2012年10月26日金曜日

122:福島近海の魚の高度放射能汚染は納まらない/英『サイエンス』誌/追加情報:来月東京でシンポジウム

 本日発売の英国『サイエンス』誌で、アメリカの海洋研究者が「福島近海の魚介類の放射線汚染は低下することことなく継続しておりこの状態は何十年も続くであろう」との研究が公表されました。欧米のメディアも大きく報じています。
-->Jack Cook, Woods Hole Oceanographic Institution
 これは同研究の日本農水省のデーターによる近海の魚介のセシウム汚染図です。







原文のありかといくつかの報道を挙げておきます。

*原文:『サイエンス』誌→ -->Fishing for Answers off Fukushima ,Ken O.Buesseler

*英BBC News-->Fukushima fish still contaminated from nuclear accident

     
 *独「シュピーゲル」誌-->Fukushima-Fischestrahlen noch immer

*米ブルームバーグ 日本語版 --> →福島沖で漁獲された魚、汚染レベルは1年前と変わらず-調査

福島沖で調査するケン・ブッセラー氏。シュピーゲル誌電子版よりWHOI/Ken Ostel

 上記の報道によれば、アメリカのマサッセチュー州のウッズホール海洋研究所の研究員ケン・ブッセラー教授はフクシマ事故から一年以上経た今年8月までの、主に日本の農水省の調査結果からも、海底近くに生息する一部の魚の汚染値は一年前から低下せず、いまだに高いことが証明でき、この状態は数十年も継続して納まらないであろうとしています。

シュピーゲル誌電子版に対して、ブッセラー氏は 一部の魚の高汚染値に関して「汚染値は全く低下していない」「普通には魚は摂取した放射線物質を毎日数パーセントづつ排泄するはずだ。ところが明らかに新たに放射能物質を摂取し続けている」、農水省の調査値を疑う必要は無いとした上で、一年前の汚染値との比較から言えることは「原子炉からいまだに汚染水が海に放出されており、もう一つは海底を汚染している放射性物質が持続して海水を汚染し続けていると解釈できる。」と答えています。
  -->
"Die Werte gehen einfach nicht zurück", sagt Buesseler im Gespräch mit SPIEGEL ONLINE. Normalerweise sollten die Fische die strahlenden Partikel ausscheiden, ein paar Prozent pro Tag. Doch offenbar nehmen die Meeresbewohner auch ständig neue strahlende Teilchen auf.
Es gebe aus seiner Sicht keinen Grund, an den Messungen der Japaner zu zweifeln, so Buesseler. Man sei außerdem bei eigenen Messungen im Sommer 2011 zu vergleichbaren Ergebnissen gekommen. Die Daten ließen sich nur so interpretieren, dass zum einen bis heute strahlendes Wasser aus dem Reaktor ins Meer laufe - und zum anderen verseuchter Meeresboden die Teilchen permanent ins Wasser abgebe. "Beide Prozesse laufen parallel ab", sagt Buesseler.


この調査研究に関するわたしの感想ですが、フクシマ事故は継続中で全く収束していないことが、これでも証明できるということです。

日本の大メディアはここでもあまり採り上げないでしょう。キールの海洋研究所の→太平洋汚染シュミレーションに関する報道はゼロでしたし(そのためかこの項のアクセスは20000近くになっています)、沖縄大学の→ヒバクチョウ遺伝異変の研究は、きっちり報道しないままです。日本語での詳しい速報は我がブログだけとは情けない。

これら貴重な学術研究には見ざる言わざる聴かざるの三猿を決め込み、iPS報道で競って誤報するメディアなど迷惑なだけです。将来を見通すことなど思いもつかないのでしょう。
彼らの堕落と無能力はホントに極限状態です。泣けてきます。

(追加情報)
なお、上記BBCの報道によれば、ブッセラー教授は来月11月12日から14日に東京の東大海洋研究所で行われる海洋研究のシンポジウム(→日本語情報)に参加し、そこで彼の最新の考えを述べるとのことです。
特に最終14日のパブリックコレキュウム(→日本語情報)では、事前登録すれば一般の市民も参加し質疑応答ができるので、 心ある学者とメディアの皆さんはもとより、一般の市民のみなさんも注目して下さい。ネイチャー誌の方による「報道の役割」についての講演もあります。

いずれにせよ、フクシマ事故で排出を止めることができない放射性物質が太平洋全体を長期的に汚染し、食物体系で人間も含めたあらゆる生物に取り返しのつかない悪影響を及ぼすことはもはや避けられません。
せいぜいできることは、出来るだけ早期に原子炉を封じ込め放射能物質の垂れ流しを止めること(これは東電だけの能力ではとうてい無理です。国家管理で全力で取り組む必要があり、それは国家の焦眉の義務です)と、予想できる環境汚染に対する厳重な対策だけです。除染できるのはほんのわずかな部分だけで、その大半は時間と金の無駄です。

次回は、ヒバクチョウの研究の解説を紹介します。

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