2013年8月2日金曜日

173:「ナチスから改憲の手口を学ぶ」麻生太郎は「あほう太郎」である。日本の国益のため即刻謝罪し大臣を辞任すべし。

「語るに落ちる」とはこのことですね。麻生太郎氏の先日の発言のことです。
朝日新聞が伝える→発言の詳細によれば問題となった部分は以下のとおりです:

憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。誰も気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。

この部分を→WSJは次のように伝えています

“Germany’s Weimar Constitution was changed before anyone noticed,” he said. “Why don’t we learn from that technique?”

BBCは→次のように翻訳しています:

"The German Weimar constitution changed, without being noticed, to the Nazi German constitution. Why don't we learn from their tactics?"

シュピーゲル誌は→電子版で次のとおり

"Die deutsche Weimarer Verfassung wurde, ohne dass dies auffiel, durch die Verfassung Nazi-Deutschlands ersetzt. Warum lernen wir nicht von ihrer Taktik?"


 なにしろ「 Nazis Aso」で検索すると数千がヒットし、この数日間で発言のこの部分は世界の隅々まで知れ渡っています。
当然ながら、安倍内閣が日本の平和憲法を、ワイマール憲法にとどめを刺したナチスドイツの「手口/technique, tactics,Taktik」で変えようとしていることの現れだとの文脈での報道が大半です。

びっくり仰天して「どんなナチのテクニックから学ぶのか?」と問いかけたシモン・ヴィーゼンタールセンターの→ステートメントもあります。

  麻生氏の知識がマンガからくる認識の程度であるのは、ここで「ナチス憲法」という言葉を使っていることで明らかです。「ナチス憲法」というのはありません。ナチスはヒトラーへの全権委任法でワイマール憲法を骨抜きにしてただけで改憲はしていません。

 法理論的には、これにより法の源泉が国民から「フューラー/指導者ヒトラー 」に移ったのです。すなわち、「ヒトラー=憲法」となったのです。これを独裁制度といいます。
したがって、麻生氏の無知による誤謬を訂正すると、彼の主張は:

憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ヒトラー独裁に変わっていたんですよ。誰も気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。

となります。 したがって麻生氏が述べたいことは「ヒトラーの手口に学べ」ということになります。

後述のように、ドイツは戦後の東西ドイツの憲法が成立する1949年まで、形式的にはワイマール憲法があったのです。正確には1933年から16年間、ワイマール民主主義は凍死していたのです。その間に人類史最悪の世界戦争がありました。

 さて、世界世論に、驚いた麻生氏は本日、次のように述べて→発言を撤回しています。

私がナチス及びワイマール 憲法に係る経緯について、極めて否定的にとらえていることは、私の発言全体から明らかである。ただし、この例示が、誤解を招く結果となったので、ナチス政 権を例示としてあげたことは撤回したい。」

  しかしながら「真意が誤解されたのは遺憾」と発言を撤回したところで、覆水盆に返らずで手遅れです。たとえ氏の真意がどこにあろうとも、憲法改定に関してのこの発言は、民主主義国家の閣僚、ましてや副総理としては決してあってはならないものです。撤回で済ませることは到底できない責任があります。
ドイツであれば、政治責任はもちろん、刑事責任を問われますし、民主主義国家ではどこでも最低限の政治責任は問われるからです。

 6年前にわたしは第一次安倍政権は歴史認識で→「不良中学生が校長室を占領したようなものだ」と書きましたが、このような「遺憾な発言」をする副総理は「あほう太郎」としか言えないでしょう。ナチスの被害者はもちろんのこと、日本国民と国家にとっても前例のない屈辱行為です。直ちに謝罪の上、辞任すべきです。もちろん安倍総理の任命責任もあります。
 それをしない限り、日本の政治家全てが、アジアの近隣諸国だけでなく、増々世界中の国からまともに相手にされなくなります。すなわち安倍政権は第一次の際と同じく、歴史認識で孤立し崩壊することは必然となるのです。菅官房長官がいくら配慮をしたところで世界の見る目はいよいよ厳しいからです。

 今年は→ナチスが権力掌握して80年になります。これについてドイツはどう考えているかをこのブログでも先に紹介したとおりです。特にそこの「失われた多様性」の行事については是非ともお読み下さい。


麻生氏は発言で「ヒトラーは、選挙で選ばれたん だから。 ドイツ 国民はヒトラーを選んだんですよ。」と述べています。そこで現在のドイツがこの事実にどのように向かい合っているかを、ドイツの国会議事堂で見てみましょう。

