2013年9月1日日曜日

182:オバマ大統領「前方へ逃避」し、議会に決断を投げる。冷戦後の西側覇権主義の民主化へ転機となるか。

 ここ連日、シリア内戦の毒ガス使用と、アメリカの軍事介入に関する危惧を報告しました。明日にでもトマホークによる爆撃があり得るとのニュースが飛び回っています。しかし当面それは回避されました。

 本日8月31日、ロシアのプーチン大統領は(おそらく日本ではあまり報道されていないでしょうが/わたしもいそがしくてゆっくりモニターできません)、ウラジオストクで記者会見し、昨日のケリー国務大臣が公表した「軍事介入の合法性」に関し、「きっちりと、アサド政権の犯行である確固たる証拠を提示すべきである」、「それ抜きの軍事介入は全くの狼藉行為である」と述べ、また「そのため市民の生命が脅かされることに、ノーベル平和賞受賞者のオバマ大統領は配慮すべきである」と、真っ向から批判しました。

記者会見するプーチン大統領 31.8.2013 Reuters
一昨日の、イギリス議会での7時間を越える論議で、オバメロンの半分であるキャメロン英首相は、軍事行動を否決されましたが、これは イギリスの議会史で1782年以来の出来事であるとのことです。30日のデイリーメール紙によれば、当時のノース首相は、アメリカの独立戦争に軍事介入すべきだとの議案を出しましたが、議会は否決。首相は「オー神様!これで全て終わりだ」と述べたそうです。まさに英国の議会民主主義の歴史的伝統の良き顕われだったのです。
 昨日、「オバマ大統領もアメリカの独立史から学んでほしい」と書きましたが、驚くべきことに、期せずしてそうなる可能性が出てきました。

 プーチン大統領の記者会見の後、オバマ大統領はワシントンで「いつでも軍事介入を命令できる用意はあるが、決断を議会の判断にゆだねる」と述べました。

(追加)声明全部の動画は→こちらで。じっくり聴くと面白い内容です。
「前方逃避」の演説をするオバマ大統領。31.8.2013
これは、冷戦後の西側の覇権主義にとっての大きな転機となる出来事です。すなわち冷戦後「世界の警察長官」としてのアメリカの無能力を認めて民意に判断をゆだねる判断であるからです。(それが何故かについては、毎晩、訪問者のお相手で大酒を飲んでからの書き込みなので、詳しくは書けませんことを読者のみなさまにお詫びします)。

 結論だけ述べれば、このような、政治判断を「前方への逃避」と言います。追い込まれた立場から逃れるため、未来志向(この場合は民主的手続きに判断をゆだねる)に逃亡するやり方です。オバマ氏の判断はその典型のひとつです。
 安倍政権の政策が何かにつき「反民主的管理主義への後方への逃避」であるのと対称的です。

 報道によれば、夏休み明けのアメリカ議会は9月9日ですから、それまでシリアに対する軍事介入は無くなったようです。これでプーチン氏も述べたように、9月5日から始まる、セント・ペータスブルクでのG20で、 シリア問題解決に関する討議もかなり冷静にできる条件ができたようです。願わくば、ロシアも中国も国連安保理での実質的討議に踏み込む努力をしてほしいものです。

 面白いのは、古典的立場で軍事介入に参画するとしているフランスのオランデ大統領の反応です。突然ハシゴをはずされた彼はどうするのでしょうか。「お前はオランデよい」と言われたようなものですから。

 いずれにせよ、世界中がとりあえずは、ほっとするできごとです。シリアの一般市民にとってはおいておやです。


0 件のコメント:

コメントを投稿