2017年8月11日金曜日

328:ドイツ世論調査:95%が再生エネルギー転換促進に賛成。日本のメディアの偏向情報に注意しましょう。

 一昨日の8月8日、シュピーゲル電子版を始め、ドイツの主要メディアが一斉に報じましたが、最新の世論調査で、今年はドイツ市民の95%が再生可能エネルギーへの転換の促進に賛成していることが明らかになっています。

 これはベルリンの再生可能エネルギー機関が世論調査機関に委託して2007年度以来、毎年行われている社会のネルギー転換の受容度を調べた最新のもので、先月2017年7月の最新世論調査の結果、を8月8日付で公表したものです。回答者は1016人です。
8月31日追加この調査の英語版が同機関の月報に記載されましたので全文はここからも読めます。
以下その結果のグラフを引用してみましょう。


まずは、「再生可能エネルギーのさらなる利用と強化は・・」
      
       大いにあるいは非常に重要である;65%
       重要である:30%
       余りあるいは全く重要ではない:4%
       判らない無回答:1%

 であり、95%が再生可能エネルギーの強化に賛成しています。これは2014年の調査で利用と強化が重要とした回答が92%であり、  2015、6年度が両年度ともに93%であったところからさらに増加傾向にあります。

次に、そう答えた理由についてですが、
「あなたは以下の質問に同意しますか?」(複数回答も可能)との質問への回答で、
 
再生可能エネルギーは・・・
 
 私たちの子供と孫に安全な未来をもたらす。75% 
 気候を守る。72%
 ドイツを外国からの(エネルギー源)輸入から独立させる。62%
 市民にエネルギー供給への参加のチャンスを与える。59%
 発電コンツェルンに対する競争をさらに促進させる。47%
  中小規模企業の経済力を強化する。43%
 長期的に市消費者の負担を軽減させる。35%

 との割合で同意しています。

 すなわち再生可能エネルギー転換によるエネルギー供給の安全性と未来性、並びにその市民参加の民主制にドイツ市民は高率で賛同していることが読み取れます。


そして、 再生可能エネルギーの整備促進法による賦課金(EEG-Umlage)が適切な負担であるかについての質問です。

 電力分野での再生可能エネルギーの整備は電気料金で賄われています。現在では典型的な3人世帯は、年間消費量が3500キロワット時で、電気料金を毎月約85ユーロ支払っています。その内の約20ユーロが 再生可能エネルギーを促進する賦課金です。
あなたはこの再生可能エネルギーへの負担は・・・?

  少なすぎる。8%
  適度である。48%
  多すぎる。37%
  わからない、無回答。7%

と回答しています。つまりここでは、圧倒的な95%が再生可能エネルギー促進に賛成してはいるますが、全体の37%が毎月20ユーロ(約2600円)の賦課金は負担が重いと回答しています。低所得者層には当然の負担となります。

 結論として、ドイツの世論は再生可能エネルギー政策のさらなる促進に賛成する割合がすでに最大限近くまで増えていますが、他方で約三分の一ほどは負担が重いと感じていることがわかります。三分の一の市民がこのアンビバレンツを抱えているとうことでしょう。

 とはいえ、この37%の市民の大半が「確かに負担は重いがエネルギー転換には賛成する」というのが この世論調査の結果と言えましょう。

ちなみに、参考としてドイツの再生可能エネルギー発電は昨2016年度は伸び率は下降しないまでも停滞状態の消費電力の約31・5%となっています。 
 しかし、先月7月2日の連邦再生可能エネルギー同盟BEEによる本年度の中間予想では、今年はかなりの伸び率の上昇が見られ、最大35%となるとの予想があります。
 すなわちドイツ政府の2050年までに80%の再生可能エネルギー発電を達成するとの公式目標の、43%を本年度は実現しそうだというのが現時点の情勢です。

 そしてこのような圧倒的な再生可能エネルギー促進を支持する世論を背景に、ちょうど今、本格的に始められている来月9月24日の連邦衆議院選挙へ向けた選挙戦でも、当然ながらキリスト教民主並びに社会同盟、社会民主党、緑の党、左派党は全てデタイルの違いはあれ、再生可能エネルギー促進を選挙公約で表明しています。ただ一つ極右政党「ドイツのための選択肢・AfD」だけが、反対して原発稼働促進を唱えています。

