2013年12月26日木曜日

217;ベルリンのクリスマスツリーとごちそう/哲学ネコ・アズキ代筆

クリスマス前の16夜の月輪
明日うらしまの読者のみなさま。良いクリスマスをおすごしでしょうか。
わたしは、うらしま爺さんのところのネコのアズキです。この家に拾われてきてもう3度目のクリスマスになります。
 爺さんは数日前に乙姫婆さんに書斎の掃除を言いつけられて、たまった新聞の束を持ち上げるとき、ぎっくり腰になって役に立たないので、わたしが代理でベルリンのクリスマスツリーとご馳走の報告をしますね。

 爺さんの話しによると、日本のクリスマスは戦後アメリカの進駐軍が持ち込んだ風習で、ドイツのものとはかなり違うということです。それにデパートやコカコラーやファーストフードのような商業主義が乗っかって、クリスマスとは消費だけのありがたくないものだそうですね。
 しかし、ドイツでも似たり寄ったりだとおもうのですが。それでも日本の正月のような大切な歳の区切りであることは間違いありません。
(写真はいつものとおり、クリックすればパノラマでご覧になれます。)

 クリスマス商戦さなかのベルリンのデパートの飾り付け。今年はかなり地味な方です。
デパートのショーウインドウのツリーはアメリカのものに近い派手なものです。
どうやら年より夫婦も、クリスマスには仲良くなるらしい。
このデパートはドイツで一番高級ですから、ツリーもデカくて派手ですね。このサンタの爺さんは、もう14年毎年これをやっているベルリンっ子で、子どもたちには人気があります。
西ベルリンの商店街の飾り付けは、近年はかなり地味になっていますが、それでも規模は大きいものです。
この、教会の近くの大きなツリーあたりから雰囲気が変わってきます。昔のままのロウソクの光だけに近くなってきて、余計な飾りはありません。
これはザクセン州のエルツ山脈の伝統的なクリスマスの木工工芸品の大きなモデルです。クリスマス市に毎年現れます。
この市が開かれるのは→ヴルヘルム皇帝記念教会という有名な教会の広場ですが、ここの礼拝堂が素晴らしいのです。これは70年前の大空襲で破壊されたこの教会の記念コンサートが開かれる準備中の写真です。

クリスマス市の民芸品のお店。伝統的な木工細工ばかりです。古い伝統がそのまま生きています。
クリスマス前の午後3時過ぎの中央駅近くの夕焼け。飛行機雲だらけですね。
以下は政府中枢のクリスマスツリーです。美しい夜の写真はありませんが、これらはアメリカナイズされていないことだけは判ると思います。
上は、メルケル首相の首相府のツリー。下は国会議事堂前の巨大なツリーです。これがベルリンでは一番大きなものです。
ブランデンブルク門前のパリ広場のツリー。実はこれは朝8時過ぎの写真で、ようやく明るくなった頃です。まだ観光客もいませんね。

下の2枚は、大統領府のツリーです。夜の写真がないのは残念ですが、これが一番気品のあるツリーです。
 クリスマスツリーは、キリスト教化する前の、北方ゲルマン民族の冬至の火祭りの伝統をキリスト教が取り入れたものであることはよく知られていますが、ドイツの公式の樅の樹のツリーはまだしっかりと、その頃の伝統を残しています。家庭によってはいまだにロウソクの灯りだけのツリーを維持しています。時々火事になりますが。
 ツリーとは関係ありませんが、クリスマスの飾りによく使われる宿り木の→ミステルが、このあたりには多いのです。このとおり、電車の線路沿いの樹の頂上近くにまるでマリモのようにこれだけは緑で元気です。ちなみにこの植物には抗がん作用があります。

さて、もう一度、ブランデンブルク門前のツリーです。これは21日にロシアの石油王が釈放されて、ここの高級ホテルに入ったので様子を見に行った時のものです。

 写真を撮っていると、韓国語が聴こえて来るのでなんだろうと思うと、韓国人留学生たちが、韓国の朴大統領の選挙違反を批判して抗議集会をやっていました。また韓国の鉄道労働者のストライキを支持してドイツの労働組合も連帯の挨拶をしたりして元気なものでした。
それを見ていると、大統領支持派の韓国人も近くで集会を始めましたが、年寄りばかりで、人数もわずかでさっぱりです。若者たちに「化石だ」と笑われていました。
うらしま爺さんんも30年ほどまえからドイツの韓国人たちの民主化運動にかかわってきたので、この様子を見て時代の変遷に感無量であったようです。何でも「韓国の民主主義は自力で勝ち取ったので、日本のそれよりよほど本物である」というのが爺さんの説です。

さて、いよいよクリスマスのご馳走を簡単に紹介しますね。
 クリスマスイブには、この家の子どもたちも来て、プレゼントが机に積まれます。
いつもなら、和風のご馳走ですが、今年は乙姫婆さんが何を考えたか、突然ドイツ式にすると言い出したので、みんなびっくりです。

 午後から手伝いも来て、たっぷり時間もかけて台所で大奮闘していました。 ぎっくり腰の爺さんは邪魔になるので待つだけ。その爺さんが待ちかねて、一人でワインの利き酒をやっていたのをわたしは目撃して告げ口をしました。爺さんはこのスペインの2006年のエコワインは絶品だと喜んでいました。何でも最近はエコワインにも美味いやつが出てきているそうです。
スープと前菜の後に出てきたのが、→ストックエンテの丸焼き。お腹にリンゴ、オレンジ、ショウガその他の香料を入れて、黒ビールと蜂蜜をかけながらオーブンでじわりじわりとと丸焼きにしたものです。1羽で5人前だそうです。
 このマガモはベルリンにもたくさん住んでいます。わたしがスズメを捕ってくると乙姫婆さんはかわいそうだと非難するのに、エンテを焼いて喰うのはもっとかわいそうだね。人間は勝手だ!
付け合わせは、ジャガイモ団子と赤キャベツの煮込みと、全くのスタンダードですが、この取り合わせがやはり、このカモ料理には一番です。他の選択肢はありません。
ドイツ料理は見かけは悪いが、ボリュームはたっぷり。手をかけてつくったのでできは上々で、乙姫婆さんの鼻が高くなっていました。
みんな満腹なので一休み、プレゼント交換してから、ババロアと紅茶と果物が出て、ご馳走はおわりました。爺さんは食後酒にコニャックを引っ掛けていました。


そんな人間どもの飲み食いを観ながら、わたしが一番楽しかったのは、プレゼントの包み紙の中で遊ぶことでした。何しろ化粧品からお菓子など本当に色々な珍しい臭いがたっぷりしみ込んでいますから、これが一番です。この夜はここで眠りました。

 付け加えますが、爺さんの話しによれば、なんでもフランスに嗅覚の良い作家がいて、ちょうど100年前に有名な「失われたなんとかを求めて」という小説を書いたとのことですが、ネコのわたしからすれば大した鼻ではないですね。人間の臭いと音の感度はわたしたちネコにすれば、実に憐れなものですよ。
 人間は「時間」とやらを気にしますが、そんなものは人間の幻想ですよ。そんなものを考えだしたのがそもそも人間の不幸のもとです。そんな世界には関係ないわたしは、だから幸せなのです。

 ベルリンの哲学ネコ・アズキ代筆

気に入ったので当分は昼寝も包み紙の上ですることにしました。

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