2014年5月22日木曜日

252:祝!大飯原発差し止め勝訴。破滅の淵での初めての希望。ドイツ倫理委員会へ呼応した健全な司法判断。

 本日、2014年5月21日、フクシマ事故以来、原子力災害で破滅の淵にある日本にとって、初めての希望が実現したようです。
福井地方裁判所での大飯原発の3、4号機の運転差し止訴訟判決において、内容的にも完璧ともいえる勝訴を、心から祝します!
 福井新聞の号外です(クリックで拡大)。PDFは→こちら

 さて、まだわたしは判決文を全て読んではいませんが、時事通信による→判決要旨は以下のとおりです。画期的な内容なので第一報として保存しておきます。
赤字は梶村によります。以下引用)
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大飯原発訴訟判決要旨
 関西電力大飯原発の再稼働差し止め請求訴訟で、福井地裁が言い渡した判決の要旨は次の通り。
 

【主文】
 関電は大飯原発から250キロ圏内の原告に対する関係で、3、4号機の原子炉を運転してはならない。
 

【理由】
  ひとたび深刻な事故が起これば多くの人の生命、身体や生活基盤に重大な被害を及ぼす事業に関わる組織は、被害の大きさ、程度に応じた安全性と高度の信頼性 が求められる。これは当然の社会的要請で、人格権がすべての法分野で最高の価値を持つとされている以上、本件でもよって立つべき解釈上の指針だ。
 人格権は憲法上の権利で、日本の法制下で、これを超える価値は見いだせない。従って、人格権、とりわけ生命を守り、生活を維持するという人格権の根幹に対する具体的侵害の恐れがある場合、人格権そのものに基づいて侵害行為の差し止めを請求できる。
 

【東電福島第1原発事故について】
  福島原発事故では15万人が避難生活を余儀なくされ、少なくとも60人が命を失った。放射線がどの程度の健康被害を及ぼすかはさまざまな見解がある。見解 によって避難区域の広さも変わるが、20年以上前のチェルノブイリ事故で、今も広範囲の避難区域が定められている事実は、放射性物質の健康被害について楽 観的な見方をし、避難区域は最小限で足りるとする見解に重大な疑問を投げ掛ける。250キロという数字は、直ちに過大だとは判断できない。
 

【原発の安全姓】
 原発に求められる安全性、信頼性は極めて高度でなければならず、万一の場合にも、国民を守るべく万全の措置が取られなければならない。
  原発は社会的に重要な機能を営むものだが、法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由に属し、憲法上、人格権の中核部分よりも劣る。人格権が 極めて広範に奪われる危険を抽象的にでもはらむ経済活動は、少なくとも、具体的危険性が万一でもあれば、その差し止めが認められるのは当然だ。
  新技術の実施の差し止めの可否を裁判所が判断するのは困難だが、技術の危険性の性質や、被害の大きさが判明している場合は、危険の性質と被害の大きさに応 じた安全性が保持されているかを判断すればいい。本件では、大飯原発で、このような事態を招く具体的危険性が万一でもあるのかが判断の対象となる。
 

【原発の特性】
  原発は、運転停止後も原子炉の冷却を継続しなければならない。何時間か電源が失われるだけで事故につながる。施設の損傷に結び付き得る地震が起きた場合、 止める、冷やす、閉じ込めるの三つがそろって初めて安全性が保たれるが、大飯原発には冷却機能と閉じ込める構造に欠陥がある。(2014/05 /21-20:44

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(以上引用)
わたしの、コメントです:
 ここでとりわけ、「人格権は憲法上の権利で、日本の法制下で、これを超える価値は見いだせない。」とされ、さらに「法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由に属し、憲法上、人格権の中核部分よりも劣る。」と判断したうえで、「具体的危険性が万一でもあれば、その差し止めが認められるのは当然だ。」と結論する司法判断は画期的です。正に「司法は生きていた」といえましょう。

 これは、2011年6月のドイツ政府の原発の可否を巡る「倫理委員会」の判断に呼応する、日本の司法からの判断と言えましょう(*追記参照)。素晴らしいことです。
しかもこの大飯の加圧水型原子炉2基は、日本の原発の中でも新しく、まだ稼働を始めてから、21年と23年しか経っていません。ドイツの脱原発は、稼働32年で廃炉とすることを基準におこなわれています。おそらくドイツでも驚かれるでしょう。
そこで、日本の原発産業は「世界でも最も厳しい死刑判決」に等しいと受け止め、控訴審などで必死の抵抗を試みることは間違いありません。

同じく→時事通信によれば:
 脱原発弁護団全国連絡会共同代表の河合弘之弁護⼠(70)は、「42年年弁護⼠をしているが、
判決を聞いて泣いたのは初めて。輝かしい成果だ」と感慨深い様⼦で語った。
  とのことです。 河合弁護士についてはこのブログでも何度か紹介しました。例えば→ここ→ここを読んでください。
この報道で「ついに鬼の河合をも泣かしたか!」とわたしも感無量です。

 また、つい先日も、ベルリンを訪ねた福井県の農家の主婦で、この原告団の一員である方と話す機会があったばかりです。
 原告、弁護団のみなさまにお祝いを申し上げます。またこの判決を下された、樋口英明裁判長以下裁判官のみなさまに敬意を表します。破滅の淵に経たされている日本での英断であり、司法史に輝く判断です。
ひたすらこの英断が、遅きに失しないことを望みますが、まだ世界でも最も気違い染みた核燃料サイクルを日本政府は放棄しようとはしていません。ドイツ並みの脱原発までには道遠しというのが厳しい現実です。

ドイツでの報道などについては、追って追加します。

追加です
*原子力資料情報室の本判決についての→プレスリリース
さらに同資料情報室から判決謄本が出ました:
関西電力大飯発電所3・4号機差し止め訴訟 福井地裁判決謄本(全86頁)PDF
→前半40頁、 →後半46頁。 
  
 早速判決文を読んで、上記に該当する部分と、気のついた個所4頁のみを、以下オリジナルコピーで示します。
   
 全文を読んでのわたしの感想は、フクシマ過酷事故を体験した日本における、極めて健全な憲法解釈と、広範な社会常識を反映した司法判断であるといえるということに尽きます。(文中赤下線は梶村によるものです。クリックで拡大できます。)




*追記5月22日。
これについては、ちょうど3年前に執筆した『世界』2011年8月号掲載の拙稿「脱原発へ不可逆の転換に歩みだしたドイツ」を参照してください。
ネットでは当時読者のひとり里山のフクロウさんが、→経過をまとめていらっしゃいます。ただ、当時のドイツ政府諮問委員会の報告書の内容は現物を読まないと判りません。
フクシマがドイツへ与えた衝撃波が3年を経て日本にたどり着いたのかもしれません。



 

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