そこで、7月29日に行われたベルリンでの連帯デモの様子は→前回でお知らせしましたとおりですが、今回はベルリンの警察官の行動を写真で紹介しましょう。警視庁の警察官たちとの行動と比較をして下さい。
ちょうどこの日、ドイツは国会議員も含めて夏休みなので、ドイツ緑の党の連邦議会院内副総務のバーベェル・ホェーン/Bärbel Höhnさんは訪日し、日本での緑の党の結成に立ち会いがてら、この日のデモに参加し、国会前で演説をしています。
この人物については一年前に →日本で脱原発を実現する人々:日本弁護士連合会と意見書 で紹介しておきましたのでご覧ください。
さて→彼女はツウィッターで、この時の感想を現場から順次以下のように伝えています。
Gleich
gehen wir gemeinsam zur großen Demo in Tokio gegen die Atompolitik der
Japanischen Regierung.
今から私たちは日本政府の原発政策に反対する東京での大きなデモへ行きます。
Polizei ist total nervös und hat alles abgesperrt in Tokio.
警察は完全に神経質になっており、東京はすべてが遮断されている。
Demonstranten sehr diszipliniert. Buntes Bild. Unglaublich
viel Polizei
デモ参加者は大変に秩序立っている。色とりどりの光景。信じられないほどの多数の警察官。
Die Politiker in Japan versuchen, die Anti-AKW Bewegung zu
ignorieren. Das wird ihnen nicht gelingen.
日本の政治家たちは反原発運動を無視しようと試みている。彼らにはそれは成功しないでしょう。
aus twitter von Bärbel Höhn 29.7.2012,Tokyo |
これが、ドイツの反原発、環境保護の闘士で、元ノルドライン・ウエストファーレン州環境大臣のこの日の東京での印象です。
国会前で演説するHöhnさん。笠井あきら衆議院議員撮影 |
以上が東京からの情報のひとつですが、さて同日のベルリンのデモでの警察官の様子はどうでしょうか。
断っておきますが、もちろん、20万人の東京と、その千分の一の200人のベルリンのこの日のデモでは警備の仕方も違って当然です。しかし非暴力無抵抗をモットーとする点ではどちらも同じです。ホェーンさんも「大変に秩序だっている」と感心しているとおりです。
ドイツでも大規模な反原発デモがあるときには、もっと多勢の警察官が動員され、機動隊も背後で待機するのが通常です。昨年秋に詳しくお伝えしましたようにゴアレーベンのような核施設を巡る抗議行動の時はなおさらです。しかし、通常の抗議行動の時はそうではありません。
さて、集合時間にパリ広場に行ってみると、まだ数人だけですね。夏休みの最中に大きなデモは無理なのです。東京新聞の弓削ベルリン支局長も、こりゃデモの記事になるのかなといった心配顔です(右)。車いすの男性も旗もって到着。この日はもうひとり車いすでの年配の女性の参加もありました。
ところが定刻までに徐々に人数が増え、行動開始の15分ほど前に男女の警察官ふたりが登場し、主催者と抗議集会とデモのルートなどの打ち合わせ。
このお巡りさんの挨拶代わりの第一声はにこやかに「みなさん多勢集めましたね、敬意を表します」でした。写真でも市民団体との友好的な雰囲気が出ています。
彼の名前はヴィルト/Wildt氏です。ベルリンの警察官は勤務中は名札、あるいは業務番号を制服に付けることが昨年から義務づけられているから判るのです。これも長年の議論を経て赤赤の前ベルリン州連立政権(社会民主党と左派党)の議会で実現しました。機動隊員も同じです。
この日の反原発ワンチャンはこの一匹の若い娘さんだけでしたが、出発を前に飼い主と決意の誓い。
パリ広場での集会を終えてようやく出発。先頭は子連れのご夫婦。
ブランデンブルグ門からアメリカ大使館前を通り、ここからいよいよデモ隊は車道上を行進。このあたりの歩道は自転車道までついた非常に広いものですが、それは自転車と歩行者のためのものですからその権利を侵害することは許されません。またデモ行進は進行方向の車道を行進する権利があります。ワンちゃんだけは公園内に消えないようにひも付き。
車道上から、後ろを振り返って見ると後尾のパトカーが車を止めています。後方にブランデンブルグ門。自転車道は止められてはいません。
