2012年1月7日土曜日

61;松井英介医師の講演と内部被曝問題研究会


 昨年末の第59回でお知らせしました松井英介医師のベルリンでの講演が、1月4日にベルリン工科専門大学で行われました。同大学の特別講座のひとつとして行われたので、写真でご覧のように、学生たちにまじって、25年前にここで試験を受けたという物理学者や、またチェルノブイリの救援を行っている医師たち、ベルリン在住の日本人のみなさんも混じって講義室は満員でした。
 
たまたま、同大学の現学部長が放射線物理の教授で、この方の歓迎の挨拶で始まりました。かれも熱心に聴講されていました。
松井医師は若い頃ベルリンの病院で学んだこともあり、ドイツ語も堪能なのですが、資料が大半が英文なので、英語での講義となりました。最初10分ほどは、少し独英語がチャンポンになり、苦笑されていましたが、それも最初だけで、90分の充実した内容でした。
 講義の重点は国際的知見として、無視ないしは非常に軽視されている、低線量の内部被曝の最新の研究の解説ですが、比較的良く知られている遺伝子の切断だけではなく、体内に取り込まれた放射性物質が細胞をどのように破壊するかについての最新の知見を図面などを使ってわかりやすく解説されました(写真)。



 内部被曝は学問的には、次第に解明されつつあるが、まだその途上であること、他方で、核兵器使用での外部被曝の破壊力については、ヒロシマ、ナガサキで周知のことになっているが、内部被曝の破壊力については、膨大な犠牲、例としてチェルノブイリ事故またはイラク戦争での劣化ウラン弾使用による被災住民やアメリカ兵の悲惨な実証されている事実がにあるにもかかわらず、原発推進政策やアメリカの核政策のため、無視され隠蔽されているということです。
講義の終わりに、松井氏はつい先月、「市民と科学者内部被曝問題研究会」を組織して活動を始められたことを報告され、ドイツからの協力も呼びかけられました。

質疑応答では、ノーベル平和賞受賞団体の反核医師の会(IPPNW)の医師から「我が組織の日本セクションはフクシマ事故に関してはあまり活発ではないが、なぜか?」との、日本人の医師にとっては実に耳の痛い質問もありました。
とまれ、聴講したドイツ人の医師や物理学者の感想を聞きますと、現在の学問があまりにも専門化しすぎて、お互いの学識を共有して広い見識を得ることが難しい状態であるので、良い勉強になったとの感謝の言葉がありました。

左からプルーグバイル、松井、アイヒホルン各氏


また、締めくくりに特別講義を主催したアイ匕ホルン教授もそれを裏付けるように、彼は昨年秋にドイツ放射線防護協会の会長プルークバイル博士とともに日本を訪問し、多くの専門家たちの会議などに参加したが、内部被曝については日本でもどこでも文盲状態であることがわかった。「だから、わたしたちは読み書きを教わらねばならない/Laß uns alphabetisieren!」と結びの言葉を述べられました。それを側で聴くプルークバイル博士もうなづいていましたが、これは講演を聴いて学んだ人たちの気持ちを的確に表現していると言えるでしょう。
彼は、25年前から「日独平和フォーラム」などの市民活動を続けているわたしの古い友人ですが、他方で、先年まで学部長であったベテランの大学教授ならではの言葉であると思いました。

というわけで、わたしも低線量内部被曝のいろは/ABCを学ぶために、上記の新しくできた市民と科学者の内部被曝問題研究会に加わることにしました。この問題は日本で喫緊の課題であるだけでなく、将来の世界平和にとって避けて通ることのできない重要課題であるからです。皆さんもこぞって参加応援をしてください。市民と科学者の集まりです。特に志のある日独の若者の参加を、わたしからも呼びかけます。若者たちにとってはそれこそ重要です。

補足ですが、第59回にお知らせしたNHK報道に関して、それを裏付けるものとして松井医師の最近の日本での講演の内容の一部が、以下の1月3日付けの報告として、朝日新聞社のWEBRONZAに転載されていますので 参考としてしてください;

 「すくらむ」国家公務員一般労働組合国公一般仲間ブロ 
原発稼ため隠される低線量内部被曝危険性-ICRP国際基準以下で小児がん倍


また、まさに原発稼働のために低線量内部被曝の危険性を隠す旧勢力が、日本の野田内閣官房で報告書を12月22日に出していますので、これこそ格好の反面教材ですので、ぜひ参考にしてください。間違いなくフクシマがこれが依拠する国際基準を名実共にくつがえすことだけは、すでに明らかです。

低線量被ばくリスク管理に関するワーキンググルー 
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/news_111110.html


松井医師講演聴講者2012年1月4日 ベルリン工科専門大学

 

 


 

0 件のコメント:

コメントを投稿