2013年12月7日土曜日

211:日本の秘密保護法成立を深刻に懸念する報道相次ぐ/ドイツ/翻訳を追加

(12月7日追加:フランクフルターアルゲマイネ紙の東京特派員の記事を下記に追加しました。)

  12月6日、日本時間深夜の参議院での特定秘密保護法案成立に関して、ドイツの大手メディアは、直後から大きな懸念を表明する報道を始めています。

明日にでも、いくつか翻訳して報告したいと思いますが、とりあえず2つだけ、写真と概要のみをお知らせします。いずれにせよ安倍政権の反動性が、民主的な世界世論からどれほど剥離していることが良くわかるのでお知らせします

 シュピーゲル誌電子版→「日本で異論の多い内部告発者を弾圧する立法が成立」

Der Spiegel , Reuters
同誌は、この写真とともに上記の見出しで「日本の参議院は、異論の多い秘密保護法を採択した。これによって国家秘密の公表は10年の懲役刑で脅かされる。野党は同法の成立を阻止しようと試みたが失敗した。批判派は重大な報道の自由の断絶を恐れている」 とし、自由と民主主義を脅かすと抗議する10000人以上の抗議や、多くの反対声明にもかかわらず、アメリカを手本にした法律を安倍政権は強行した、と伝えています。

フランクフルターアルゲマイネ紙は、カーステン・ゲルミス東京特派員の報告として→「日本が報道の自由を制限・われわれはフクシマの原発事故を報道することがゆるされるのであろうか?」。との分芸欄での解説記事を、この2つの写真とともに電子版に掲載しました。

FAZ, AFP

FAZ, AFP
 このドイツの保守系紙の特派員は、安倍政権の国家主義を厳しく批判し、現場から市民や福島瑞穂議員の「石破テロ発言」批判を交えて、詳しく伝えています。長い報告ですが、追って翻訳をお伝えします。

以上、とりあえず。
以下は、上記フランクフルターアルゲマイネ紙の記事の翻訳です。
電子版とはわずかに見出しが違うだけで、内容は全く同じです。写真はプリント版本体では、ロイター配信の上記シュピーゲル誌と同じ、安倍総理、麻生副総理の国会でのそれが使われています。電子版には小見出しがありますのでそれも訳出しました。読者のみなさまに知っておいていただきたいのは、同紙がドイツの、中道左派の南ドイツ新聞に対抗する、中道保守の新聞であることです。
以下翻訳:

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われわれがフクシマの原発事故を報道することはまだ許されるのであろうか?



日本政府が、国家秘密保護法を強行、ジャーナリストと情報提供者にとって危険がより増大。



12月6日東京。カーステン・ゲルミス



 東京では日本の政府が外国人特派員に向けて、彼らの政策と法律を説明するのに努力するのは非常に稀なことだ。ところがこの珍しいことが今週起こった。「外国では、われわれの計画している『特別国家秘密保護法』を大変懸念する報道が行われている」、「これについて皆さんに情報を提供したい」とのことだ。外国人ジャーナリストたちが政府機関地域の霞ヶ関の味気ない役所の大部屋で、「政府関係者」から、色とりどりの図表で、なぜこの法律が報道と情報の自由に関する基本権を無視するものではないかについて説明を受けている最中に、直ぐ近くでは、同法に反対する年寄りを主とする数千人がデモをしていた。


 多くの人々が、安倍晋三首相の政府が同法を悪用して、ありがたくない情報を隠して反対派を脅かすのではないかと恐れているのだ=ちょうど前世紀の30年代に日本で起こったようにである。日本では、年寄りたちが抗議行動に活発なのは、単に老齢化社会であるからだけではなく、彼らが財政的にも独立しているからだ。政府の諸計画を拒否する日本人の多くは、抗議行動の危険を冒そうとはしない。彼らは調和と礼儀正しさによって成り立っている日本社会から除外されることを恐れるからだ。
 