片道二車線の車道を行進。背後はアメリカ大使館です。
いよいよベルリン最大の広場のひとつポツダム広場交差点にさしかかる。右はポツダム広場駅の建物のひとつ。自転車と歩行者はそのままで、交差点の車は全面交通止め。
このあたりは片道3車線ですね。
ポツダム広場。ここは1920年から30年代には、ヨーロッパで最大の交通量があり、車両の渋滞を避けるために広場の中央に史上初めての信号がもうけられました。時計付きの信号器はベルリン統一後再建されたものですが、ちゃんと赤になっていますね。
ベルリン中心の幹線道路であるポツダマー通りを横切るデモ隊。
ここでは両方の8車線が「200人のデモ」のため全面交通止め。右奥にフィルハーモニー建物。
フィルハーモニー前からティアーガルテン通りに入ります。この通りは片道二車線と狭いのですが、人数が少ないために進行方向の車道だけ車を止めています。
出発から一時間ほどかけて、 ようやく日本大使館正門のあるヒロシマ通りの角に到着(下)。
実は、わたしがこの日のデモの付き添う警察の行動について最も感動したのは、最後尾に交通整理用のベストを着た写真の警察官たちの行動です。
先頭が元気でテンポの速い小学生のシュプレッ匕コールにつられて早く歩きがちになったようです。そのため車いすのお二人が最後尾で遅れがちになるため、それを見た警察官が無線で先頭に連絡して、ここでもしばらく行進を止めたことです。この日、二度この配慮がありました。警察官は年配の障がい者市民の日本市民との連帯の権利をこのようにして、義務として実現させたのです。
まさにベルリンの警察官が行動で市民の権利を擁護する実に優れた実例だと感心しました。これこそ民主主義社会の市民警察の振る舞いなのです。
そのため、この最後尾の写真に見られるように、この狭い道路の片側は、路線バスと乗用車が長蛇の列をなしてデモ隊のテンポでついてくることになっています。バスの乗客も乗用車の市民もじっとがまんをします。 文句を言ったらたちまち軽蔑されますからね。
上の写真は、成熟した市民社会のひとこまといえましょう。
日本大使正門前での抗議集会の時は、最初から付き添ったヴィルト警察官たち数人が受付前に立っているだけです。
実は、このとき正門から200メートルほど離れたところの大使館沿いの歩道上に機動隊警察官が気付かれないように待機していました。これは外国公館警備の警察の義務のようです。
さて大使館門前での抗議集会がちょうど終わる頃に夕立が来ました。
雨にぬれながら立っているヴィルト警察官たちに対して、主催者から「大変親切に義務を果たしてくださった警察官のみなさんに感謝します」とのお礼の言葉と参加者の大きな拍手で、この日の日本への連帯行動は、大成功のうちに終わりました。
以上が東京の姉妹都市ベルリンの警察官が、どのように基本権である市民の表現の自由を擁護しているかのひとつの実例です。
このように、わずか200人のデモでも首都の中心の幹線道路までを市民権擁護のために解放することを警察は義務として立派に保障します。
一方で東京ではどうでしょう。官邸前の金曜デモの数万人の抗議行動を鉄柵をつかって、まるで牛馬のごとく歩道上に押し込めて恥ない警視庁のやりかたは、民主主義社会の警察のそれにはほど遠いものであることが、この日のドイツとの比較ひとつでもよくわかります。
また、まるで羊の群れのように、叫びながらも封じ込めに甘んじさされている市民の姿も民主主義の主権者のそれとはほど遠いものです。
この光景が現在の日本社会の市民のみじめさの象徴のように見えるのは、決してわたしだけではないでしょう。欧米だけでなくアジア諸国の市民たちからも哀れみのまなざしで見られていることに気付くべきです。
そして、特に結成したばかりの日本の緑の党の人々はこのことを知らねばなりません。なぜならば「日本の政治家たちは反原発運動を無視しようと試みている。彼らにはそれは成功しないでしょう」というホェーンさんの言葉は、まさにこの現実を指摘し、日本の市民への期待と連帯の言葉であるからです。この現状を突破しない限り、どのような政治勢力であるにしろ日本の将来を担えないからです。
首相官邸と国会前の道路は主権者の抗議行動のために解放されるべきです。それでないと原発過酷事故を起こした日本は、かつてのソ連邦について→ゴルバチョフ氏が指摘したように間違いなくつぶれます。
この報告はベルリンの姉妹警察である警視庁の警察官のみなさんに読んでほしいと思います。読者のみなさんツイッターなどでお巡りさんに読むように勧めて下さい。警察官が民主主義社会の擁護者としてどれだけ大切であるかを知っていただきたいからです。民主警察なしには民主社会はありません。