Hitler Box dpa
この写真は、あまり知られていませんが、現在の国会議事堂の地下に、ワイマール憲法が成立した1919年から1999年までに「自由で民主的に選出された国会議員」4781名全ての氏名が記された「議員の古文書」と名付けられた芸術作品です。
氏名と政党名が記された錆びたブリキ箱を積み重ねた変わった作品です。1933年から1949年までのナチス時代と新憲法ができるまでは、ひとつだけ氏名もなく黒塗りの箱が議会主義の暗黒時代を象徴しています。
しかし1933年のワイマール憲法下の選挙で選ばれたナチ党員286名の箱は積まれており、「アドルフ・ヒトラー NSDPA」の文字が読めます(写真の中段の箱)。
一昨年末に、ある見学者が怒ってヒトラーの箱を壊したことがありましたが、現在は修復されています。
ドイツの国会議員たちの多くは、議事堂に隣接する議員会館から地下道にあるこの作品の脇を通って議場に向かうのです。 無惨に破壊されたワイマール憲法を忘れるなと。

さて、これはよく知られている国会議事堂前の広場の一角にある記念碑です。
1933年ヒトラーが首相になり授権法で民主憲法にとどめを刺して、まず行ったことは、議会内のナチスの政敵国会議員の徹底的粛正でした。直ちに、共産党、社会民主党の議員らへの弾圧が始められ、多くが強制収容所などに送られ、98名の国会議員が殺害されました。
この1992年に創られた記念碑は、その議員たちと政党名が刻まれた98枚のブロンズの板を並べたものです。このようにして「合法的殺人」が始まったのです。
 近年は国会議事堂の見学者があまりにも多いので、臨時に観光客をさばくための臨時の建物がこの記念碑の脇に建てられています。


 写真をもうすこし紹介しましょう。これは、昨日、通りかかりに撮影した国会議事堂前の光景です。ナチス権力掌握80周年記念で行われている「失われた多様性」の広告塔が国会前広場にも三つだけ置かれて、観光客が熱心に見ていました。
 先日の報道では、ベルリンを訪れる観光客の数はローマを抜いたとのことです。これはわたしも実感しており、特に中国人観光客の多さには驚かされます。昨日もここで記念写真を撮る団体を見かけました(下の写真)。都心に住むわたしも最近は道を問われることがよくあります。

 このようなベルリンを訪れる世界中の人々が、「ナチスの改憲の手口を学んだらどうかね」との日本国の「あほう太郎」大臣の言葉をどのように受け止めるかは明らかでしょう。
 韓国の中央日報は7月31日の社説で「正常な精神状態ではない」と書いていますが、誰しもが「当たらずとも遠からず」と思うのです。

 繰り返します。麻生太郎氏は日本の国益のために直ちに謝罪し大臣を辞任すべきです。
事実問題として、世界各地に居住している日本人の面子も保てません。わたしは、切羽詰まって「マンガを読みすぎる人物が大臣になったせいだ」と、苦しい言い訳をすることにしようかと考えています。

 このような論外で語るに落ちる発言がもたらす損失には計り知れないものがあります。
世界世論のリアリティー を感知できない政府と政治家が国民にいかなる損害と犠牲を強いるものかを、日本の大手メディアもそろそろ自覚しないと、あなた方も巻き添えを食って自滅しますよ。そのリミットは目の前に迫っています。このことは、麻生発言の本質を批判した社説が今のところではだだひとつ、沖縄の→琉球新報のそれしかなかったことに顕著です。沖縄の人々は日本ではもっとも常識があるリアリストであるからです。




追伸:近いうちに続きを書きます。請うご期待。



2 件のコメント:

  1. 磯永です。ご説明有難うございました。発言当時、「静かに変わった」と言う内容が分からなかったから、梶村さんに聞いて見たいと思っていたところです。

    その後、テレビなどで分かってきましたが、静かどころか、反対者を追い出し、親衛隊が国会を取り囲んで、全権委任法を通したようですね。

    それに学べとは、こういうことですね。民主主義完全に無視し、力ずくでやるということで、撤回して済む様な内容ではありません。本音です。安倍首相も同じで、いよいよ、解釈改憲で集団的自衛権を認め、戦争のできる国になることを着々と進めています。

    麻生氏は、その露払いをやってのけようとしたのでしょうか。自民党内には、恐ろしい人物が政権の中枢を握っている。非常な危機感を持ちます。

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    1. 磯永さま、

      そのとおりです。衆参のねじれ解消で本格的に始まった改憲に向けた動きが、ここでデマゴーグたちの本音として出たのです。この発言のデマについては、続いて簡単に書きますのでお待ち下さい。

      梶村

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