2015年1月2日金曜日

278:敗戦70周年にあたって:「日本は〈敗戦〉を完成させた」再録

 今年の新年は、読者のみなさまに率直に「おめでとうございます」とは残念ながら述べられません。
なぜなら日本は第二次世界大戦終結70周年の本年、よりによってこれまでにない政治危機に直面しているからです。危機の本質は歴史認識にあり、本年は近隣諸国からはもちろん、世界中から否が応でも厳しくそれが問われることは避けられません。
そこで、年の初めにあたり、19年も前の1996年の敗戦51年に向けて執筆した論考を再録して、読んでいただきたく思います。

 平成天皇もそのことは自覚されており、新年の感想で次のように述べています。

 本年は終戦から七十年とい節目年に当たります
多く人々が亡くなった戦争でした
各戦場で亡くなった人々広島長崎原爆東京を始めとする各都市爆撃などにより亡くなった人々数は誠に多いもでした機会に満州事変に始まるこ戦争歴史を十分に学び今後日本あり方を考えていくことが極めて大切なことだと思っています

 平成天皇は11歳で敗戦を体験した人物です。この人物が日中戦争に始まる15年戦争の歴史を学ぶことは「今、極めて大切」と述べるのは、その体験が極めて重いからであると思います。
 以下の論考は、戦後50年を経た日本社会の歴史認識をドイツの戦後歴史認識をふまえつつ日中戦争の体験を軸に批判したもので、11歳の皇太子としての現天皇の体験にも触れてあります。

 ここで指摘した問題が解決するどころか、深刻化しているのが日本が置かれた現状であるといえるでしょう。そこでブログに再録することにしました。出来るだけ若い世代に読んでいただきたく願っています。
 
 『世界』1996年9月号の巻頭論文として掲載されたものです。写真ですのでクリックして拡大してお読み下さい。










1 件のコメント:

  1. 19年前に発表された重たい論考を読ませてもらいました。33頁に昭和天皇が現天皇に書き送った手紙が引用されていますが、初見です。もし現天皇があの手紙に言われているようなメッセージの枠内にいまなおとどまっておられるとしたら、日本はお先真っ暗です。過去の戦争から学ぶ必要を数日前の新年の挨拶の中で言われていましたが、昭和天皇は、われわれが敵の実力を正確に把握していたら、かけ声だけの精神主義に依存していなかったらあの戦争には勝てたはずだ、と言っているのと同じことではないでしょうか。安倍首相が最近言った「戦争について反省する」ということはいとも簡単にそういうところに堕する可能性大です。現天皇があの戦争は父の権威のもとにはじめられ、遂行されたという認識に達し、その認識に基づいて国民と旧交戦国とアジア諸国民にきちんと謝罪されることが本当の戦後処理が出来る唯一の道、ここは是非とも天皇に範を垂れていただきたい、と思います。

    平成18年短期間シンガポールを訪問した時、その直前に天皇皇后両陛下がシンガポールを公式訪問され、晩餐会の席上で「シンガポールの皆さん方が戦時中大変苦しまれたことを思うと胸が痛みます」と発言されたことが現地の新聞に出ているのを読みました。もしあの時「。。。私の父の兵隊達のために大変苦しまれた。。。」と言っておられたら、現地の人たちに対するインパクトはもの凄かったでしょうし、そのことがアジア諸国、ひいては本国でも報道されていたら、日本の側からする戦後処理はいまごろはおおかた片付いているのではないか、と思うと残念で仕方がありません。

    村岡崇光(在オランダ)

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