終わりにひとつだけ付け加えておきますが、ドイツの警察には組合があり、したがって彼らも待遇改善などを要求してデモを行います。
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8月2日の追加情報です。
29日の東京の国会大包囲では公務執行妨害で二人の市民が逮捕され、31日に釈放されるまで拘留されたとのことです。官邸前の金曜デモなどに際して「見守り弁護団 」が警察の過剰警備を監視しており、本日記者会見して→「市民の表現の自由を尊重し、過剰警備をしないよう求める声明」を発表しています。
連名の弁護士は現時点で145名となっていますが、この弁護士のみなさんへのベルリンからの格好の情報ともなりますので、タイトルとともに追加します。
さらに、この件で田中龍作ジャーナルが → “歩道も通せんぼ” 金曜集会での過剰警備 弁護士が警視庁に改善申入れと先ほど報道しました。
そこの田中さんの写真を一枚拝借します。
=7月29日、永田町。写真:田中撮影= |
田中さんは写真の説明として、
衆院会館前の歩道から官邸方向に行こうとして警察に止められる男性。「警察法第2条」を盾に取り、市民が公道を歩くことさえ規制する。嫌がらせに等しい警察の対応に男性は「この場面を写真に撮って下さい」
と書いています。
ベルリンの警察官が歩道でこれをやると、たちまち処分されます。このような写真は日本の警察官の恥です。
上記のベルリンのこの日の指揮官ヴィルト氏の写真をもう一度良く見て下さい。かれは両手を胸下で組んで淑女に対するように礼儀正しく市民と話しています。ベルリンの警察官はデモに対する特別の訓練を受けています。警視庁も見習うべきです。
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8月4日追加です。
先ほど、このデモに参加していた方からコメントをいただきましたが、この方は雨宿りをしていたら、何と警察官からパトカーで送ってあげようとの申し出を受けたそうです。
下記のH.Hayashiさんのコメントをご覧ください。
これは驚くべき後日譚ですね。ベルリンの警察官は立派な外交官の役割もこなしていることになります。わたしが漏れ聞いたことでは、このデモの時に日本大使は外出中で、デモのため大使公邸に入れなくて終わるのを待ったとのことです(未確認情報です)。
いずれにせよ、大使館には邦人を保護してくれた警察にお礼を伝えるように申し入れておきます。これは外交官としての義務ですから。
わたしもベルリン市長と内務大臣に次の機会にお礼を伝えておきます。
ますます、警視庁の警察官のみなさんの良いお手本ですね。
いずれにせよ、脱原発を実現しつつある社会の雰囲気とはこのようなものであることを、日本の外交官のみなさんも学ぶべきでしょう。
わたしは大夕立になったので参加されていた車いすの女性と一緒に路線バスで引き上げました。傘をもっていましたがかなり濡れました。
Hayashiさんが撮られた→「大使館前の再稼働反対のコールの映像」をご覧ください。
この映像にある入り口が大使館の正門で車もここから入ります。
まさに、野田どじょう原発推進政権のために、Saikado Hantaiは、そろそろ世界共通語になりつつあります。
このデモにフランクフルトから参加いたしました。
返信削除私も警備の警官のすばらしさを感じました。皆さん早足で我々を追い越して、次の交差点の通行を確保してくれていました。
デモ終了後の後日譚をひとつ。
にわか雨で雨宿りしていたら警備していた警官がやってきました。「デモは終了したから解散するように」と言われるのかと覚悟したら、なんと「パトカーの席が3つ余っているから乗っていかないか」というのです。
デモをする権利と文化が根付いている国なのだと感じました。
大使館前の「再稼動反対」コールの映像です。
http://www.youtube.com/watch?v=bo_TJDk6YEo&feature=g-upl
Hal Hayashiさま、
削除驚くべき後日譚ですね。ご報告に感謝いたします。
さっそく、タイトルと本文に追加紹介させていただきました。
ここまで警察官が親切なのは、おそらく先日書きましたように、彼らもフクシマへの深い同情があるからではないかと思われます。
http://tkajimura.blogspot.de/2012/07/blog-post_28.html