか言いきれていませんが、一番大きなこと、何年で帰れるかについて申し上げます。今は世界一の事故の大きさのレベル7のままだということ。溶けた核燃料の持ち出し終了が見通せないこと。処理水をどうするのか、核物質の最終処分はどのようにいつまで終わるのかなど多くの要因を考慮して、木村獨協大学准教授が最近の会議の席上、個人の見解として双葉町は場所によっては165年帰れないと発言しました。私には可か不可の判断できませんが、大変重要な言葉だと思います。半分としても80年だとしたら、この損害は甚大なものです。

 また、被ばくの影響についても責任者に対して担保をとっておく必要があります。

 中間貯蔵施設については、議論をしないまま、調査だから認めろと言いますが、この費用の出どころを確かめることが重要です。この施設は30年で県外に出すと国は言っていますが、約束は我々とはまだ出来ていません。この施設の周りには人が住めません。六ヶ所村では2km以内には民家がないようで、双葉町では町の中心部が殆ど入ってしまいます。では、どうするのかの議論が先です。ボーリング調査を行うのは着工です。予算の構成を見ますと、整備事業の下に調査費が付いています。これは行政判断としては着工になります。着工の事実を作らせないために、私は非難覚悟で止めていることをご理解ください。

 十分すぎるほど議論して町民の皆さんの理解の下に進めるべきです。日本初の事業です。双葉町最大の損害で、確かな約束を求める事をしないまま進めてはやがて子供たちに迷惑をかけます。新政権とじっくり話し合いをして、子供たちに理解を貰いながら進めます。このように、私たちには大きな損害があることをご理解ください。

 寒さが一段と厳しくなりました、風邪や体力の低下に気をつけて予防を心がけてください。これからもお伝えします。

  平成241220日       双葉町長 井戸川 克隆



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