8月21日に起こったダマスカスでの毒ガスによる市民の大量虐殺を理由としたアメリカとイギリスによる軍事介入計画で、オバマ大統領とキャメロン首相のオバメロン-Obameron-コンビが、それぞれ自国の世論と、それを背景にした議会での抵抗で孤立を深めています。
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ロンドンのウエストミンスター前での軍事介入反対デモ。8月29日。dpa |
イギリスではタイムス紙の世論調査で軍事介入に賛成する市民は22%ほどであると伝えられており、それを背景に29日、キャメロン首相は議会で、→
軍事介入の合法性を主張した動議の同意を得ようとしましたが、同意を示唆していた労働党のミリバンド党首の、反論で否決され、少なくとも30日まで行われているダマスカスでの国連調査団の報告を待ち、来週にももう一度論議することになりましたが、この状態では軍事介入は不可能でしょう。
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29日、英議会で現時点での軍事介入に反対演説するミリバンド党首。Reuters |
また同日、中国の王毅外交部長も北京で、声明を発表し国連安保理で政治的解決を図るべきであり、武力行使に反対する立場を、国連事務総長と連絡しながら表明しました。
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29日、武力解決ではなく国連での政治解決を声明する王毅外交部長 TBS |
オバマ大統領は、28日のアメリカのテレビのインタヴューで「シリア政府に一発喰らわせる」と述べましたが、彼は昨年、「毒ガス使用がレッドラインで、それは許さない」と述べた手前、面子にかけても「一発喰らわせなければならない」窮地に追い込まれています。しかし、アメリカの世論も軍事介入を危惧する世論が強いため、非常に迷っています。
彼が、数日中に単独武力行動にでる決断をすることもあり得るでしょうが、それをすればアメリカの孤立は避けられず、中東全体がさらに制御不可能な状態になるだけでなく、限定的攻撃でも、間違いなくテロの拡大は避けられません。
29日、カナダ政府も軍事介入には加わらないと述べました。
オバメロンの発想は、1999年のコソボ介入時と同様の国際法違反の「軍事大国の警察権行使」と同じです。しかし2003年のブッシュのイラク介入での教訓を、イギリスの労働党も、アメリカの議会も少しは骨身にこたえているので、当時のような冒険はできないでしょう。
オバマ大統領が、アメリカの面子のために振り上げた手で一発喰らわせる愚行に及べば、アメリカの信用が失われることは間違いありません。彼がノーベル平和賞は返上すべきことになるだけでなく、逆に手痛い政治的ダメッジを受けることは明らかです。
この問題が、あくまで国連安保理と関係諸国との政治交渉で解決することが望まれます。
アメリカは大量破壊兵器の時と同じようなやり方ですね。
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