 日本メディアでの偏向情報に注意しましょう。

 さて、これがドイツの再生可能エネルギーの現状ですが、ここでいささか気になることがあります。
 最近日本語のネットでは「ドイツのエネルギー転換が『大失敗』だったと明らかに・実は環境のためにもなっていなかった」と言った見出しのトンデモ情報が散見されます。
 これなどは現在では滅多に見れない、世論調査に見られるアンビバレンツを最大に強調する少数意見のたった一つの報道記事の一部分を、これぞとばかり引用して揚げ足をとり、上記のようなドイツの世論を真っ向から否定する印象を持たせようとする典型的な偏向情報のひとつと言えましょう。この手の宣伝をしているのはドイツでは上記の極右政党だけです。この情報の筆者はドイツでは極右の範疇に属します。
 
 このような見出しと論調がもし事実であるならば、ドイツ人の95%が騙されて高い電気料金を支払っている愚か者になってしまいます。これほどドイツ市民を馬鹿にした日本メディアによる恥知らずの言論も珍しいですね。おそらく、背後には日本の原発村のゾンビがいるのでしょう。
 
 ここで22年前に日本の大手メディアである文藝春秋社の雑誌の「ガス室はなかった説」との報道に、私も激怒して徹底的に活字で叩き、歴史修正主義者に名誉毀損で訴えられたためドイツでも報道されました。余計に怒って挙げ句の果てと言いますか勝訴しました。日本の裁判所が初めて「ガス室は史実」と認定した成果があった体験が思い出されます。
 これ以降、「ガス室はなかった」とする説を広めるメデイアは日本では、おかげでなくなりました。どんな極右でも公然とこれを口にすることはできなくなりました。この記録は出版されており、現在では心あるジャーナリストたちの古典的資料となっています。この判決については当時ドイツのメディアでも報道されたものです。
 
 現在の「ドイツのエネルギー転換大失敗説」はまだそれほどのものではありませんが 放置しておくと日本の世論に似たような被害をもたらし、日本の国際的評価を大きく損じかねないと危惧する次第です。
 ドイツはもとより世界中で心ある人たちの多くが「日本はフクシマの苦い体験にもかかわらずなぜ再生可能エネルギー転換へ向かわないのか」と不信に思っているのです。4年前にここで指摘しましたようにフクシマ事故は人類史的犯罪なのです。そしてこの放射能汚染はまだまだ続いており、収束の見込みすら立っていないのです。

 この世論調査が広く報道された時に合わせたかのように目につきましたので指摘しておきます。いずれにせよこの手の日本メディアにおける偏向情報には注意しましょう。
 
 日本の主要メディアが、ドイツではここ10年間は当たり前とされる世論のバロメーターを無視して報道しないからこそ、この手の文字通りの偽情報が公然とまかり通るのです。したがって日本の主要メディアの怠慢にその責任の一端があることをドイツ特派員諸君は認識すべきでしょう。

 というのも、昨年の訪日時に、あるところの集まりで話をしたら、「ドイツは脱原政策のために電力の輸入国となり、フランスの原発電力を買っている 」といったフクシマ事故直後の数ヶ月のデータだけをもとに、当時針小棒大に宣伝されたデマ情報が、日本では未だに広く信じられていることを知り驚いたことがあります。
 事実はちょうどその正反対でドイツは欧州では長い間最大の電力輸出国で、最近ではその30%以上が再生可能エネルギーによる電力なのです。
 
 こんなことはかなり前からすでに多くの専門家があちこちで指摘しています。新しいものも探せばあ沢山ありますが、以前からのよく知られているものをいくつか挙げておきます:
 ドイツなしでは成り立たないフランスの電力
  原発停止でもドイツはフランスへの電力純輸出国。

 ここで指摘されている事実を見れば。「ドイツのエネルギー転換大失敗説」も構造が同じ偏向情報であることがよくわかるでしょう。
 このような極端な偏向情報をまかり通りさせ放置して平気でいる日本の主要メディアの無責任ぶりも異常です。まっとうな言論機関の役割を放棄しているとしか思えません。