 しかしながら、稀なことに、国家主義者安倍晋三が政権について以来、反対派の同法に反対する強力な抗議行動が起こっている。安倍の自由民主党が法の成立を議会で強行する傍若無人さによって、参議院では殴り合い寸前にまでにいたっている。


 批判派へのわずかな譲歩



 世論の圧力によって政府は批判に対し、最後の瞬間にいくつかの譲歩をした。しかしながら、どのように(秘密を)コントロールし、基本権を保証するかについての法律での具体的条項は、曖昧な意図表明がなされているだけに終わっている。


 政府の長である安倍にとっては、この法律は国家秘密の保護のため重要だ。なぜなら、日本を再び東アジアにおける軍事大国とし、憲法に明記されている平和的基本方針を変えようとする彼の戦略の転機点がこれであるからだ。日本には今週からアメリカ合衆国のように国家安全保障会議が設立された。日本を古い大国に戻したいとする安倍が、その実現を強行したのだ。彼が国家秘密保護法を望むのは、これなしには外国の諸大国が、情報を東京と共有しないことを恐れるからである。



 国家秘密保護法は他の諸国にもある。ではなぜ日本社会はこんなに感情的にも反応するのだろうか? その理由のひとつは、同法がすでに強力な官僚主義をさらに強固にする点にある。何が国家秘密であるかを官僚たちが恣意で決定する。同法の最後の条項にも彼らの裁量の拡大が変更されないままとなっている。
だから日本人のほぼ80%までが、都合の悪いことを隠してしまう長い伝統のある日本の政府と役所が、汚職と不都合をもっとしっかり隠蔽してしまうことを恐れるのは、何ら不思議なことではないのである。
 そしてそのような不都合なことや秘密をばらしてしまう公務員に対する刑罰は重い:国家秘密を暴けば、10年までの懲役が彼らを脅かすのだ。これまでは、最高懲役1年であった。「違います」と政府関係者は「将来も今日以上に国家秘密が増えることはありません」と言う。「違います。原子力発電所で事故があれば、これまでのように報道できます」と外国人記者たちに保証する。



 世論の圧力と、強力な抗議によって、異論の大きい法律のなかで、これまで懲役5年までの懲役を科せられるとされていた、報道の自由の保護については少しだけ強化した。修正第22条では、国家秘密を報道したジャーナリストは、「不当な」方法でその情報を入手したものではないことを前提にして、罪を問われないことになった。また不都合なことを公表する、いわゆる「内部告発者」もより保護されるべきとされた。



 デモするものはテロリストであると宣告



 政府の長である安倍はこれに加えて、法の施行を監督する専門家委員会を設置すると約束する。この専門家たちは独立した立場でなければならないとされる。ところが彼らは政府の長により任命される。ここでの問題は:これら全てが曖昧で、法律に明記されない意図表明でしかないことだ。



 批判する者はこの法律に、日本が侵略戦争を進めた30年代への回帰を見ている。当時も政府は思想の違うものを弾圧する法律を公布した。その結果、まだ若い民主主義が廃棄された。だからここ数週間の日本のリベラルなメディアでは、安倍の諸計画に反対して、ほぼ一致した批判が行われている。この民主主義の空洞化への懸念は、与党自由民主党の石破茂幹事長の発言によって募らされた。彼は法律に反対するデモを「テロ」行動に近いとしたのだ。



 政府の長である安倍が信頼する石破は、ブログに「単なる絶叫戦術は本質においてテロ行為と変わらない」と書いたのである。野党は、そこに安倍政権が民主的な基本自由権を切り取ろうとしているとの疑いが裏付けられたと見ている。「わたしは、このような意見を表明する人物がいる政府を信用できません」と社会民主党副党首である福島みづほは述べる。安倍と彼の自由民主党はこの週末、可能な限りの国会規則を駆使し、激しい抵抗に対して法律を成立させた。

(Karsten Germis Frankfurter Allgemeine Zeitung 7.Dez.2013 訳責:梶村太一郎)

プリント本体 Frankfurter Allgemeine Zeitung 7. Dez.2013



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