2013年10月7日月曜日

188:安倍首相の苦い教訓「スマラン事件」:慰安婦記録「軍強制」の詳細開示 公文書館、河野談話の原資料/追加報道あり

 読者のみなさま、この項は、投稿1日後の現時点でかなりアクセスが多く、とりわけアメリカの読者が増えています。そこで、それも考慮して近いうちに、項を変えて続きを執筆しますのでご期待下さい。→最初はこちらです。

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 先ほどの共同通信の報道です。

慰安婦記録「軍強制」の詳細開示 公文書館、河野談話の原資料



 戦時中、旧日本軍がインドネシアの捕虜収容所からオランダ人女性約35人を強制連行し、慰安婦としたとの記載が ある公的な資料が6日までに、国立公文書館(東京)で市民団体に開示された。資料は軍の関与を認めた河野官房長官談話(1993年)の基となるもので、存 在と内容の骨子は知られていたが、詳細な記述が明らかになるのは初めて。

 法務省によると、資料名は「BC級(オランダ裁判関係)バタビア裁判・第106号事件」。49年までに、オランダによるバタビア臨時軍法会議(BC級戦犯法廷)で、旧日本軍の元中将らを強姦罪などで有罪とした法廷の起訴状、判決文など裁判記録などが含まれる。
                      2013/10/06 20:42   共同通信

 ようやく法務省が開示したようです。

 文面からすると、これはいわゆる、日本占領下にあった蘭領東印度(インドネシア)で起こった、いわゆる「スマラン事件」の裁判記録でしょう。

 この事件は、オランダの臨時軍法会議で裁かれた数少ない日本軍による強制売春事件として、膨大な裁判原資料が1992年以来、オランダ政府により開示されているために、安倍晋三首相以下極右たちの「慰安婦強制連行否定派」にとっては、もっとも都合の悪い証拠史料として毛嫌いされているものです。

 わたしが、このオランダ語原文を入手し翻訳、それを朝日新聞が公表したのは1992年7月末のことでした。それ以来、日本の歴史修正主義者との闘いは20年以上も続いています。
これが、スマラン事件に関する三件の裁判のうちのひとつの判決文原文の冒頭の部分です。この軍事法廷で禁固12年の判決を受けた能崎清次陸軍中将のこの判決文などは、当然日本語に翻訳され、本人が保管していたのですが、後に法務省がそれを蒐集して保管していることは知られていました。
ようやくにして、法務省がそれらを開示したことは、民主主義国家として当然のことです。
  最近も橋下大阪市長の「慰安婦必要発言」で、少し詳しくこれらの経過について→このブログで触れたとおり、このような歴史事実は、日本政府がいくら隠そうとしても不可能です。
 2007年に安倍晋三首相が「狭義の強制連行はなかった」との暴言を吐いて、世界中の怒りを買った際にも、わたしはベルリンから動かすことのできない史料を公表して、歴史を歪めようとする「日本の国賊ども」に一矢を報いましたが、日本の法務省も危機感を抱いたのかどうかは知りませんが、ようやく一定の史料の開示に踏み切ったようです。

 おそらくはスマラン事件の起訴状と判決文だけでしょう。ライデン大学名誉教授、村岡崇光先生の天才的語学能力で訳出され、週刊金曜日にわたしが解説を連載、そして2008年に単行本として出版したこの写真の資料集には、この事件の供述調書3点含まれています。

 それにしても20年前に、日本政府がほこりを払って開示しておれば、「慰安婦問題」でこれほど日本が国際社会で孤立し、特に安倍政権が世界中から極右政権として敵視されるような今日の事態は、ある程度は防げたのではないかと考えると、非常に残念です。

遅きに失したの感はありますが、願わくばこれからも積極的に史料が開示されることを期待したいものです。民主主義にとって必要不可欠なのは情報の公開なのですから。

 また、わたしにとっても、オランダ語原文が当時どのように翻訳されているかを、ようやくこの写真の単行本の内容と比較検討できることになるので非常に興味のあることとなります。

この報道と平行して安倍晋三首相の→次のような発言が日経新聞に見られます。
首相汚染水漏れ世界知見吸収

2013/10/6 18:34

 安倍晋三首相は6日、京都市で開かれた「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム」で講演し、東京電力福島第1原子力発電所の汚染水 問題に関し「我が国が学ばざるを得なかった苦い教訓だ」と述べた。「課題への対処のため世界中から最も先進的な知見を吸収しなくてはならない」と語った。
 オランダ政府の公文書も、「安倍晋三首相にとって学ばざるを得なかった苦い教訓」なのです。
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追加の報道です。
本日の北海道新聞に掲載された記事の写真です。札幌の小林久公氏から送られてきたものです。感謝して追加させていただきます。
上記の共同通信を元にした記事のようです。
金沢出身の能崎清次元中将を釈放後に石川県庁で聞き取り調査をした資料もあるそうです。クリックすれば 拡大して読めます。
北海道新聞2013年10月7日