 とにかくファクト・事実を否定ないしは無視するするこのような極端な情報には注意しましょう。
 日本のメディアはアメリカの惨めな状態にすっかり似てきています。大半のアメリカ人が世界の情報には疎い田舎者であることに、なにも日本のジャーナリストがおもねる必要はありません。


6 件のコメント:

  1. 梶村さん、お久しぶりです。ブログの再始動に喜んでおります。再生可能エネルギー強化賛成95%という数字は驚異的ですね。それにしても、ドイツはフランスの原発に依存しているという情報をまことしやかに流す日本のマスコミは実に犯罪的ですね。梶村さんのレポートを読むと日本のマスコミがますます信じられなくなってきます。情けない話です。梶村さんのドイツからの通信、楽しみにしています。そして何より頼りになります。

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  2.  フクシマの子供達の保養キャンプも無事終わりご苦労様でした。昨年種まきをお手伝いしたレンゲの田んぼの今年の稲はちゃんと成長していますか? 水不足や大雨やこれからは台風も心配ですね。しかし、天雨も太陽光も請求書をよこしませんからありがたいことです。

     ドイツのグリーンエネルギー発電を促進している市民たちの合言葉は「風も太陽も請求書をよこさない」です。そのおかげで今ではすっかり自由化された電力取引市場での価格は安くなっています。このことも日本にはほぼ伝わっていません。


     というのもドイツの再生可能エネルギー転換は、産業大国の今世紀の大きな技術革命の先端を行くものなので巨大で複雑だからです。しかし上記のようなトンデモ情報に騙されないような第一次情報源は多くありますので、近日中に項を変えてわかりやすく紹介したいと思います。

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  3.  梶村さんのブログ再始動を誰より喜んでいます。まともな情報が日本ではほとんど流れないからです。
     再生可能エネルギーの話は非常に興味深いです。耕人舎を太陽光発電でオフグリッドシステムですべて電力を賄いたいと思っています。問題は蓄電池(バッテリー)です。うまい方法はないものでしょうか?リチウムイオンバッテリーは高すぎます。・。
    「風も太陽も請求書をよこさない」はいいですね。ドイツ語で何と表現するのですか?ぜひ教えてください。
     わが田は水不足でひび割れができてしまい大変です。水はたまらないし、雨は降らないし・・・。台風は来ても、長門には雨を降らせませんでした。今年ほど大変な年はありません。異常気象は今後も続きそうで水がないのでうんざりです。

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  4. ドイツ語では、Sonne und Wind schiken keine Rechnung と言います。これで検索すれば山ほど出てきますよ。

    小規模オフグリッド発電はおっしゃる通り蓄電でまだかなり難しいですね。私もうまい解決法は知りません。でもいずれは全てそうなると思っています。

    ドイツではかつての原発事業主がオフグリッド技術で生き残りを図っているのです。フクシマまでは考えられない事態になっているのです。これについてはこのブログの282、2015年1月23日の投稿をご覧ください。

    http://tkajimura.blogspot.de/2015/01/blog-post_23.html

     長門の田はまだ水不足ですか、大谷さんも困っておられるでしょうね。九州は大雨被害で正反対。これは日本だけでなく世界中でそうなので、異状が当たり前になりつつあるようです。ベルリンも6月に100年来の集中豪雨で、我が集合住宅の地下室が浸水しました。

     ドイツの農家も異常気象で大変な被害に遭っています。せっかく実った小麦が豪雨の洪水で倒れ、家畜の飼料にしかならない云々・・・

     ベルリンから「長門に雨降れ!」と雨乞いでもしましょうか。

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    1. 上記「太陽と風は請求書をよこさない」のドイツ語ですが、
      綴りがひとつ間違っていました。正しくは以下です。

      Sonne und Wind schicken keine Rechnung

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  5. ありがとうございました。なかなかしゃれたドイツ語ですね。いつか刻字で彫って看板にしたいです。
    とりあえず、斜面に太陽光パネルを自分で設置してみます。うまくいけば少しずつパネルを増やしていきます。おかげさまで先日、長門に激しく雨が降りました。半日ですが・・・。

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