2013年10月27日日曜日

191:速報;独誌「オバマ大統領盗聴を知らず、メルケル首相に謝罪」と報道。盗聴は2002年からとも。日本政府も疑惑を質すべきである。

ドイツ連邦議会で携帯電話を使うメルケル首相 写真dpa
  ベルリンの日本メディアのみなさま、お先に失礼します。

 本日、10月26日のシュピーゲル誌電子版は、ドイツ首相府からの情報として、23日メルケル首相がオバマ大統領との直接の電話会談で、アメリカ諜報機関による首相の携帯電話の盗聴に抗議した際に、→「大統領はその事実を知らなかったと述べ、首相に謝罪した」と伝えました。これによれば、さらに大統領は「もし知っておれば、直ぐに中止させたと述べ、申し訳ないと謝罪した」としています。

 続けて、同誌は同電子版で、→「メルケル氏の携帯電話の盗聴は、首相就任以前の2002年には盗聴リストに記載されている証拠がある」 として、28日付次号の同誌でスノーデン氏の暴露した、それらの証拠を報道すると予告しました。
それによると、盗聴はオバマ氏が本年6月にベルリンを公式訪問した直前まで行われていたようであるとのことです。

 これらの報道に関して、ドイツのメディアはおしなべて「オバマ大統領が、知らなかったはずはない」と疑っています。 すなわちアメリカに対する不信は、わたしの見たところでも、これまでにないほどになっています。
 続いて一両日にも報告したいと思いますが、成り行きによっては、この「携帯ゲート・handy-gate事件」(ウォーターゲート事件のアナロジー/ウイーンのスタンダード紙論評)とまで呼ばれ始めている事態は、冷戦終結後の欧州とアメリカ関係の大きな節目になる可能性もあります。

 また、南ドイツ新聞が25日に報じたところによると、これらの盗聴の中心組織であるアメリカ軍諜報機関の→NSA・国家安全保障局のドイツにおける拠点は、ベルリンのアメリカ大使館と、フランクフルトのアメリカ総領事館に置かれており、おそらくは建物の最上階に盗聴設備が置かれていると推定できるとしています。

ドイツ連邦議会建物の屋上から観たアメリカ大使館 撮影:Taichiro Kajimura Feb.2013
この写真は、今年の2月にわたしが、国会議事堂の屋上から撮影したものです。ブランデンブルク門の南の星条旗のあるアメリカ大使館の最上階は、直線距離で300メートルほどでしょう。

 また同じく議事堂屋上からちょうど反対側にみえる首相府の写真です、メルケル首相の執務室は上階の左にあり、近くの半円形の場所に閣議室があります。議事堂から直線で3から400メートルほどでしょう。
ドイツ国会議事堂屋上から観る首相府 撮影:Taichiro Kajimura Feb.2013
すなわち、アメリカ大使館からは半径1キロメートル内にドイツ国会、議員会館、首相府が何の障害物もなくあるのです。盗聴にはもってこいの環境です。

これに関しては→シュピーゲル誌電子版の映像をご覧ください。位置関係がよくわかります。

メルケル首相の携帯電話 Die Welt 25.10.2013
 ドイツの多くの報道によれば、明らかになっているメルケル首相が使用している携帯電話の機器はふたつであり、昨日のヴェルト紙か掲載した写真を借りますと、左が首相が日常的に2005年から最近まで使っていたノキアの、いささか古い携帯で、セキュリティーはかなり低いもであるとのことです。重要事項に関するときには首相府の安全な固定電話、ないしは右の、暗号装置のついた政府専用の携帯を使用していたとのことです。

 伝えられているように、メルケル氏は上の写真にあるように、機密事項以外は日常的に、ノキアを使用しており、本来は規則で禁じられているにもかかわらず、国会の議場でも上の写真のように、彼女はしょっちゅう携帯電話で、SMSのやり取りをしています。

 それが、長年にわたり完全に盗聴されていたことで、メルケル氏は表面的には平静を保っていますが、内心は激怒していることは確実です。東独の秘密警察の支配下で育った彼女の、これまで信用してきたアメリカに対する失望と怒りがどのようなものであるかは、想像するに値します。これに関しても次回に書くつもりです。

 来週には、同じく盗聴被害が明らかになったフランスとドイツ政府高官を中心とした欧州同盟の代表団がワシントンに派遣され、事態の解明と解決策をアメリカ政府と協議することが、昨日のブリュッセルの欧州会議で決定されましたが、この問題は、これから本格化することは間違いないでしょう。もちろん双方とも穏便に済ませ、「相互スパイ禁止協定」を形だけでも実現したいとするでしょうが、それはアメリカ世論を見ても簡単ではありません。またドイツ政府は同じく被害に遭っているブラジルと共同で、国連総会にスパイ行為を禁じる決議案を提出する準備をしているとのニューヨークからの報道もあります。
 
 さらに、シュピーゲルや、ガーディアンが、まだまだ膨大なスノーデン氏からの資料を真綿で首を絞めるように暴露して行くことは確実です。
  下に写真は、日本でも昨日報道されたガーディアン紙が25日付で報道した→「NSAが世界各国の35カ国の政府首脳の通話盗聴をしている」と伝えた紙面での証拠写真です。
日本の歴代首相の電話も盗聴されていると判断できるでしょう。
 
 ここで安倍政権が現在、広範な世論を無視して「秘密保護法」を成立させようと急ぐのは、欧州同盟などの動きと、どだい方向が逆転しています。
 
 日本政府は米政府に質して、その国家機密=日本でのスパイ活動の実態を明らかにすることに尽力すべきなのです。それが日本の国益擁護での緊急の課題です。
そうしないのは、日本の歴代政権がアメリカの諜報機関の下部機関であることを機密にしたいからであると疑われてもしかたがない情勢が近いうちに来るでしょう。
 この実態を隠すには秘密保護法が有効な手段であるとでも考えているとすれば、実に笑うべき視野狭窄です。「井の中の蛙の隠蔽体質ここにあり」ということがいずれ暴かれてしまうことになります。安倍政権は世界の発展に増々逆行していることを自己暴露するだけです。
 
The Guardian Oct.25.2013

 本日の、ベルリナー ツァイトング紙は論説で「スノーデン氏がノーベル平和賞を授賞するかについての議論はこれからにしよう」と書いています。
 またドイツの国会議員からは、この問題でロシアに亡命中のスノーデン氏を国会に招いて証言をしてもらおうとの声もあり、NGOでは引き続き、ドイツ政府は同氏に亡命権を認めるべきだとの意見が強くあります。


 






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