 













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以下は、2007年5月11日付けの共同通信のベルリンからの配信記事です。
ネットではもう読めないようですので、記録しておきます。これらはたちまち世界中に報道されました。(写真は省きます)
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憲兵らが直接連行 少女にも売春強要 日本占領下インドネシア 慰安婦問題で新史料 オランダ公文書 被害者調書に記述
 
 【ベルリン11日共同】太平洋戦争時の従軍慰安婦問題で、日本占領
下のインドネシアで憲兵らが直接、女性を連行して慰安所で売春を強制
したオランダ政府の公文書が十日までに見つかった。旧日本軍による
「狭義の強制性」を否定した安倍首相の発言の矛盾を裏付ける新史料と
して注目される。
 公文書は、戦争犯罪問題を調査しているベルリン在住ジャーナリスト
の梶村太一郎氏が入手した未公開の約30点。1944年にインドネシ
アのマゲランやフロレス島で起きた集団売春強要事件の被害者宣誓証人
尋問調書に記述されていた。
 マゲランの事件に関し、東京裁判に証拠として提出された46年5月
の調書では、当時27歳のオランダ人女性が、憲兵に衣服をはぎ取られ
慰安所に連行されたと証言。抵抗したが手も足も出ず、売春させられた
としている。
 女性抑留所に収容されていた目撃者の48年3月の調書によると、抑
留所を訪れた日本人が少女らを病人に仕立てて診療所に収容するよう指
示。そこで選ばれた少女らが慰安所に連行され売春を強要されたと、こ
の目撃者は詳細に証言した。
 梶村氏は「被害者は連行され売春させられており、安倍首相の言う
『狭義の強制性』の典型的な例だ」としている。
軍の明確な強制を描写 
 
 内海愛子アジア太平洋資料センター代表理事の話
 オランダ政府公文書としての宣誓尋問調書から、これだけ明確に旧日本軍の強制売春
行為を描写する内容が確認されたことは極めて重要だ。これらの公文書
には、まさに「軍の強制」が記されている。今後はこうした裁判記録な
どをどう分析、評価していくかが全容解明の鍵となる。
【写真】旧日本軍による強制売春の記述があるオランダの公文書(共同)
 
New records show women coerced into prostitution in wartime
May. 11 BERLIN, Germany
Dutch government documents made available May 11 by Japanese journalist Taichiro Kajimura in Berlin show Japanese authorities abducted and coerced women into prostitution during World War II in occupied Indonesia. The evidence contradicts Prime Minister Shinzo Abe's recent remarks disputing such wartime coercion by the Japanese military. (Kyodo)
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2 件のコメント:

  1. 60年前に責任者は死刑や懲役20年の判決が出た件ですね。
    責任者は60年前に厳罰を受け罪を償ったようです。
    さらに国際法アムネスティ条項の【交戦諸国相互間で、永久の忘却、大赦ないし免罪があるべきものとする】と戦後のオランダへの見舞金からオランダ政府より慰安婦に補償がされている。

    この決着した件を曲解して利用する韓国筋が暗躍しておりますが、
    どうせ掘り返すのなら冤罪も含めて掘り返すのがフェアです。
    下記のサイトで意見が活発に交わされております。
    主義、出張、説明や反論は下記サイトでされてはいかがでしょうか。
    そのほうが有意義だと思います。

    より詳細な記事は下記にてご覧いただけます。
    http://sikoken.blog.shinobi.jp/Entry/26/

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  2. わたしは、かつてのいわゆるBC級戦争犯罪法廷がすべて公平なものであったなどとは考えてはおりません。このスマラン事件でも当時の州長官らが裁かれていないのは不当でした。多くの判決の中には冤罪もあったでしょう。

    しかしここで問題となっているバタビア法廷での強制売春事件は当時の国際法に準じて裁かれており、量刑はともかく冤罪ではないとおもいます。

    オランダ人犠牲者たちが女性基金などの見舞金で補償が済まされていると考えるのはとんでもない間違いです。彼女らとの和解はできないままに終わっています。決着などにはほど遠いのです。

    またご指摘のサイトは、歴史における証言者の言葉尻をとらえて本質を否定する傾向、すなわち典型的な歴史修正主義の傾向が顕著であるとおもいます。論争自体は否定しませんが、歴史の改竄は許されません。

     かつての日本の原発ロビーが安全神話擁護のために、原発批判派をことごとく言葉尻をとらえて封じ込めたとそっくりですね。その結果がフクシマとなったことを学ばねばなりません。フクシマ事故は原発ロビーの神話の結果です。歴史修正主義の結果がどうなるかを真剣に考えることこそ重要なのです。

    梶村

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